第15話 漫画描くの体力が要るぜ…
「羅ァ!!!!!」
『天災級魔王種 魔月』が操る長さが3メートルくらいはありそうな真っ黒な長刀を体全部の力を使い受け流す。クソッなんだよこれ、眼前の強大な敵は全くと言って良いほど俺を見ていない、なにに自身の周りに集る羽虫を払う程度の力しか込めていない刀を振るだけで俺にとっての致命傷になりうる。
だが、ここで俺が殺されれば全てが終わる。だから命を賭ける。命を振り絞る。命をーー燃やす!!
俺のステータスじゃこいつの攻撃をまともに受けただけで終わる。それくらいの差がある。というかこいつの能力がモンスターの魅了というものに特化していなければ、俺は速攻で負けていたのだ。こうして撃ち合えているだけでぶっちゃけ奇跡だ。
以前戦った事がある…いやまぁあの時俺は端っこで逃げ回ってただけなのだが…『災害級魔王種』要はこいつよりも格が一つ落ちる『魔王種』よりもこいつの、『魔月』のステータスは低い、理由は特化の方向性、以前『餌』の先輩に聞いた覚えがある。直接戦闘を得意とする魔王種はまぁステータス的な意味では強いけど特殊系の魔王には一歩劣る。
理由は簡単、直接正面から戦闘すれば倒せるから、数の力で踏み潰すことができるから。けれど…こいつは違う、この『天災級魔王種 魔月』は自身の直接戦闘能力の大半を失う代わりにモンスターを魅了し操ることができる力を得た。だからこそ、この大軍、全てのモンスターが魔の月に魅入られたように『魔月』に付き従う。
故に『魔月』
さらにこいつの拙いところ、姫様が先ほど一緒に走っている時に教えてくれたこいつのもう一つの特性『不滅ノ月』という能力。姫さま自身も自分の直属の部下である高レベルの『鑑定士』に教えてもらった事らしいがおそらく生存に特化した能力を備えている…かもしれないという情報があった。高レベルの鑑定士でも能力名しかわからなかったし、おそらくこういう方向の能力だろうという直感でしかなかったらしいのだが姫さまはその能力を警戒して今は取り巻きの魅了されたモンスターを処理している。俺に誘引されたモンスター達を処理しながら『魔月』を観察している。
何かヒントがないかを探している。そうしなければ俺たちは負ける。姫さま曰く『魔月』を殺せる斬撃は魔力の関係上一度しか放てない、だからこそミスれば、外せば、『魔月』に躱されれば
それは俺たちの敗北だ。
だからこそ姫さまは必死になってやつを観察している。姫さまの第4のサブジョブに設定されているジョブの一つ『分析者』の力をフルで使いやつを分析している。
メインジョブに設定しているわけではないので精度は落ちるがそこは姫さまのレベルの高さでゴリ押すらしい、まぁ第4ジョブまであるなら姫さまは400レベル以上あるって事だもんな…どんだけだよ…
俺なんてまだレベル1なのに…まぁ『餌』だから仕方ないけど、『餌』はレベルが上がらないからね
そんな事を思い出しつつ
奴の攻撃に反応して必死で受ける、流す、避ける、転がる、モンスター達の死体が多く積み重なっているため足場がかなり制限されている中で俺は手に持つ刀、『桜』を一心不乱に振るう。もうすでに身体中の骨が軋み上げている感じがするが限界ギリギリのタイミングで姫さまが回復アイテムを投げてくれるので俺はーーー前だけ向いていれば良い、それにどれだけ攻撃を受けても折れない武器がある。
今まで俺と共に戦ってきた相棒である棍棒ではこんな事はできなかった。『餌』たる自分の貧弱なステータスだとしても所詮その辺で拾った棒、耐久力はカスだ。レベル1の俺ですら全力で振えば即折れる。
だがこの刀は違う、『桜』は俺の思いに答えてくれる。絶対に折れないという意思が武器から伝わってくる気がする。
だから今は
「あ゛あああ゛あああああ゛!!!!!」
死ぬ気で姫さまに情報を渡せ!!!時間を稼げ!俺の『餌』たる唯一のスキルモンスターの誘引効果を全力で使い、ここら一体の敵を全て俺に向けろ!!
それが俺の役目!!
