第25話
ゴローの生活スキル
【ファイア】火をつける
【ウォーター】水を出す
【ウインド】そよ風をおこす
【ロック】岩を出す
【ライト】光を出す
【ダーク】暗くする
【アイス】氷を出す
【スタン】気絶させる
【ケア】治療する
【クリーン】綺麗にする
【リペア】修理する
【ポーチ】財布程度の容量のアイテムボックス
【クリンケア】病気の少女を治した
【クリンライトケア】黒いもぞもぞを消す
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——
ほら、魔の森が近くにあるから防壁はとても大事だと思うんだよね。
ひびが入っていたら危ないし、見つけたらリペアで直そうと思ってね、あと黒いモゾモゾがたくさんいるから消しときたい。
「黒いモゾモゾ? 見たことないな……ゴロー、あそこから先はいかない方がいいぞ」
ハンゾーさんが言うには、商隊が営む仮設店舗の辺りまでは歩き回っていても問題ないが、その先は、理由もなくウロウロしていると、どこかの国の間者だと疑われて牢屋に入れられる事があるらしいそうだ。
しかも、下手に抵抗しようものなら問答無用で斬りつけてくる恐ろしい兵士までいるとかいないとか。
「それは嫌ですね」
普通に怖いよ。俺的には防壁の中だし、安全だろうから、ちょっとした散歩のつもりだったけど、それだけ今回の任務は重要視されていたものなんだと知る。
俺は魔物自体見たことのないから想像しにくいけど、シゲさんも強力な魔物が発生するって言ってたからね……あれかな、ゲームでいうところの小さなスライムが湧いていた所に超大きなスライムが湧くようになるとか……いや、ゲーム的に考えたらダメなんだけどね。
実際、怪我をしてる常連さん(冒険者)を見かけた時は心配になるし……
そんな常連さんは、推し(男娼)から手当てをしてもらおうと来館してるから俺が勝手に治療はできないんだよね。
痛そうだけど、推しに心配されながら傷薬を塗り包帯を巻いてもらっている姿はホント幸せそうなんだもん。
——あっ、そうだ。
アイススキルとケアスキルを使って出した氷をドリンクに入れるとかできないかな? それだったら推しの邪魔にはならないと思うんだ。
その分、効果は薄いだろうけど、ちょっとでもケアの効果があればラッキーってくらいの気持ちで、後で試してみよう。
「ゴロー、じゃあな」
俺が考え事をしている間にハンゾーさんが踵を返す。
「あ、ちょっと待ってください。今日はハンゾーさんが洗濯担当なんですか?」
ハンゾーさんの両手には大量の洗濯物が抱えられていたのだ(男物)。
「そうだが」
俺が男娼館に来た当初は、俺がなんでもクリーンをかけまくっていたから洗濯物なんてなかった。
生活スキルという不思議な力が使えるようになってうれしかったのもあるけど、お客様から指名をもらえないから、俺のできる事でお店の役に立とうと必死になっていたんだっけ。
そんなある日、みんなが交代で洗濯物を洗い始めた。俺がみんなに何か怒らせるような粗相をしたのかと不安に思っていたら、シゲさんがもっと周りを頼ってやれ、と笑った。
それからほどなくして洗濯物係ができて当番制に戻った。
ちなみに俺の番は1番最後で、まだ回ってきていない。
「俺、暇になったからやることがないんです。手伝わせてください」
今予定(散歩)がなくなったんです。
「ああ……そう、だな、では頼んでいいか?」
「はい」
ハンゾーさんに着いて行った先は俺たちの長屋に近い洗い場だったんだけど……
ぁ!?
そうだった。洗い場が俺たちの長屋に近いという事は娼婦さんたちの長屋にも近いということだ。
必然的に娼婦さんたちとも同じ洗い場を使う事になる。
「ふぁ、眠いよ」
「だね。さっさと済ませてもうひと眠りしないとだね」
何組かに分かれた娼婦さんのグループが気だるそうにバシャバシャ洗い物をしている。その姿が……眼ぷ……じゃなくて目のやり場に困るというかなんというか……
シンプルなワンピースっぽいけどあれは寝巻きだろうか? 生地が薄いらしく、水に濡れた服が張り付き身体のラインがくっきりと見えているんだ。
「ゴロー、女を見て鼻の下を伸ばすのはいいが、できれば手の方も動かしてくれると助かるのだが」
——ふわっ!?
ハンゾーさんには、俺が娼婦さんたちを見ていたことがバレていたらしい。チラッと見ただけなのに……
『え』
『なに?』
しかも、ハンゾーさんの声に反応した娼婦さんたちが一斉にこちらを向いてしまった。
——『変態男娼』
——『指名が取れないからって私たちを見て発情しないでよ』
——『やだ、襲われる』
——『コソコソ見てサイテー』
——『非モテはこれだから』
そんな心を抉るような言葉を投げかけられている自分の姿を容易に想像できた。
終わった、終わったよ。俺の男娼生活。きっと、変態男娼と悪評が広まり指名が1人も取れず、肩身の狭い生活を送ることになるんだ。いや、まあ、今でも指名はあまり取れないんだけど。
——ん、あれ?
