大晦日1
母親とリビングで寝た、その翌日の大晦日の昼過ぎ。
莉子は、母親の車に乗って家を出発した。
目的地は、母の実家だ。
毎年、大晦日と新年は、母の実家で過ごすことが恒例となっている。
住宅街にある交差点で信号待ちをしながら、母親がハンドルに寄りかかりながらボヤいた。
「私も年ね、あの酒量で寝落ちするなんて」
莉子もボンヤリしながら欠伸をした。
朝方自分の部屋に戻って寝たものの、疲れが取れた気がしない。
(今日は除夜の鐘を聞いたら、寝よう……)
そんなことを思いながら、莉子はデパートに到着した。
人で埋め尽くされたデパ地下で、オードブルをたくさん購入する。
そして、再び車に乗って走り、祖父母の家に到着した。
祖父母の家は、駅から遠い代わりにとても大きく、
年末年始に、母親の姉妹3人とその家族、親戚たちが集まることになっている。
玄関に入ると、靴がたくさん並んでおり、家の奥からは筑前煮の良い香りが漂ってくる。
(お正月って感じ)
そんなことを思いながら、莉子が靴を脱いで上がると、
「あら~、莉子ちゃん!」
母の姉と、5つ上の従姉、渚がニコニコしながらやってきた。
母の姉は、莉子を見ると目を細めた。
「久し振りねえ。最近どう? 彼氏とかできた?」
「……いえ、できてません」
莉子が答えると、渚が残念そうな顔をした。
「えー、そうなの? 気になる人とかもいないの?」
莉子は内心苦笑した。
母の姉と、その娘の渚は、大のゴシップ好きだ。
ここ数年、莉子の男性事情に興味があるようで、会う度に毎回聞かれる。
2人を軽くあしらうと、莉子と母親は奥で挨拶を済ませた。
ご飯の準備などの手伝いをする。
そして、紅白歌合戦が始まると同時に、食事が始まった。
くっつけた長いテーブルの上には、豪華な食事が並んでいた。
焼き豚や筑前煮といった正月料理や、莉子たちが買って来たようなオードブルなどもある。
にこにこ顔の祖父が、立ち上がった。
「それでは、2026年も終わりということで、乾杯!」
「乾杯!」
そこから、皆それぞれ食事を楽しんだ。
母親は自分の兄弟たちと話し込み、莉子は年の近い従妹たちと会話を楽しむ。
テレビでは紅白歌合戦を放映しており、わいわいがやがや、とてもにぎやかだ。
――そして、紅白歌合戦の後半戦が始まって、少しして。
莉子が酔いを醒まそうとジュースを飲んでいると、渚がやってきた。
隣に座ると、にこっと笑う。
「莉子ちゃん、飲んでる?」
「うん、飲んでるよ。ジュースだけど」
渚は「そっか」とにこにこと笑った。
そして、少し声を潜める。
「ねえねえ、莉子ちゃんってさ、警察に直樹おじさんのこと聞かれたんだって?」
「え?」
意外なことを言われて、莉子は目をぱちくりさせた。
「なんでそれ知ってるの?」
「前におばさんから聞いた」
どうやら、莉子が事情聴取を受けた後、莉子の母親が渚の母親に確認したらしい。
渚が目をキラキラさせて迫った。
「ねえねえ、その時の話、ちょっと教えてよ!」




