彼氏連れ込んでいる最中に、失礼しました?
「さて、一息ついたことだし、作戦会議始めましょうか」
床にクッションを置いて、向かい合って座る。
「そうですね。帰る方法探さないと」
蓮美に言葉を返すと、不思議そうな顔をされた。
「そっち?」
「そっちって?」
言っていることが噛み合わず、お互い首を傾げる。
「まずは、君が女装することから始めるんでしょ」
蓮美が人差し指を椎那に向けると、椎那は少し不機嫌そうな顔をした。
「まずは、の意味が解りません。僕がここからでなければ女装は必要ないでしょう」
「そうかな。ここは寮よ。部屋から出なくても…」
そういいかけた所で、ノックと同時にドアが開いた。
「蓮美いる?ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
勢いよくドアを開けたのは、パソコンを片手に持った少女だった。
「ね?こういうイレギュラーがあるから、した方がいいと思うのよ」
そういいながら、蓮美はドアを開けたまま固まっている少女を部屋にいれた。
「えーと、彼氏連れ込んでいる最中に、失礼しました?」
少女はちょっと困ったような表情で二人を見る。
それを聞いた蓮美は、けらけらと笑いながら手を振って否定する。
「でも、見られたからには、雅も共犯ね」
「共犯ねぇ。そういうからには、私が満足するようなネタでしょうね?」
蓮美の共犯発言に驚くことなく、逆に話に乗ってきた。
「どちらかというばファンタジーかしら。ねぇ、雅。彼をみてどう思う」
そう言われて、雅と呼ばれた少女は椎那を見つめた。
「…あれ、なんとなく椎那さんに似ている?」
雅の言葉に蓮美は満足げに頷いた。
「これから話すことは、本当に信じられないようなことだけど、最後まで聞いてね」
そう前置きをして、蓮美は今までの経過を説明した。聞き終わった雅は、軽く肩をすくめる。
「確かにファンタジーね。まぁ、面白そうだから協力するわ」
「ありがとう。それから、他にも協力者が必要なのよ」
「さっちゃん?」
間髪入れずに、雅が答える。
「そう、さっちゃん。彼女の腕とコネは必要でしょ」
「確かに。私が行こうか?」
「当事者の方がいいでしょ。雅はここで待ってて」
「ちょっとまって、他にも人を呼ぶの?」
今まで蓮美と雅の会話を聞いているだけだった椎那が、驚きの声をあげる。
「そうよ。週末で人が少ないとはいえ、こんなかんじで誰が来るかわからないし。椎那っぽくしておいた方がいいでしょ。そうなると、私と雅だけじゃ対応できないから、協力者が必要なの」
「でも…」
なおも反対しようとする椎那に、蓮美は諭すように言葉をさえぎった。
「冗談で女装してっていってるわけじゃないのよ。いい、ここは女子寮よ。ここに男性がいるってこと自体が問題なの。他の生徒や先生に見つかって、『平行世界から来ました』っていって信じてもらえると思う?きっと、私も、そしてここにはいない椎那ちゃんも一緒に退学になるわ。だから、私達やもう一人の椎那ちゃんのために女装してもらうわよ」
退学という言葉を聞いて、椎那は視線を下に向ける。
「…ごめん。自分のことばかり考えてた」




