第24話
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「あれ? シゲさんこっちのスペースは何ですか?」
俺がクリーンをして回っている間に、みんなが内装を整えていてくれたらしいけど、俺が使うカウンターの横に、目立たないけど、ちょうど4人掛けくらいのテーブル席が一つ置けそうなスペースが空いていた。
「ゴローにボックス席をと考えていたのじゃが、予備のテーブルがなくての、明日にでもどこからか(組合仲間)から借りてこようと思っておるのじゃよ」
「お、俺のボックス席ですか!」
「うむ。小さなスペースで申し訳ないがの」
街に帰りシゲさんの許可を得てから意見箱(オーナー宛)に入れようと思っていた事を……シゲさんから先に言われて驚く。
もしかしなくてもシエラさんたちから(馬車の中で話していたから)話がいったのだろうか? そう思ったけど、オーナーの許可はすでに得ているらしいから、そうじゃなさそう。
しかも、俺たちが遠征に出た次の日には街の男娼館では店の中を区切って改修工事をしているとか。
ということは、信じられないけど……
——オーナーは俺に期待している!
そうか、そう言う事か。オーナーありがとう。俺はやるよ。店で1番の……は言い過ぎか、せめて10番……もちょっとあれだから……と、とにかく俺はやるよ。
不安はあるけど、オーナーに認められている気がして俄然やる気が出てきた。
「ありがとうございますシゲさん」
「よいよい。今日は使えぬが、初日は客の入りも少なかろう」
いつも通り、後の事は任せるぞと言って奥に下がろうとするシゲさんにちょっと待ったをかける。
「シゲさん! その……テーブルと椅子なんですけど俺がロックスキルで作ってもみてもいいですか?」
「? まあ、ゴローのためのスペースじゃから好きに使ってもいいのじゃが……」
「ロック」
よいのか? とシゲさんが言い終える前に、俺はL字型のソファーと二本脚テーブルをイメージしてロックスキルを使った。
「ほぉ、これはまた見事じゃの」
ロックスキルにもだいぶ使い慣れてきたので、二本脚テーブルの表面は大理石のようにツルツルピカピカにするなんてこともお手のもの。我ながらいい出来栄えだ。
しかし、ソファーはそれっぽく見えるけどクッションが入っているわけではないので、硬くて座り心地は悪そうだ。いや間違いなく悪いだろう。
「あーやっぱりダメっぽいですね。お尻が痛くなりそう」
「そうかの? ワシはこのままでも大丈夫じゃと思うが……気になるなら布でも被せてみるか? ちょっと待っておれ」
奥に引っ込んだシゲさんが、大きめの布きれを2枚ほど抱えて戻ってきた。
それを綺麗に畳んで座席に敷きシゲさんがそこに腰掛ける。
「ふむ。悪くないの」
「そうですか?」
半信半疑で俺もシゲさんの隣に腰を下ろす。思ったとおり硬いけど、あれ? そこまで気にならないかも……
よく考えたら、この世界(俺が知っている範囲なので割と狭い世界)の椅子は木製だけどクッションなんてついていないのが普通。
ここの仮店舗に設置してある他のボックス席の椅子もそんな椅子だ。
木のしなりがある分は柔らかいのだろうけど、あまり大差がないように思えてきた。
「そうかもしれませんね。ただ……」
やった本人が言うのもなんだけど、俺の岩のテーブルだけ光を反射していて、やたらと目立っている気がする。
これを他の男娼さん推しの常連さんが見たらどう感じるのだろうか。いや、考えるまでもないか。間違いなく顰蹙を買うよね……
「シゲさん、もしよかったら他のボックス席のテーブルもこれと同じものに変えていいですか?」
「ん? よいのか?」
「はい」
もちろん他の男娼さんにもちゃんと断りを入れてからやるよ。
開店前で少しバタバタしたけどみんなが協力してくれたから、ロックスキルテーブル(ロックテーブル)との入れ替えはスムーズに終わった。
「すごいな」
「ほお」
「悪くない」
「ふむ」
狙っていたわけじゃないけど、店内の光(光を小さくしている)がロックテーブルに反射してなんだかいい雰囲気に。これはお酒だって進むんじゃないかな。
それでいて、イケメンのみんなが自分のボックス席に着けば……ほほう、これは絵になるね。
「お客様入りやーす」
それからしばらくして、気怠そうな黒服さん(スタッフさん)の声がした後に、
「ハンゾーさーん♡」
「コジュウさん、今日も来ちゃった♡」
「コータロさん。今日もいい男だね♡」
「やっほサシュケンさん♡」
見たことのあるお客様(他の男娼さんの常連)が中に通された。
つい先日まで知らなかったけど、ウチの黒服さん(スタッフさん)は、ウラナシ組合から派遣されて来ている方たちのようで、バジスさんとは派遣先が違うだけで同じ組合仲間だったようだ。
そんな黒服さんにも俺はほとんど指名が入らないから覚えてもらえてない可能性が高いけど。
「ゴロー、エール一つお願い」
「こっちもだ」
「こっちにも頼むな、あとから揚げもいいか?」
「こっちはエール一つとペペロンチーノお願い」
「はい喜んで!」
ペペロンチーノは料理本をみてから取り入れた新メニューの一つだ。
正式にはペペロンチーノって言わないんだけど、こっちの世界にもペペロンチーノに似た料理があったので作ってみたら以外と簡単に出来て好評だったのだ。
元々はレイナさんとアイナさんに食べて欲しくて頑張ったんだけど、残念ながらその機会はまだない。
この日も俺は雑務を頑張った。
———
——
翌日
昨夜も早めに仕事を切り上げることになった。
移動したばかりで、元々本格的な営業は今日からだとシゲさんも言っていたからね。
だから、ボックス席をもらったのに1人もお客様が取れなかったのは営業時間が短かったからなんだよ。
……ごめんなさい。こうなる事はなんとなく分かっていた。
しかし、ボックス席をもらってまだ一日目だからと甘い考えでいたら、すぐにボックス席を取り上げられることになり兼ねない……
そうなるとシエラさんたちにお願いしていたことも無駄になり、口だけの迷惑なヤツになってしまう。
——ああ、どうしよう。そうなったら俺立ち直れないかも……
そこで俺は考えた。もっと雑用を頑張って少しでも取り上げられるまでの時間を稼ごうと……
お客はとれないけど雑用は頑張っているようだからもう少しボックス席を使わせてやってもいいか……とオーナーに思われるくらいにね。要はポイント稼ぎだ。
打算まみれであるけど、彼女たちに提案した言葉の重みと責任は感じているんだよ。ううう。
という事で今日はみんなの分の朝食(すでに10時くらいだけど)を準備してから長屋の周囲を見て回る。
しかし静かだね。王国騎士団や冒険者たちがぜんぜん見当たらない。
——早速、魔の森に入っているからなのかな?
い、いや、決してレイナさんやアイラさんにタイミングよく会えたりしないかなぁ、なんて下心があったわけじゃないよ。あくまでも長屋の周囲の確認なんだよ。
夜中と日中とでは、視界に入ってくる情報や印象が違うからね。
——あ、またいた。
途中で立ち寄った村もそうだったけど、ここの砦にも黒いモゾモゾがたくさんいる。
もちろんすぐに消すんだけど、なんでこんなにも多いのかね。魔の森が近いからかな? でも街にもいたしな……
「ゴロー、どこに行くんだ?」
「ハンゾーさん?」
長屋をひと通り見て周り、リペア漏れがないと分かったので、今度は防壁(内側)に沿って周囲を歩いて見ようと思っていたところでハンゾーさんから声をかけられた。
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