第22話
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『……たら……だってよ』
『……だ。いったい……』
——う、うーん……?
早朝(5時くらい)、なんだか周囲が騒がしくて目覚めた俺。
「ここは……テント? ……あ、そうだった」
普段の見慣れた天井と違うから、一瞬驚いたけど、そうだよここはテントの中だったよ。
「なんか騒がしいな……」
テントの外が騒がしくて、目が覚めたけど……まだ薄暗く感じるから起きるには少し早いと思う。
けど、外の様子が気になるのし、起きてみようかな。
「よっ」
むに。
——へ?
上体を起こそうとしたら両腕にとても柔らかな感触が……
——いまの何? すごくやわらかくて気持ちがいい……ぁぁ!?
俺はすぐに思い出したよ。昨夜はシエラさんたちと一緒に寝ていたことを。
今は魔の森へ移動中であるが、歓楽街のみんなは次の日の移動に支障がない範囲(営業時間が短い)で商売をしていた。
もちろんウチの男娼館というより男娼出張店(仮設)といった方が良いくらいの小さなお店だけど、俺たちも仕事を早めに切り上げた。
指名がないのでほぼクリーン係だったけど。
……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけレイラさんかアンナさんが来てるかも……なんて期待していた自分がいたから少し、いや、結構ショックを受けてテントに戻ったよ。
レイラさんとアンナさんからパーティーで行動しているから来れない日もあるだろうが、なるべく時間はつくるつもりだと聞いていたから心のどこかで来てくれると期待していたのだ。
見覚えのある女性冒険者(常連さん)が他の男娼さんを指名している姿を見ていたから余計に。情けない俺である。
こういう時は誰にも迷惑をかけず、意外と立ち直るのに有効な不貞寝にかぎるのだ。
そんな感じで、俺は自分のテントに戻るとすぐに横になった。
けど、しばらく目を閉じているとそのテントにシエラさんとマキナさんとカナデさんが入ってきたんだ。
かなり驚いたけど、俺が一人で使うには広いテントだと思っていたから4人で使う分にはすぐに納得できたが、さすがに女性と同じテントを使うのはまずいのではないかと思ってしまった。
しかし理由を聞くと、どうやらウチ(男娼館)のテントの数が足りず、誰かがはみ出しそうになっていたらしく、それならば馬車でも一緒だった俺であればと、シエラさんたちが引き受けてくれていたらしいのだ。
シゲさんに何度か呼び止められたけど、仕事が忙しくて後回しにしたあの時がそうだったのだろう。
仕事が終わってからもシゲさんの事を忘れてすぐテントに戻ってきてしまったから……話を聞きに行かなかった俺が悪く、ここで出ていけば心よく引き受けてくれた彼女たちの厚意を無下にする事にもなる。
なんて事を考えていたら、悩んでいたのは俺だけだったようで、彼女たちはすでに横になり寝息を立てていたんだよ。
今日は一日、馬車での移動が長く、慣れない土地での仕事。今になって疲れが出たのだろうね。
綺麗な女性3人と同じテントになりドキドキしていた俺はなんだが恥ずかしくなった。
「今日はお疲れ様でした。おやすみなさい」
だからという訳ではないが、寝息を立てる彼女たちに小さくそう声をかけてから、自分と彼女たちにケアスキルを使いそのまま眠りについた……
そして今、目覚めたばかりで頭は働いていなかったけど、柔らかな感触に彼女たちの存在を思い出したわけだが、しかし、
——なんで裸!?
俺の両隣には全裸のシエラさんとマキナさんが、頭上にも全裸のカナデさんが背を丸めるように眠っていた。3人とも俺と触れるか触れないかのギリギリの位置。
先ほどは俺が動いたから触れてしまったのだが、これでは動こうにも動けない。
いや、そもそも彼女たちはなんで全裸なのか。
——う、うそ!
というか俺も全裸じゃないか!? いつの間に? しかも、下半身が妙にスッキリしている気がするけど気のせいだよね?
掛け布団もなしに裸で寝て寒くないのは不思議に思うけど、
ごくり。
思わず生唾を飲んじゃった。いや、だって正常な男性なら美女3人の全裸は眼福でしかないはずだ。
しかし、寝ている女性の裸をじろじろと勝手に見るのは違う。デリカシーのない奴だと思われて嫌われなくもないから、すぐに視線を逸らしてみたけど、男の悲しい性というかなんというか、どうしても彼女たちの柔らかそうなお胸に俺の視線が吸い込まれてしまう。
「ふふ。ゴローさん、おはようございます」
「へぉわっ!?」
いつから起きていたのだろうか? 突然のシエラさんの声にびっくりしてウル◯トラマンが悲鳴をあげたら言いそうな変な声が漏れてしまったけど、何も焦ることはないのだ。
俺は落ち着いて朝の挨拶を返す。
「お、おおはようございましゅ……しゅみません、おお俺何も見てましぇんから」
おかしいな。落ち着いて挨拶したはずなのに……しかも元気になった俺のアレが今もなお主張し続けているから俺の言葉には説得力がない。
でもしょうがないと思う。美女3人が寝ている空間に、ひとり元気になっている俺のアレ。彼女たちからすれば間違いなく嫌悪の対象。
だから彼女たちが起き上がり気づく前になんとしても隠したかった。
俺もろ出しだし、嫌われなくないし、俺の服はどこにいった……
素直に大人しくなってくれていればよかったけど視界に彼女たちの裸体が入るから治るものも治らない。
「あら」
起き上がったシエラさんの視線が、俺が今1番見られたくない方を向く。
——ああ〜だめ、そっちはだめ!
