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忠犬むぎは、夜に鳴く  作者: 優木凛々
第2章 変化

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新学期


 夏休みが明けた9月中旬、大学の初日。


 莉子は久しぶりに、大学の同好会の部室へ向かった。

 見上げると、空が高くなっている。



(もう秋だね、まだ暑いけど)



 莉子は学生会館に入った。

 部室の扉を開けると、日に焼けて真っ黒になった悠斗が1人座ってスマホを見ている。


 莉子は思わず目を見開いた。



「悠斗、久し振り、焼けたね!」

「久し振り。実家にいる間、ほとんど外にいてさ」



 彼によると、休み中はずっと親戚の畑で農作業をしていたらしい。



「一応、日焼け止め塗ってたんだけど、あんまり意味なくてさ」

「1日中だと、塗り直ししないとダメなのかもね」



 そんな話をしていると、扉が開いて、れい奈が入ってきた。

 人間のリアルな口がいくつも描かれた真っ黒なTシャツを着ている。


 莉子は、思わず噴き出した。



「れい奈……すごいTシャツ見つけてきたね」

「うん。友達とホラーイベントに行って、お揃いで買った」



 れい奈の自慢げな顔を見て、悠斗が苦笑いする。


 3人が作業机にそれぞれ座ると、れい奈がいそいそと鞄からタブレットを取り出した。

 得意げに莉子と悠斗に画面を見せる。



「見て見て、これが泊った心霊屋敷」



 画面には、夜に撮影された写真が表示されていた。

 れい奈ともう1人の女の子が並んでいる後ろには、昭和初期の香りのする古びた一軒家が映っている


 莉子は、顔を寄せてその家を見た。

 暗いせいか、かなり不気味だ。



「確かに気持ち悪い家だね」

「でしょ! 見た目もヤバいけど、中身はもっとヤバい」



 そう言って、れい奈はスワイプして家の中の画像を見せ始めた。

 暗い部屋には古い家具や生活用品が散乱しており、まるで廃墟のようだ。


 悠斗が目を見開いた。



「え! こんな荒れた家に6万も出して泊まったの!?」

「うん。でも、その価値はあった」

「なんかあったの?」



 莉子が尋ねると、れい奈が大真面目な顔でうなずいた。



「まずね、いろんなところからピシピシ音がした。風もないのに」

「……それ、家が古いだけだろ」



 悠斗がぼそっと突っ込む。


 3人がそんな話をしている間に、部室には次々と部員たちがやってきた。

 8名ほどが集まると、打ち合わせが始まる。



 ――今日の議題は、10月末の土日に開催される『学園祭』についてだ。



 映画同好会は、毎年学園祭に参加している。

 内容は毎年同じで、模擬店の出店と、映画に関する展示会の開催だ。


 ちなみに莉子の大学では、3、4年次になると校舎が東京に移る。

 そのため、準備は1、2年生が行い、3、4年生は当日参加することになる。


 その後、部員たちは話し合った。

 大体の役割分担と段取りを決める。


 そして、今後の予定について確認していた、そのとき。



 キーンコーンカーンコーン……



 部室内に鐘の音が鳴り響いた。

 時刻は9時、部室を閉める時間だ。


 部員たちは慌ただしくその場を片付けた。


 莉子も急いで荷物をまとめながら、昨年の学祭を思い出した。



(そういえば、毎日遅くまで部室に籠ってたっけ)



 今年は2年生だし、更に忙しくなりそうだな、と思いながら、莉子はみんなと一緒に部室を後にした。






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