「ゴローさん?」
「わぁ」
「昨日はありがとうございました」
しかし、みんなは俺が思っていた反応ではく変態男娼と呼ぶどころ逆に俺に向かって優しく手を振ってくれた。しかもみんなにこにこ笑顔だ。
「こんど休みに行くからね」
「私は金銭的に厳しくてね、食事しかできないけど、よろしくね」
たぶんシエラさんたちが、俺と話していた事を娼婦のみなさんに伝えてくれていたのだろう。ありがとうございますシエラさん、カナデさん、マキナさん。
俺はみんなから嫌われることなく無事に洗濯を洗い終えた。
井戸から何度も水を汲み上げるのは大変だから、みんなにウォータースキルを使ってあげていたらハンゾーさんから呆れられたけど、いいんですよ。将来のお客様だもん。大事にしないとね。
————
——
「ゴロー、元気か」
「ゴロー……」
「アンナさんと……え、レイラさん!?」
俺の初ボックスを使用してくれたのは久しぶりに会うことができたレイラさんとアンナさんだった。
うれしいと思ったのは一瞬で、2人はすごい大怪我を負っているらしく治療を終えてすぐに来たような感じの、全身包帯が巻かれた状態での来館だった。
包帯ぐるぐる巻き状態で上着を羽織っているから普通ならどれほどの怪我を負っているのか分からないけど、俺にはケアスキルがある。
ケアスキルが彼女たちの状態を教えてくれるのだ。
「と、とにかくそちらに腰かけてください」
「あ、ああ」
「……すまない」
側から見れば、俺の方が焦り怪我を負っている彼女たちの方が落ち着いていて不思議な光景だったのだろうけど、俺は有無を言わさずケアを使う。
——?
けど、ケアだけではダメだったようで途中からはクリンケアを使った。
「っ!?」
彼女たちの治療をしていたら黒いモゾモゾとは違う、黒い何かがぬるっと出てきたので、クリンライトケアで消しておいた。
「助かった。ありがとうゴロー」
「いや、ゴローがいてくれて助かったわ、ありがとうな」
2人ともいつもの調子に戻ってくれて俺もホッとしたよ。
「もう心配させないでくださいよ。って2人って知り合いだったんですね?」
「あ、ああ、今回の任務で一緒になったんだ」
「そ、そうなんだぜ。レイラとあたいは今同じ隊……じゃなくてパーティーを組んでるのさ」
「そうなんですね……」
「……」
「……」
「えっと、レイラさんもアンナさんもエールでよかったですよね」
「ああ」
「おおよ」
非常に気まずい。複数人に相手している他の男娼さんたちの凄さを改めて思い知ったよ。
とりあえず彼女たちにエールを作ろう、氷はキレイな花の形にしてケアスキルを込めてみる。
——お!
なんかできた感じがしたけど、彼女たちにはすでにケアスキルを使っているから意味がなさそう。
せっかくなので男娼さんたちの常連さんにも入れておこうか。もちろん、お花じゃなくて◯の形の氷で。
「……」
「……」
何かあったのだろうけど、2人はエールを飲み摘みのナッツをポリポリ黙って食べている。会話は一切ない。
そうだよね、2人とも欠損一歩手前の大怪我だった。はしゃいで飲むような気分じゃなかったのか……
俺も本当はどうしてあんな大怪我を負ったのか聞きたいところだけど、ここでの詮索は御法度なんだよね。
「えっと、お腹は空いてませんか?」
「ふむ。そうだな、もらおうか」
「あたいももらうよ」
新メニューにペペロンチーノ風のパスタを入れたから2人には食べて欲しかったのもあるけど、実際のところ、ケアスキルで治ったとはいえ、大怪我を負っていたのは確か。
早くお腹を満たせてあげて今日は早めに休んでもらおうと思ったのだ。
たぶん明日も魔の森に入るはずだから……
「ゴロー! うまかったぞ」
「だな。ほんとうまかったわ」
「それは良かったです」
2人に褒められて嬉しくなる俺。もっと彼女たちが喜んでくれそうなメニューを考えようと思ったよ。
「レイラさん、アンナさん」
明日もあるし、そろそろお帰りになりますよね? 口にはしないけど、2人なら察してくれるだろうと思い片目をパチリと閉じてアイコンタクト。
「ふむ。そうだな」
「まあ、いいか」
さすが俺の数少ない常連の2人は察しもいい。
「では」
俺が立ち上がると2人もすぐに立ち上がる。
「ああ」
「しょうがねぇな」
「え? ええ! ……いや、あの」
その後2人から両脇を抱えられて……なぜか奥の部屋に!?
生存本能を刺激されていた2人はとても激しくて俺は初めて干からびるかと思ったよ。
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