完全にアウトな案件。
変態、女の敵、そんな肩書きをつけられ女性から鬼の形相で睨まれている自分の姿が、脳裏に過ぎり、俺は反射的に言い訳を口にしていた。
「あ、あの、ですね。これはその、あ、朝の生理現象といいますかぁ……正常な男性の朝はこんなもので……あはは、朝は必ずこうなるんですよ……大人しくしろ、こいつ、てね……あはは……」
でも、元々嘘を付くのが苦手だった俺は言い訳をすればするほど罪悪感に襲われ、ついには堪えきれなくなっていた。
「すみません。シエラさんたちの綺麗な身体を見ていたら反応していました。できれば、その見ないでほしいです」
謝罪したついでに、今すぐにでも両手で隠したい。
けど、少しでも両手を動かそうものなら彼女たちの身体に触れてしまうので動かせないチキンハートの俺なのである。
「私の身体が綺麗、ですか……ふふ、ありがとうございます」
「あら、まあ」
「朝からうれしい事言ってくれるねぇ」
しかも、いつの間にか、カナデさんとマキナさんも起きていたようで、2人からも俺の元気な姿を見られてしまい、逃げ場のない俺は魂が抜けたような表情をしていたと思う。穴があったら……ってまた変な事を……ううう。
「お、おはようございます。カナデさん、マキナさん。これには色々と事情がありまして、できれば見ないでください」
っていうか3人とも見過ぎだよ。だから余計に反応して、頼むから見ないで。
「ゴローさん……大丈夫ですよ」
「そうですよ〜」
「まあ、任せなよ」
「へ? あ、いや、ああ……ちょ、ちょっと……」
————
——
「はっ!?」
次に俺が目が覚めた時には、少し明るくなっている(6時くらい)時間だった。
「あれ? みんながいない。じゃあ、あれは夢、だったのか?」
彼女たちからプロの技を披露された夢の様な幸せな時間。
身体はケアスキルを使っていたから大丈夫でも意識が飛べはどうしようもない。
「やっぱり夢だったか」
俺は服を着ているし彼女たちもテントの中にいない。
俺だけ指名がなく悶々としていたから欲求不満だったのだろう。だから変な夢を見てしまったのだ。
「でも、あんなリアルな夢ならまた見たいかも……ふへへ」
ただテントの外が騒がしいままだったので、ちょっと興味本位で外に出てみる。
「ゴローさんも起きていらしたのですね。おはようございます、気持ちのいい朝ですよ」
「ゴローさんおはようございます。今日は最高の朝ですよ」
「ゴローさんおはよう。今日も頑張ろうな」
テントを出てすぐに先に起きていたらしい彼女たちから笑顔で声をかけられた。それだけでうれしくなるチョロ男の俺。ついでに夢の中で見た彼女たちの裸体を思い出してしまい顔が火照るのを感じる。
「おはようございます。えっと外が騒がしいようですが、何かあったのですか?」
だから別の話題をすぐに振ってみたんだけど、
「あそこの村の方たちですね」
「はい、そうですね」
「あはは」
シエラさんが指を指した先には村人がたくさん集まっていた。
ただマキナさんとカナデさんはお互いに顔を見合わせてから笑うだけだったが。
——え、どういうこと?
騒がしく感じたのはたぶんあの人たち。村の柵の辺りに群がっているようだけど、やはり理由がわからない。
不思議に思いつつ聞こえてくる村人の声に耳を傾けていると、
「なあ何があったんだ?」
「お前、今ごろ起きてきたのかよ」
「まあな。ほら、例のアレに行ったらよ、ハリキリ過ぎたんだよ。がはは」
「お前大丈夫か? 嫁さんに知られたら家から追い出されるんじゃ……まあいいさ、それより見ろよこの柵」
「バレやしねぇって、それよりも柵がなんだよ……はあ!? 柵が綺麗に修繕されているじゃあねぇか。一体誰が」
「俺が分かるわけねぇだろ」
「しかもこれがここだけじゃなく、ぐるりと村を囲っているすべてなんだぜ」
「おいおい。マジかよ。他の連中も知らねぇのか?」
「他の連中も分からねぇってよ」
「一体だれだよ……」
なるほど。木の柵が綺麗に修繕されていたから騒ぎになっていたのか。マキナさんとカナデさんが笑っていた理由も分かった。
それは犯人が俺だからだ。彼女たちは俺が修繕しているところをすぐ側で見ていたからね。
快楽街の人たちの中にも、俺が犯人だと気づいている人たちがちらほらいるようで、何人もの男娼さんや娼婦さんから視線を向けられてしまった。
彼、彼女たちから俺の名前がでることはないが、俺からも名乗り出るつもりはない。
「なんだ、この騒ぎは? 何があった」
しかし、騒ぎを聞きつけた王国騎士団の人たちまでもが集まってきた時にはさすがの俺もバレるんじゃないかと、内心焦りを感じ始めていた。
「ゴローさん、おはようごさいやす」
「バジスさん、おはようございます」
「どうせゴローさんですよね。ややこしくなるので、馬車に乗っていやしょうや」
「そ、そうですね。バジスさんありがとうございます」
気を利かせてくれたバジスさんに助けられる形で馬車に乗り込んだ俺。
でも、王国騎士団の人たちも騒ぎをおさめるだけで犯人を探すような動きがなかったので正直助かったよ。
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