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クラス転移に巻き込まれ用務員は魔力が0だった。  作者: ぐっちょん


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第5話

ブックマーク、評価ありがとうございます。

 開店と同時にお客様がパラパラと入ってくる。指名されたイケメン男娼たちがにこやかに自分たちの席へと案内する。これがいつもの光景。


 この男娼館の男娼たちは何気に人気で、開店すれば一時間もしないうちにみんなお客様の相手をしている。もちろん俺以外ね。


 そうこうしているうちに注文が入りいつものように居酒屋のおやっさんの如くエールを準備して、ついでにおつまみも作る。


 でもね今日の俺は機嫌がいい。


「レイラさん……ふへへ……」


 昨日のことなのに美人さんでお胸の大きかったレイラさんとのえちえちが頭から離れず、にやにやが止まらない。


「また来てくれないかな……ふふふ」


 気づけばそんなことを呟いたり、レイラさんが座ってくれたカウンター席に目を向けては昨日の出来事を思い出し、その余韻に浸っていたりもした。


 肌を合わせると情が移るから気をつけなよってイケメン男娼さんから聞いていたけど、まさにその通りだと思ったよ。

 俺さ、もうレイラさんの事が好きになってるもん。どうしよう、ほんとチョロ男だよ俺は。あ〜レイラさん好きだぁな〜。


 だがそんな幸せな気分が一発で吹き飛ぶ出来事が。


 おじさんだ。女装したおじさんがきょろきょろしながら男娼館に入ってきた。


 髪は長いけどカツラっぽいし、濃いお化粧をして頑張ったのだろうと思うけど、口ひげや顎ひげの辺りが青々している。


 女性が着ていればさぞ目の保養になっただろうと思われるほど露出が多く色気あるワンピースっぽい服を着ているけど、筋肉がむきむきで色気もへったくれもない……というか筋肉すごいな。


