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忠犬むぎは、夜に鳴く  作者: 優木凛々
第2章 変化

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母親の意見

 

 ガチャガチャガチャ



 玄関のカギを開ける音がした。

 続けて「ただいま」という声が聞こえてくる。



(あ、お母さんだ)



 莉子は起き上がった。

 階段を降りていくと、玄関にハイヒールが脱ぎ捨てられているのが目に入った。

 リビングに明かりがついている。


 莉子はハイヒールを揃えると、リビングに向かった。

 母親は台所におり、スーツ姿のまま冷蔵庫を漁っている。

 莉子を振り向くと、冷蔵庫の中にあるお皿を指さした。



「この焼きそば食べていい?」

「うん、いいよ。一昨日のだけど」

「チンすれば大丈夫よ」



 母親はいそいそとお皿を電子レンジに入れた。

 待っている間、冷蔵庫に入っていたペットボトルのお茶を取り出す。



「あんたも飲む?」

「うん、ありがとう」



 母親はコップを2つ取り出すと、お茶を注いだ。

 暖め終わったお皿と共にテーブルの上に置く。


 莉子は母親の正面に座ると、お茶を口にした。

 母親が、焼きそばを食べながら、莉子の顔を見る。



「あんたどうしたの? 深刻な顔しちゃって」



 莉子は母親を見つめた。

 これはもう相談した方がいいだろうと思う。


 莉子は改まったように口を開いた。



「母さん、隣の結月ちゃんのことなんだけど」

「結月ちゃん?」



 母親が目をぱちくりさせる。


 莉子は、ここ最近の出来事や今日あったことを話してきかせた。

 ぬいぐるみと大声で話したり笑っていたことや、ぬいぐるみに言われたからと、夜遅く家の前にいたり、前髪を切ってしまっていたことなどを話す。


 GPSについてはよく分からないことも多いため、とりあえず話さないでおく。


 母親は焼きそばを食べながら黙って話を聞いた。

 聞き終わった後、しばらく考えてから、ため息をつく。



「……結月ちゃん、ちょっと不安定になっているみたいね。まあ、お母さんが亡くなったり、引っ越ししたり転校したり、環境もガラリと変わっちゃっただろうしね……」



 そして、思案に暮れるようにお茶を飲むと、莉子を見た。



「とりあえず、話をしてくれて良かったわ。今の話、直樹くんに話しておかないとね。こういうのって一緒に住んでいても、気が付かないことも多いしね」



 母親は言葉を一旦切った。



「それと、結月ちゃんが変な言動してても、咎めたらだめよ。本人にとっては意味のある行動の場合もあるから」



 母親によると、こういう場合はあくまで見守る姿勢がいいらしい。



「あとは、急に態度も変えない方がいいわね。子どもは大人の変化にすごく敏感だから、大人の態度が変わるとすぐ不安になるから」

「うん、わかった」



 莉子が真面目な顔でうなずくと、感嘆の目で母親を見た。

 家ではいつもボーっとしているのに、こういうときは頼りになる。



「お母さん、詳しいんだね」

「まあ、普段から子どもには接しているからね」



 そう言うと、母親があくびをしながら立ち上がった。

 時計を見上げる。



「とりあえず、もう寝ましょう。明日にでも連絡しとくわ」



 母親はお皿を下げると、風呂場に向かった。

 ダイニングテーブルに1人残った莉子は、大きくため息をつく。



「子どもは、大人の態度が変わるとすぐ不安になる……か」



 結月とは、夏休み中は映画に行ったり祭りに行ったり仲良くしていたが、

 学祭やバイトで、ここ数か月ほとんど会えていなかった。



(もしかして、結月ちゃんから見たら、急に態度が変わったように見えたかもしれない)



 結月がたまに見せていた悲しそうな顔を思い出し、

 仕方がないとはいえ、申し訳ないことをしてしまったな、と軽く落ち込む。



(とりあえず、これからは急に態度を変えないように気を付けよう)



 莉子はため息をつくと、2階の自室へと戻っていった。






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