第16話 持ち込みだああああああ!
半年経った。
「すっげぇ量…」
どうも必死になって描き続けた『剣王』というタイトルの漫画が描かれた原稿用紙の山を見て絶句している俺です。いやはや…ヤベェなこの量…
いやぁ…完成したので印刷してとある出版社に持って行こうと思っていたのだが…
「これどうやって持って行こうかな…」
枚数が多すぎて纏めて持っていくのは不可能だし…ダンボールに入れて持って行ってもいいが多分大きめのダンボール数箱必要だろうし…それにダンボールなんかに入れたらページがぐちゃぐちゃになってめんどくさい事になるし…
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思考6「データで送ればいいんじゃ…」
主人格「それはロマンがないじゃん!俺前世から出版社に直接持ち込みに行くのに憧れてたんだから!」
思考4「ばか」
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なんか思考4以外からもこいつバカだろ的な念が届いたが無視して取り敢えず力技で解決することにする。
えーと印刷所に連絡して…
「あ、もしもし。すみません少しお話を聞いていただきたくてですね、はい、あのーデータ送るんで漫画として印刷してもらうことって可能ですか?金ならいくらでも出すんで」
思考達から全力で無駄遣いやめろという声が届くが全力で無視する。いいじゃん別に!!『恋色リフレイン!』が売れに売れて売り上げがバカみたいなことになってるしその金額も投資とかに回してさらに稼いでるんだからこれくらいの無駄遣いいいじゃん!
多分単行本換算したら45巻くらいの量になるけどこの原稿用紙の山がなくなるなら絶対そっちの方が良いって!!
「あ、いけます?ありがとうございますー。じゃあ早速データ送っとくんで来週までにお願いしますー。はい、はーい。失礼しまーす」
フッ…任務完了だぜ…取り敢えず1週間後に持ち込み予約しておこっと…さぁ!忙しくなるぞ!!
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思考2「…」
思考3「度し難い…」
思考4「アホ」
思考5「なぜなのか…」
思考6「あーあ…」
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おい!お前ら!呆れたような声を出すんじゃねぇ!!俺らクリエイターはいつだってこういうロマンを大事にしないといけねぇだろうがヨォ!!
え?ロマンは大事だけど無駄遣いは話が違うって???
………そ、そういえば死にゲーの進捗はどうなってるのかな!?
ここ半年漫画にかかりっきりで全く把握してないから教えてほしいんだけど!!
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思考3「ほぼ完成している。私たちが独自開発したゲームエンジンである『Genesis Engine』のお陰で我々の作業効率が大幅にアップしたため今はデバック作業を行なっている。」
主人格「え、まじ?早くない?」
思考2「『Genesis Engine』自体が私たちの力をフルパワーで使えるような設計をしているからなのか作業速度が従来のゲームエンジンに比べて3倍ほど速度が上がっている、結論マジですごい」
主人格「3倍…?」
思考3「私たちもここまで効率が上がるとは思っておらずかなり驚いている」
思考4「やばい」
主人格「あー、じゃあデバック作業手伝うついでにテストプレイしても良い?今回はマジで開発に関わってないからどんな感じになってるのか気になるんだよね〜、ん?いや待って?というか声優さんはどうしたの?俺今回レコーディングの立ち合いしてないけど?」
思考5「質問を同時に2つ行うな。テストプレイに関してはもちろんしても構わない。というかすでに主人格用のPCにダウンロードしてあるので今からでも可能だ」
思考3「声優さんに関してはまだ依頼もかけていない。主人格が思っていたよりも漫画を描く作業に没頭していたようだったので漫画が出来上がり次第オファーをかけるという手筈だったからだ。」
主人格「ほーん、なるほどねお気遣い感謝だよ、まだ声はついていないのか…んーじゃあテストプレイはまだ良いかな…声がついてからにするよ。そっちの方が絶対楽しいし」
思考5「了解した。ではこちらで元々選定していた声優の方々に依頼メールを送っておくので主人格は日程等が決まり次第レコーディングを頼む」
主人格「りょうかーい、あ…そういえばタイトルはどうなったの?」
思考2「『Fallen Remains』に決定した。」
主人公「いいね、かっこいいじゃん」
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1週間と2日後
「やっべ、めちゃくちゃ緊張するんだけど…」
大きめのダンボールを台車に乗せ、俺は日本でトップクラスに有名な週刊誌を発行している出版社に来ていた。いやーーなんというか…緊張もすごいけど…
「くっそ目立ってるな!!」
まぁ当然である。台車もった中学生、しかも平日の朝、これは目立つ。あ、学校への連絡はしっかりしてるからね?ちゃんと漫画の持ち込みに行ってきます!って言ってるし。
まぁ先生からは「何が?」と言われたけど。いやぁ、面白かったなぁ先生のリアクション…
じゃなくて!今は余計なことを考えている暇は無いのだ!俺が半年を費やして描いた漫画が認められるかどうかの大一番なのだ!さぁ!張り切っていくぞー
「嘘でしょ君…なんで製本までしてるの…」
「なんか…ノリで?」
「えぇ…」
俺の目の前に座り俺が手渡した『剣王』の第1巻を手に持ちドン引きしている編集者の山本さんはドン引きした表情のまま「取り敢えず読ませてもらうね?」と言いペラペラとページを捲り……はっや!?読むのはっや!?嘘でしょ!?それ本当に読めてるの!?いや、山本さんの目の動き方を見るかぎる読めてはいるんだろうけどこの速度で読むのすげぇなおい!?
