向こうの私ってどんな感じ?
「じゃあ、さっちゃんよんでくるから。部屋の鍵は閉めといてね。ドアを開けるときは相手を確認すること」
留守番する子供に言い聞かせるようにいって、蓮美は出て行った。
初対面の少女と二人きりになってしまい椎那は困っていた。
彼女が誰だかは今までの行動で、向こうで誰なのかは予想がついていた。彼も椎那と一緒で持ち上がり組だったが、話したことはあるが…という程度なのと、初対面の女の子と何を話したらいいんだろうかと困惑していた。
「えーと…」
何を話したらよいのか悩んでいる椎那を見て、雅は吹きだした。
「やーね。とって喰ったりしないからそんなに緊張しないでよ。私は一条雅。パソコンと実験をこよなく愛する二年生よ」
持ってきていたノートパソコンを可愛く持ち上げた。化粧っ気がなく長い黒髪を左横で軽く結んでいる。
「改めまして、初瀬椎那です。別の世界の」
「本当に、彼女と似ているね」
「そうですか?女の子と似ているというのも複雑ですが…」
雅の言葉に苦笑する。
「あはは。見た目じゃなくて、まぁ、なんというか雰囲気?が似ているのよ。ねぇ、ここに来るきっかけみたいなものはあるの?」
「それが、何も…」
「来る直前はどうだったの?」
「蓮…あ、これは蓮美さんの向こうの世界の名前です。彼が窓を開けっ放しにしていたら、桜の花びらが風に乗って部屋に入ってきていたんですよ。彼はそれを楽しんでいましたが、掃除する身にもなれって閉めて振り返ったらここでした」
何か気になることがあるのか、雅は人差し指でこめかみを押した。
「なんとなくわかるような解らないような…。そういうの得意な知り合いに聞いてみるけど、期待しないでね」
曖昧な返答に、椎那は首を傾げる。
「一条さんが言っていることが、よく解らないんですが」
「大丈夫、私もわからないわ。なので、椎那君は気にしないでね」
解ってないと胸を張る雅に、椎那も苦笑を返すしかなかった。
「そういえば、向こうの私ってどんな感じ?」
「向こうのあなたは、一条雅樹という男性です。実験大好きな放浪癖がある人です。出席日数が足りなくて、僕の同級生になってます。一条さんもそうですか」
「うん。名前が違うけど私の経歴かと思ったよ。もしかして、学校休むようになったのって高等部から?」
椎那が頷くと雅は肩を竦める。彼女もまた、実験や旅やらで出席日数ギリギリの生活をして失敗したのだ。
「性差はあるけど、基本は一緒なのかな。そっか、あっちも苦労しているのか。さて、私がやれることもないし、あっち方面に詳しい知り合いんとこ行ってくるわ。何かわかったら、すぐに知らせるから。じゃあ、またね。あ、鍵はちゃんと閉めてね」
蓮美と似たようなこと言って、雅は部屋を出て行った。