「…」
『魔月』が鬱陶しそうに俺に八つあるうちの一つの手をこちらに向けてくる。奴の魔力が手のひらに集まって…
「避けなさい!!!」
後方にいる姫さまからの鋭い声が耳に届いたその瞬間俺は全力でその場から離脱する。
「月ノ極光」
奴がそう言った瞬間先ほどまで俺がいた地点に真っ暗な光が照射される。なんだ、どんな魔法だ。
「月属性!!当たった地点が爆発する魔法!!あの光にあたれば終わる!!」
「ッ了解!!!!」
姫さまの端的な説明を聞き戦闘プランを組み直す。くそ、魔法も使ってくるのかよ!しかもあの手の本数を見る感じ…
「あぁ、やっぱりそうだよな…」
くそが、これは避けられない…目の前で8つの腕全てを俺の方に向けている『魔月』がいた。これは死ぬ、どう考えても死ぬ。あまり魔力を使っていないあの細い「月ノ極光」でさえ俺には一本避けるだけで精一杯だったのだ。それが先ほどの倍以上の魔力が込められたものが八本、まぁ無理である。
だが!それでも!!
「俺の勝ちだよ、ばぁーーか!!」
やっと釣られてくれた。『魔王種』らしくある程度の知能を持っていたおかげで『餌』たる俺が居ても『魔月』の意識を100%俺に向けることが先ほどまでできていなかった。自分自身を殺すことが出来る姫さまを警戒していたから、理性を持ってモンスターの本能を抑え込み俺と戦っていた。だがそれを今
辞めてしまった。
ただの『餌』である俺に…全ての意識を割いてしまっている。
だから、姫さま頼みます
「ーー聖剣解放 咲け『桜花天征』」
『魔月』の背後に一瞬で移動した姫さまが解放した聖剣を持ってして『魔月』を切り裂き、さらに『聖剣 桜花』の能力により発生した『桜花』の周りをヒラヒラと舞う淡い桜の刃によって全身を細切れにされた。が、奴の魔法はもうすでに放たれていた。
俺は眼前で『魔月』死ぬのを見届け奴が放った最後の「月ノ極光」に飲み込まれーー死ぬ……ここで、死ぬ……死ぬ?死ぬのか、俺こんな所で?
ーーーーまだ何も成せていないのに?
「ーーーまだだ…」
先ほど死を覚悟して納刀した『桜』の能力を、姫さまが教えてくれた能力を思い出す。
抜刀した瞬間の抜刀速度の上昇。名は『春風』
…これしかない、これしか、俺の生きる術はない!ならば今の俺がやるべき事は決まった!
生き残るために魔法を斬る…昔戦場で見たあの化け物みたいな剣士が使っていた技を模倣する。
あの剣士は散歩をするように魔法が飛び交う戦場を歩いていた。そして何気なく剣を振い魔法を斬っていた。確か後から伝え聞いた彼のジョブは『天剣王』、天を切り裂くことがこのジョブに就くことの条件の一つとされている最上位ジョブ。
おそらくレベルは300は超えていると思う。俺はそんな化け物の真似をする。ジョブが『餌』でレベルも1のくせしてそんな化け物の技術を模倣する!
集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ、集中しろ
集中しろ!!!眼前に迫る死の極光をぶった斬れ!!
この刀ならそれが出来る!!!足りないのは俺の技術だけだ!!
思い出せ、思い出せ!!あの剣士の放った斬撃を!!
俺に今残っているモノ全てをかけろ!
血を回せ!魔力をこめろ!
俺がここで生き残るために!!!
全力で刀を振れ!!!!
「魔斬りぃいいいいいいいいいい!!!!!」
刀を振った瞬間音が消えた。周囲から色も消えたように感じた。
それと俺に向かってきた魔法も斬れていた。
……は、はははは、ははははははは!!!!
