第3話 遺産相続バトル!
転生してから2ヶ月ほど経過し、無事に退院の話が主治医の先生から出された今日この頃、榊裕一こと俺は、弁護士先生の立ち合いのもと病院の大きめの部屋に座って待機していた。
目の前には十人近い親族。叔父、叔母、遠縁の親戚。というか裕一君の記憶にもない会ったこともないおっさんおじさんもいる。誰もが俺に向かって両親の死を残念だったねと言ってくるが、その目に浮かんでいるのは悲しみではない。
金だ。両親が遺した家、預金、株式、保険金、その他もろもろの財産……はぁほんとに嫌になるよ…明らかに欲望に濡れた眼をどいつもこいつもしてやがる。アニメ的表現にするなら目がお金のマークになってやがる。絶対に両親を亡くした子供の前でする目ではない。心なしか俺の隣に座っている弁護士先生もドン引きしている気がする。
彼らはこう考えているのだ。こんな莫大な財産を6歳の子供が管理できるはずがないと。いやその通りなんだけどね…中身のことを考えなければいや、中身がいくら成熟していても対外的には子供なのだ。子供が大金を持っているとなると…よくない想像しかできねぇ……これもしかしなくてもだいぶ不味いんじゃ…そんなことを考えていると分割している他の思考達から今更気づいたのかというツッコミが飛んできた。
しょ、しょうがないじゃん!君たちと違って主人格である俺の思考は前世のまま残すために神様の特典の影響から外してるんだから!そうでもしないとあまりにもヤバい情報を処理しようと脳が進化して頭が良くなりすぎちゃって俺が俺じゃなくなるんだよ!
ちなみに主人格以外は神様特典の知識を完全に自身のモノにするために思考を続けているので全員が意味わからないレベルの天才になってる。どれほどの天才になっているのか簡単に説明すると…脳内ではもうすでに完全没入型ゲーム機ハードの設計図が出来上がっているといえばヤバさ具合が分かるだろうか?
ぶっちゃけると資材と工具さえあればすぐにでも作れる。とは言え俺が理想としているレベルにはなってはいないんだけどね?まぁそれでも普通にヤバい、転生して2ヶ月でこれである。ほんとにやばい。しかもこの天才達は記憶力もイカれている。文字通り忘れることがないのだ。普段は記憶のタンスにしまっているがこれを思い出したい、と検索を掛ければすぐにタンスから出てくる。
と、このようにやばいチート具合なので主人格は絶対に神様特典には接続しないようにしている。絶対に俺が俺じゃ無くなっちゃうからね……
おっとそんな事を考えていると弁護士先生と親族達の会話がどんどん進んでおる。
「裕一くんはまだ子供だからねぇ」
「叔父さんの家に来れば安心だぞ」
「家は売った方がいいんじゃない?」
「管理は大人がした方がーー」
口々に好き勝手なことを言う。おいこら全員が一斉に喋るんじゃねぇ…と言うかわかっていた事だけど…裕一君を心配している奴は1人もいねぇなぁ…これ、うーん全員信用ならん!
俺はそう結論付けたその時、隣に座っていた弁護士が口を開いた。
「皆様、落ち着いてくださいまずは裕一君本人の意思もーー」
「こんな小さな子に聞いて何になる!!」
叔父が机を叩く。おっとサラッと酷いこと言ってるぜ…後台パンは辞めてね?その机一応病院の物だからね?
「俺たちが責任持って育てる!」
それ、本当でござるかぁ?「「「「100%財産目当て」」」」おっと脳内で特典の解析をしていた他の思考達が一斉にそう言ってきた……いやうん、流石に分かるよ?主人格のこと舐めすぎじゃないっすか?
ただ、まぁこのままじゃよくないよな、俺はそう考え、かねてより考えていた事を話すためは静かに手を挙げた。
「ぼく、話していいですか?」
俺が全力で子供のフリをしながらそう発言すると会議室が静まり返った。え?急にそんなに静かになる?あ、もしかして子供だからこの話し合いの意味すら理解していないとか思ってやがったなこの大人達…
弁護士先生も少し驚いたようだがすぐに頷いてくれた。おぉ…この人は絶対にいい人だ…俺を見る目がものすごい優しいぞ!ずげぇ!この場に俺の味方がいる!たった1人だけど!!
「もちろんだよ」
弁護士先生がそう言ってくれたので俺は椅子から立ち上がる。
そして、一人一人の顔を見渡した。わっはーー全員舐め腐った目で俺のこと見てやがるぜ!
「ぼくは、お父さんとお母さんの家に住みます」
その一言で空気が凍った。文字通りしーーんと誰も何も話さなくなった。が数秒後再起動して口々に何かを言い始める。
「な、何言ってるんだ!」
「子供一人じゃ無理だ!」
「危険すぎる!」
「おばさんと暮らした方がいいわよ!」
怒号が飛び交う。すげぇ見事なまでに反対意見しかでねぇ…予想通りだけど
「ぼく、ちゃんと勉強します。ご飯も作れます。掃除も洗濯もできます」
中身は長年1人暮らししてきたおっさんだからね。家事は出来る。料理もまぁそれなりに出来る。子供の口調を意識しつつしっかりと言い切った。ここでしっかりと意見を言わないと舐められたままになるからな。
「そんなわけあるか!」
叔父が怒鳴る。うんそのセリフも想定通りだけどキレすぎじゃない?だいぶ怖いし唾飛んでんだけど、きったねぇ…
「本当にできるよ?だってママが教えてくれたもん!」
ちなみに嘘である。洗濯物を畳むだとかは裕一君の記憶から見るにした事あるようだが他の家事はさせてもらった記憶すら見当たらない。火とか包丁使うだとかは危ないし洗濯物を干すのも身長が小さくて届かないからね、掃除に関してはママさんがこだわりがある人だったみたいで裕一君は何もしないようにしていたらしいし、うーん辛うじてゴミ袋をゴミ箱にセットした事があるくらいか?
