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忠犬むぎは、夜に鳴く  作者: 優木凛々
第2章 変化

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20/28

大晦日1


 母親とリビングで寝た、その翌日の大晦日の昼過ぎ。


 莉子は、母親の車に乗って家を出発した。

 目的地は、母の実家だ。

 毎年、大晦日と新年は、母の実家で過ごすことが恒例となっている。


 住宅街にある交差点で信号待ちをしながら、母親がハンドルに寄りかかりながらボヤいた。



「私も年ね、あの酒量で寝落ちするなんて」



 莉子もボンヤリしながら欠伸をした。

 朝方自分の部屋に戻って寝たものの、疲れが取れた気がしない。



(今日は除夜の鐘を聞いたら、寝よう……)



 そんなことを思いながら、莉子はデパートに到着した。

 人で埋め尽くされたデパ地下で、オードブルをたくさん購入する。


 そして、再び車に乗って走り、祖父母の家に到着した。


 祖父母の家は、駅から遠い代わりにとても大きく、

 年末年始に、母親の姉妹3人とその家族、親戚たちが集まることになっている。


 玄関に入ると、靴がたくさん並んでおり、家の奥からは筑前煮の良い香りが漂ってくる。



(お正月って感じ)



 そんなことを思いながら、莉子が靴を脱いで上がると、



「あら~、莉子ちゃん!」



 母の姉と、5つ上の従姉、渚がニコニコしながらやってきた。

 母の姉は、莉子を見ると目を細めた。



「久し振りねえ。最近どう? 彼氏とかできた?」

「……いえ、できてません」



 莉子が答えると、渚が残念そうな顔をした。



「えー、そうなの? 気になる人とかもいないの?」



 莉子は内心苦笑した。

 母の姉と、その娘の渚は、大のゴシップ好きだ。

 ここ数年、莉子の男性事情に興味があるようで、会う度に毎回聞かれる。



 2人を軽くあしらうと、莉子と母親は奥で挨拶を済ませた。

 ご飯の準備などの手伝いをする。


 そして、紅白歌合戦が始まると同時に、食事が始まった。


 くっつけた長いテーブルの上には、豪華な食事が並んでいた。

 焼き豚や筑前煮といった正月料理や、莉子たちが買って来たようなオードブルなどもある。


 にこにこ顔の祖父が、立ち上がった。



「それでは、2026年も終わりということで、乾杯!」

「乾杯!」



 そこから、皆それぞれ食事を楽しんだ。

 母親は自分の兄弟たちと話し込み、莉子は年の近い従妹たちと会話を楽しむ。

 テレビでは紅白歌合戦を放映しており、わいわいがやがや、とてもにぎやかだ。



 ――そして、紅白歌合戦の後半戦が始まって、少しして。


 莉子が酔いを醒まそうとジュースを飲んでいると、渚がやってきた。

 隣に座ると、にこっと笑う。



「莉子ちゃん、飲んでる?」

「うん、飲んでるよ。ジュースだけど」



 渚は「そっか」とにこにこと笑った。

 そして、少し声を潜める。



「ねえねえ、莉子ちゃんってさ、警察に直樹おじさんのこと聞かれたんだって?」

「え?」



 意外なことを言われて、莉子は目をぱちくりさせた。



「なんでそれ知ってるの?」

「前におばさんから聞いた」



 どうやら、莉子が事情聴取を受けた後、莉子の母親が渚の母親に確認したらしい。


 渚が目をキラキラさせて迫った。



「ねえねえ、その時の話、ちょっと教えてよ!」







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