「ーー今日も生き残った!!!」
安堵した瞬間
「ーーー月ノ極光」
背後から何かが聞こえた。慌てて振り向こうとするが体が言うことを聞かない、その場に崩れ落ちることしか出来ない。振り向く気力さえ残っていな…
「予想通りの能力だったわねこの化け物」
崩れ落ちた俺の背後に姫さまの気配がする。それと…『魔月』の強大な気配も
「ありがとねイザヨイ、アンタのおかげでこいつの能力が分かったわ。本体が死んだ瞬間魅了状態にあるモンスターの体を奪いーー蘇る。そんなクソみたいな能力がね」
なん、だよその能力は…という事はつまり
「こいつを殺すにはこの戦場にいる全てのモンスターを殺し尽くすしかない」
は…はは…何だよそれ…ヤバすぎるだろ…
「なるほど、これが『天災級魔王種』…ほんと終わってるわね…あぁもう!最悪よ…しかもこいつ知能も高いわ、さっきアンタの誘因効果に釣られたように見せたのは嘘、わざと隙を作り私に大技を無駄撃ちさせるためのね…」
姫さまは悔しそうな表情でそう呟く
「これは負けね…もうどうしようも無いわ、ごめんねイザヨイ、勝たせてあげられなかったわ!」
姫さまは俺の方を振り返りそう謝る。違う、それは違う!何で姫さまが謝るんだ!明らかに役に立っていなかったのは俺の方だった!俺がもっと戦えていたら結果は絶対に違っていた!
「だから私たちは今から全力で逃げる。脇目も振らずこの戦場から逃げる。逃げて…いつか絶対こいつを殺す。だけど殿は必要なの、申し訳ないんだけど…最後までダンスに付き合ってくれる?」
姫さまはそう言って俺に微笑んでくる。
そっか殿か…それは、その仕事には俺は慣れている。いつもやっていたから。撤退戦において最後まで残るのは『餌』の役目だ。
覚悟を決めて姫さまを見ると姫さまは薄らっと笑い俺に回復アイテムを使ってくれた。
「…ありがとうございます。これで何とか戦えます」
「良いわよお礼なんて。じゃあ、始めるわよ?」
「いつでも」
俺がそう返事をすると姫さまは大きく息を吸い叫んだ
「全軍撤退!!!殿は第二王女スズランと第二王女付きの従者イザヨイが務める!!!」
「従者?」
「えぇ、不服かしら?」
「いえ、光栄です」
「そう、なら良いわ!!」
姫さまは満足そうに笑った。俺もそんな姫さまの可愛らしい笑顔を見て自然と笑みが溢れた。
そしてお互い同時に剣を抜き『魔月』に向かって走り始めた。
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まぁこの後二人は最後まで戦い抜いて全軍を逃した後、魅了されたモンスター、それと『魔月』に包囲されここまでか…となったその時にやってきた世界を放浪中の今代の『帰還者』に助けられるんだけどね。今代の『帰還者』は『創世のレガリア』にもすこーーし出てくるんだけど魔王に何度も戦闘を仕掛け殺され続けたが、それでも戦い続けた猛者だ。レベルも632とバグったことになっているので広域殲滅魔法をブッパしまくって魅了されたモンスターを全滅させられる。ま、姫さまが持ってた聖剣が『聖剣 桜花』以外の聖剣だったらおんなじことできてたんだけどね。『聖剣 桜花』は一対一に特化した聖剣だから…
「と、ネーム終了…はぁーーつっかれたぁ……」
やっぱり漫画を描く作業はまだ慣れていないので疲れてしまう。このネームを完成させるだけで2週間かかった。まぁ構図とかに拘りまくったからなんだけど…そのおかげでいいネームが描けた。
けど、ネームができたら俺の作業は一旦終了だ。後は思考6が全て完成させてくれる。俺の役目はネームを描く事だからね… ちなみに背景はここはこういう背景でお願いねという形でメモ書きをしてあるので思考6がペン入れついでに描いてくれる。ぶっちゃけ繊細で綺麗な線を使う背景は思考達が使用している第3の手という機械を通して描いた方が安定するんだよね…構図とかコマ割りは俺が描きたいし決めたいので俺が描いているがぶっちゃけ思考6に投げたら俺の2週間の作業は思考6によって1日で完成するくらいまで減らされるレベルで思考達は筆が早い。
まぁ生身の体と違って疲れることもないし第3の手を数台同時に使うことだって可能だからね…思考達は…いやはやチートだわ…
「さぁ、二章を描き始める前にお風呂に行こう!ゆっくりしたい!!」
取り敢えずあと半年かけて何とかこの漫画『剣王』を全章完成させて出版社に持ち込まないとね、んー頑張るぞーー
ふぁいとーー