「それに!僕はあのお家からでたくない!絶対!絶対出たくない!」
どうだ!必殺『両親との思い出が詰まった家から出たくない子供の演技』の味は!!スッと親族達の様子を見るが…あ、これ全く効いてねぇや、完全に子供が何言ってんだって顔してやがる…血も涙もねぇや、けどまぁ続けようか、明らかにこの作戦が効いている人間がこの場にいるからね
「ぼくは、お父さんとお母さんが大好きなの!だから、お父さんたちが守ってくれた家を守りたいの」
「裕一君?そんなことは出来ないんだよ?分かるかい?」
ほう、そう来たか。感情的になった子供を諭すように叔母が優しく声をかけてきた。しかも出来ないときたか…
「そんな事ないもん!できるもん!」
俺はできる限り必死な表情を作ってそう言葉を吐き出す。というか…そろそろ出番じゃないですか?弁護士先生?
「皆様。裕一君の意思は確認できました今後は成年後見制度なども含め、法的手続きを進めます財産管理は信託契約なども検討しましょう」
はっはーーー勝った!!弁護士先生が味方になってくれたのはマジで助かる!というか考えてた中で1番いい結果だ!!しかもしかも!弁護士先生に親族達は小学生である俺にこのように詰め寄ってくる人間だと言う事を知らしめることができたので親族達が後見人に選ばれる可能性はほとんど全く無くなったと言ってもいい!明らかに財産目当てなのが透けて見えてるからね!
弁護士先生がそう言うと親族たちは顔をしかめた思っていた展開と違う。といういかそう考えているのが目に見えて分かる。が弁護士先生がそう言ったのだ、ここから覆すには俺を説得するしかないとでも思っているのだろうなぁ…と言うわけで退院までは親族の面会は拒否っておこう。うん、それがいいや
おそらく彼らは6歳の子供の事だ。この人数で大人がやいやい言えば泣きじゃくって何でも言う事を聞かせられるとか考えていたんだろうね。
だが無駄だ!!前世で嫌味な大人達とやり合った経験なんぞ死ぬほどあるのだ!そんなもの俺には効かん!
その後もぐだぐだと親族たちは俺に向かって色々アピールをし続け、この話し合いを終了させようとしていた弁護士先生を全力で静止しながら俺に話しかけていたが中身おっさんの俺に効くわけもなく結局この部屋の使用可能時間がきたため解散となった。その後親族達は不満そうに帰っていった。おとといきやがれ!!
そうして遺産問題は一旦何とかなった。まぁ弁護士先生の力を滅茶苦茶借りたけどね…まさか面会拒否をしらねぇ!!会わせろ!!と突破して俺の病室に突撃してきた親族もいたがこの病棟の看護師さん達が必死になって守ってくれ、それにあの惨状を見ていた弁護士先生が後見人になってくれたおかげで今はもう病院に来る事はほとんどなくなった。ほんと感謝してます。
ただ弁護士先生から何度も1人暮らしは危ないと言われたのでお手伝いさんを雇うことになった。もちろん弁護士先生の紹介である。支払うお金はかなりかかるけど不祥事は絶対に起こさない会社だよと紹介されたので契約しておいた。
こうして、小学一年生榊裕一の1人暮らしライフ(お手伝いさん付き)の生活が始まったのである。
あの話し合いからこれまた1ヶ月後
俺はついに退院することができたので弁護士先生の付き添いのもと誰もいなくなった両親の家へ戻る事になった。ちなみにこの時も弁護士先生から何度も俺のことを心配する言葉を聞いたので「お手伝いさんがいるから平気です!」と答えておいた。それでも心配そうにしていたので1週間に一度は絶対連絡すると言う事になった。この人はほんとにいい人である。親族達はこの人の爪の垢を煎じて飲むべきである。いやほんとマジで。
そうしてタクシーに乗って返ってきた我が家を見ながら玄関を開けると、見慣れないはずなのに懐かしい匂いがした。裕一君のの記憶が胸を締め付ける。リビングには家族写真。笑顔の父。優しく微笑む母。そして真ん中で笑う幼い裕一君が写っている。俺はそんな幸せな家族が写っている写真立てを手に取った。
「ごめんな…」
静かに呟く。
「この家も、この身体も、大切に使わせてもらいます。どうか安らかに…」
その夜。静まり返った家の机にノートパソコンを置く。お手伝いさんはもうすでに帰宅している。ちなみに滅茶苦茶いい人だった。年齢は聞いていないけどおそらく50代くらいのおばさまだった。名前はしずこさん。夕食に作ってくれたハンバーグは最高でした。
と、夕食が美味かったので気力は万全だ。さぁ始めようか神から与えられた知識を自分のモノにするために頑張り続けていた思考達が色んな情報を主人格である俺に投げてくる。
量子コンピューター。
人工知能。
神経接続技術。
完全没入型VR。
どれも現代では存在しない技術だ。ただ、すでに自身のモノになりつつある。転生から3ヶ月2ヶ月時点で天才だった俺の頭に住む天才達はさらに進化を遂げていた。
俺は小さく笑った。
「まずは資金集めだね」
そう言った瞬間、五つの思考が同時に動き始めた。
一つは株式市場の分析。
一つはAR技術について
一つは現時点で必要なハイエンドPCについて
一つは3ヶ月経っても未だそこが見えないVR機器の構造解析。
そして最後の一つである主人格である俺は
「明日の朝ごはん、何かな?」
そんな平和なことを考えていた。だってしょうがないじゃん他の思考に比べて俺は明らかにスペックが低いからさ