俺がそんな事を考えながら初めて描いた漫画が人に読まれるという事に内心ドキドキしながらソワソワしていると一巻の途中くらいで山本さんが手を止めて俺に話しかけてきた。
「これは全部一人で?」
「あ、はい。まぁ全部描くのに半年くらいかかりましたけど…」
「は、半年!?そ、そう…あ、何か飲むかい?んー、コーヒー…はまだ年齢的に飲み慣れてないか…?」
「あ、いえコーヒー好きです。ただミルクは欲しいです。」
「お、そうかじゃあコーヒー飲んで少し待っていてくれ、取り敢えず3巻まで読ませてもらうよ
「うっす…」
うーん、3巻までかぁ…全部読んでくれないのか…面白くなかったのかなぁ…ちょっとショックだわ…
そうして編集者の山本さんは3巻までものすごいスピードで読んだ後俺に名刺とそこに電話番号を書き、近日中に必ず連絡するから他の出版社には持って行かないでくれという言葉を残して『剣王』が入ったダンボールを持って去って行った。
「え、何どゆこと…?」
と、取り敢えず帰るか…
「やばい、やばい、やばい!!なんだこれ!なんだよこの漫画!!」
ストーリーも面白いがなんだこの異常なまでの画力は!?どの場面をとっても異常なまでの画力を生かしたヤバすぎるコマ割り、戦闘シーンに至ってはぶっちゃけて言うがこれまで担当した作家先生の中でもダントツでトップなまでの見やすさとわかりやすさ、それでいて臨場感もすごい。
さらに異常なのはこの背景…なんだこの描き込み量は…異常なまでの描き込み…小さなコマにすらありえない労力が込められているのがわかる。
いそげ!いそげ、急げ!こんな人材失ってはいけない!すぐにでもこの宝を保護するために編集長に持って行かねばならない!あまりにも急いでいたから俺の連絡先を書いた名刺を渡すだけになってしまったが他の出版社に持って行かないことは約束してくれたので時間はあるはずだ。
取り敢えず、班長に見せるところから、それで反応が良ければ、いや、反応がいいことは確定してる。しかも3巻までしか読んでいないが3巻までの時点で修正箇所もない、誤字もない、少し気になるところもあるが即修正可能なレベル、つまり速攻で雑誌に載せられるレベル。
ならもう後は時間との勝負!!
速攻で連載会議まで回す!!
本人もこの作品『剣王』を世に出したいと言っていたし!
ただちょっと気になることも言っていたのでその辺りの確認もしっかりとしなければ…
まぁそれよりもまず俺がこの漫画を全部読破しないといけない!後、榊くんのメールの確認もしないと!流石に製本されたものじゃなくデータか原稿で欲しいと伝えたら今日中にメールで送ると言ってくれていたのでそちらも確認しないといけない
あぁクソ!忙しい!!
必死で考えを回しつつ大急ぎで自分のデスクに帰ると隣に座っている同僚が話しかけてきた。
「なんだよ山本そんなに慌てて…あれ?お前持ち込みの対応じゃなかったけ?しかも何そのダンボール…」
「そうだよ!持ち込みだったよ!!ただダイヤの原石どころか磨かれたダイヤがそのまま来やがった!」
すぐにでも4巻に手を伸ばしたいが今日しなければいけない仕事もかなり残っている。そちらも速攻で片付けないと
「磨かれたダイヤがって…そんなに?」
「あぁ…ヤベェのが来た。気になるならそのダンボールに入ってるやつ読めよ」
「お、おう…ってなにこれ…なんで製本してあんの?」
「しらねぇよ!本人はノリって言ってた。」
「そ、そうか…取り敢えず一巻だけ読ませてもら…は?いや、何この画力…」
表紙の一枚絵を見ただけでドン引きしてやがる…まぁそうなるわな…正直なんで表紙まで描いてんだよとツッコミたいがここまで完成度の高い表紙を見せられると何も言えなくなる。
って俺今日、後二件も持ち込みあるじゃねぇか!?嘘だろ榊くんを見た後だと自分の中の基準値がバグってる感じがするからちゃんとした評価ができる気がしねぇぞ!?
くそ、でもやるしかねぇ…持ち込みをしてくれる奴は大事にしねぇといけねぇからな…もしかしたら金の卵かもしれないし…
って、このメールは…榊くんか!!早速データを送ってくれているみたいだ!いいねぇ仕事が早いのはマジでいい!
「なぁおい、山本…2巻読んでいいか?」
隣の席のバカが一巻を読み終わったらしく2巻に手を出そうとしている
「ダメだ」
「なんでだよ!!」
「俺だってまだ3巻までしか読めてないんだ!俺が全部読み終えるまで待っとけ!」
「おい、それはひでぇだろ!!」
よし、解凍が終わった。ファイルを開いて一巻分の原稿を印刷する。えーと何部いるんだ?あーー取り合えずうちの班の人数だけでいいか…
くっそ忙しい!
ただなぁ…これだからこの仕事は楽しいんだ!未だ世に出てない天才を見つけられるこの感覚…ほんと最高だよ!
「あ、班長!ちょうどいいところに!ちょっとコイツを読んでみてください!」
明日までにはうちの班で共有しておいて明日は榊くんに連絡しないといけねぇ…詳しい話をしておかねぇと…今日は時間がなくてあんまり詰めた話ができなかったからな…まさか持ち込みで単行本3巻分読む事になるとは思ってなかったからな!