「ん? あれって」


 俺が勘違いして、本当は女性かもと少しは考えたが喉仏が普通に見えた。


「ぁ!?」


 珍客だからと変に凝視していたのがいけなかったのだろうか。

 そのおっさ……じゃなくてその人の顔が不意にこちらを向いたかと思って瞬間、


「ひっ」


 バッチリと視線が合ってしまった。


 思わず小さく悲鳴を上げてしまったが、俺の恐怖はそれだけでは終わらなかった。


 その人、なぜかしらないけど俺の顔を見てうれしそうに笑顔を作ると、こちらに向かって一直線。近寄ってくるではないか。


 ——う、うそ、ま、マジですか。冗談だよね……


「? あれ……」


 ただそのおっさ……じゃなくてその人の歩き方は少しおかしかった。

 右足を引きずるようにして歩いているのだ。


「そっか……」


 俺はすぐに察したね。これも学生の頃からみんなの顔色を窺い、話を合わせ、空気を読んでいた俺の成せる術。努力の賜物だろう。


 あの人は元々戦士をやってて大ケガをした。そのケガが原因で戦えなくなり自暴自棄になった。で、その結果が今の姿なのだろう。


 そんなこと考えていたら、


「ふむ。なかなかいいところ、であるな」


 俺専用のカウンター席にその人が座っている。


 ——ええぇ、いつの間に。


 マジですか。い、いや、まだだ。まだお気に入りのイケメン男娼が空くのを待っているって可能性も……


「ご、ご指名の男娼を待たれているんですよね?」


「ご指名? ああそういうシステムであるか。ではお主でいいぞ、お主は……ゴローと言うのだな。ゴロー、エールを一杯くれ」


「……あ、ありがとうございます」


 なんだか人生が終わったような気分になったけど、どうにか口を開きエールを作り始める。


 かなり動揺していたようで、ちょっとスキルの扱いが雑になり氷が少し大きくなったけど、まあ大丈夫だろう。

 できたエールをその人の前にゆっくり置く。すると、それをすぐに手に取りすごい勢いで飲み干した。


「かぁぁ、うまい。ゴローっもう一杯くれ」


 本当に美味しそうに飲んでくれる。


 その顔を見て俺は恥ずかしくなった。お客様はこの店に、ただ楽しむためにきているのに、それを俺は見た目だけで、関わってはいけない危険人物かのような目で見ていた。


「ありがとうございます」


 近くで見ると筋肉の盛り上がりがすごいことが分かる。きっと血の滲むような鍛錬なんかもしてきたのだろう……


 そういえば、部活の練習前の筋トレ、きつかったな……


 なんてどうでもいいことを考えつつ、エールのお代わりを作り、お酒だけだと身体に悪いと思いナッツをパラパラと小皿に出してその人の前に並べた。


「お待たせしました。あとお酒だけだと身体に悪いのでよかったらこちらも摘んでください」


「おお。すまんであるな……遠慮なくいただこう」


 その人はナッツを何粒がつまみ、もぐもぐと咀嚼するとおかわりしたエールを一気に飲み干す。


「プハァ、うまいである。もう一杯たのむ」


 おかわりを作った俺もうれしくなるくらいいい飲みっぷり。

 この人は本当に美味しそうに飲むんだ。そんな姿を見れば俺も自然と口元が緩み笑顔になる。


「はい。ありがとうございます」


 そんなのことを六回ほど繰り返すと、その人は酔いが回ってきたのか顔色を真っ赤していた。


「ぶはぁぁ、ぅらい……おかあり」


 こころなしか呂律も少しおかしくなっている。もしかして、お酒にそれほど強くなかったのかも。これは頃合いをみて止めてあげないといけないな。


 意外にも、この店には初めて来館したと話してくれたけど、でも今日に限ってこの店に来たのはどうしてだろう。


 ——嫌なことでもあったのか? それとも、ただお酒が飲みたかったから? 


 その理由は俺には分からないけど、酔っ払ってきたからなのか、ふとした拍子に暗い表情をしていたかと思えば俯きかげんで「足ら……足らえ……」というようなことを呟いていたりする。


 そこで俺はいつものうずうず病が。女装しているおじさんだし、あまりじろじろ見るのも失礼だと思っていたが、そんな呟き声が聞こえてくれば気にもする。


 俺が女装おじさんをまじまじと見ればケアスキルが反応した。


 ——ん?


 反応があったからさらにケアスキルに意識を向けると、すぐに薄毛、心不全、右足の欠損、が治せるよと訴えてくる。


 ——薄毛ってやっぱカツラ……えっ、右足の欠損?


 そういうことか。あの右足を引きずるようにして歩いていたのは足が悪かったからじゃなくて、右足を失い義足になっていたからで、この人は俺が思ってた以上に辛い経験をしている? 


 そう考えればこの人が心の拠り所を探そうと奇行(女装)に走っていたとしても不思議ではない、と思う。


 ——そうか……


「大丈夫です。辛いこともあれば、いいこともありますよ」


 おかわりのエールをその人の前に置いた俺は、その人の肩に右手を置きケアスキルを使う。


 するとすぐにゴトリと右足の義足が外れて床へと倒れる音が聞こえた。


「んおっ?」


 その人、いや女装おじさんが足の違和感に気づき目を見開くが、俺もその人の頭を二度見する。


 薄毛が治り、生えた髪の毛によってカツラが押し上げられ、女装おじさんの頭が不自然なくらいこんもり盛り上がっていたのだ。


 ——ぶふっ。


 やばい、あ、頭がピーナッツみたいにヒョロ長くなってる。笑いが、笑いが漏れそう。でも笑えない、笑ってはいけないのだ。

 だってその女装おじさんが。


「足が……私の足があるのである」


 滝のように涙を流しているのだ。衝立があってよかった。


「ゴローか、ゴローがしてくれたのであるな。ありがとう。ありがとうである」


 その後女装おじさんに強く抱き締められた時は恐怖で身を震わせたが、また来るのである、と言い残して上機嫌にお店を出て行った。


 もう来なくても大丈夫です、と思ったけど言えるわけないよね。

 エールも結局は20杯も飲んでくれて俺の売り上げに貢献してくれたし。ふふふ。


 しかも、


「ゴロー、一杯もらえるか」


 女装おじさんと入れ替わるようにレイラさんが入店してくれた。


 ちょっと恥ずかしそうに俺専用のカウンター席に素早く座るレイラさん。やばいレイラさん美人なのにそんな行動が可愛くて心が弾む。


「レイラさん、今日もお会いできてうれしいです」


「そ、そうか」


 照れた様子のレイラさんにお酒を楽しんでもらうと今日も奥の部屋を所望してくれた。

 俺は心の中でガッツポーズしたよ。


 もちろんレイラさんにえちえちを楽しんでもらおうと頑張ったよ。でもちょっと不安も。レイラさん昨日より激しくなっていて自分にケアスキルを二回も使ってしまったが、レイラさんにもケアスキル。


 レイラさんには、いつまでも綺麗でいてほしいからね。行為の合間にお肌をスキンケアだ。


 スキンケア効果はバッチリだった。奥の部屋から出る時にはレイラさんのお肌はみずみずしく艶々。掠り傷なんかもあったがそれもケアしたよ。


 レイラさんは自分のことだから気づいていないと思うけどいい仕事をしたと俺も満足。


 また来ると言うレイラさんの背中を笑顔で見送り、そのあとはいつもの流れ。

 ご指名はなくイケメン男娼たちのサポートをしていたよ。


最後読んでいただきありがとうございます。

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