第19話
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「ルークさん。子どもたちのこと頼みます」
「いいよいいよ。ゴロっちにはいつもお世話になっているからね。子どもたちのことは俺に任せといて」
今回の遠征に着いて行くメンバーは、ウチの男娼館の約半分。そのメンバーはシゲさんとの話し合いで決まった。
俺の場合はシゲさんから参加するようにお願いされた形だったので、断るに断れなかったんだよね
ちなみにルークさんは男娼館に残るメンバーの1人。俺の1つ年上でノリがよく軽い感じのイケメンさん。
愛想がいいのでよくお姉さま方に囲まれては可愛がられていて、もちろんウチの男娼館では人気トップ10に入っている。
そんなルークさんも初めて出会った時には喉を斬られていて、声が出せていなかったんだよね。表情もどこか暗かったし。
でも元々明るく気さくな人だったからすぐに仲良くなれたんだ。子ども好きとは思わなかったけど。
最近では俺が子どもたちと遊んでいたら俺も仲間に入れてくれ〜って入ってくるんだよね。
すでにたくさんの幼女がルークさんに懐いている。
「ありがとうございます。昨日のうちに休憩場を作り上げましたんで、子どもたちと使ってください」
休憩場といっても小さなかまくらのようなモノ。中に小さな円卓を置いているけど、小さな子どもたちなら数人はお昼寝できるスペースはある。子どもたちが喜んでくれるといいけどな……
「あと、これで子どもたちに何か食べさせてやってくれませんか。お願いします」
子どもたちはいつもお腹を空かせている。1番年上(11歳)のララちゃんの話では1日1食が普通っぽいんだよね。
家庭の事に口出しできないし、下手な事を言って子どもが親から怒られたりしたら可哀想だから言わないけど……1日1食は俺でもつらい。だから俺が勝手に食べさせているんだ。
電子レンジとかあればいつものホットケーキもどきをアイススキルで凍らせておくんだけど、そんな便利な家電はないからな……
それでお金を預けておこうと思ったんだけど、
「いいって、それくらい俺も持ってるから」
ルークさんにお金をつき返されてしまった。
腕を組んで意地でも受け取らないという姿勢をみせるから仕方なく断念。俺はお金をポーチスキルにしまった。
「それより早く行かねぇと、ゴロっちにお迎え来てるぞ」
「え?」
「ゴローさん、お迎えに上がりやした」
そう声をかけて来たのは強面のリーダーことバジスさんと他数名の強面さん。
シエラさんが管理している娼館の黒服(用心棒?)さんたちだ。
「みなさん、わざわざすみません」
シエラさんをはじめとした娼婦さんたちがウチの男娼館を利用してくれた時に、必ずといっていいほど彼らがお迎えにくるから彼らとはもう顔馴染み。とはいえ、初めて彼女たちをお迎えにきた時には、腰を抜かしたんだよね。
暗闇だし娼婦さんとえちえちした後だし、ウチの娼婦に手を出しやがって、てな感じの雰囲気がヒシヒシと伝わってきたからさ、あの時は本当にこの世の終わりを覚悟したよ。
実際は、彼らにそんな気はなく本当に迎えに来ただけだった。夜の快楽街は何かとトラブルが多いからと。
俺が勝手に勘違いしただけだけど心臓に悪かったよ。
「ゴローさんはおきになさらず」
本当はハンゾーさんやコジュウさんと同じ馬車で移動するはずだったんだけど、なぜか俺だけシエラさんたちの馬車で移動することになっていたんだよね。もちろん犯人はシゲさんだ。
シエラさんたちは俺のお客様でもあるからいいんだけど……あ〜もう緊張してきたよ。
でも、レイラさんとアイナさんに申し訳なくも思うんだよね。浮気じゃないけど、浮気するみたいで。
館の外で会うからそう感じるのかな……
というのも、怒られるのを覚悟で今回の遠征のことを話したら、レイラさんとアイナさんは逆に喜んでくれたんだよね。
理由は簡単。レイラさんとアイナさんもその遠征に参加するからだ。しかも、遠征先でも必ず来るとまで言ってくれた。
だからこそ、シエラさんたちの馬車で向かう姿は見せたくないという見られたくないというか……
付き合っているわけじゃないから浮気じゃないけど嫌われないかと心配なんだ。
冒険者(先頭)、王国軍、商人、俺たち(最後尾)の順で出発するらしいから位置的には会うはずないんだけど……つい、周囲を確認してしまう。
「それじゃルークさん。よろしくお願いします」
「はいよ。んじゃ、ゴロっちも頑張ってきなよ」
居残りする他の男娼さんたちにも挨拶をしてから、遠征組のみんな(男娼)と広場まで歩いて行く。
「……」
バジスさんたちは広場で俺が迷わないように(シエラさんたちの馬車の位置が分かるように)わざわざ迎えに来てくれたんだけど、無言で歩かれると威圧感が凄い。
話す雰囲気でもないで無言で歩けば、すぐにちょっとした広場に着いた。
「すごい数の馬車ですね」
「みんな稼ぎ時でやすから」
意外にもバジスさんが答えてくれたけど、その広場には娼婦たちが乗り込むであろう馬車がたくさん集まっていた。
たしかに、これではシエラさんの馬車も見つけにくい。
「ゴローさん、こっちでやす」
「あ、はい。みんな俺、あっちの馬車に乗りますんで」
「あいよ」
「おう」
「後でな」
ハンゾーさんやコジュウさんたちが気だるそうに手を上げる。
しばらく会えないと嘆く複数の女性たちと朝方まで過ごしていたらしい。モテる男娼たちは違うよね。彼らにケア? あれは彼女たちとの思い出だから治さなくてもいいんじゃない、と思いつつも、結局、ホッとけなくてケアをしていた俺。なんか涙が出て来た。
「悪いな」
「ふん、何かあれば俺に言え」
「お、ありがとうな」
本当ならルークさんもこっち側(遠征側)の男娼さんだったと思うんだけど、たぶん子どもたちの事を心配して残ってくれたんだろうな。今度何かお礼がしたいな。
——ん? あの人は……
シエラさんたちの馬車までの移動中、色々な人とすれ違ったけど、その中にけっこうな病を患っている娼婦さんを見つけた。
「俺、ソコノ男娼館のゴローといいます。よろしくお願いします」
ほっとけなかったので、その娼婦さんの手を取り素早くケアを使う。
「きゃ、あなた何? ちょっと触らないでよ!?」
すぐに払い除けられてしまったけど、ついでに睨まれてしまったけど、ケアはできたからいいんだ。
「ちょ、ちょっとゴローさんっ、何やってるんすか」
バジスさんからも怪訝な顔をされたけど、いいんだ、いいんだよ。
今の人、なんかララちゃんのお母さんっぽかったし。ララちゃんが悲しんだら可哀想じゃない。だから心にダメージなんてナイヨ。オレハダイジョウブ。
「お、俺、ソコノ男娼館のゴローといいます。よろしくお願いします」
「あはは……どうもね。私はリンカだよ」
今度はリリちゃんのお母さんっぽい人を見かけたので同じようにケアを使った。
ララちゃんのお母さんとは同じ娼館に勤めているのだろう。ララちゃんのお母さんの近くにいた。
リリちゃんのお母さんは小柄で可愛い人だった。笑顔でなんでも許してくれる感じがしてちょっと癒されたよ。俺、復活。
「どうも俺はゴロー、よろしくね」
その後も同じような事を繰り返していれば色々な娼婦さんから白い目を向けれるようになって……? あれ、なってなかったよ。
「あのゴロー様。私とも握手してもらえませんか?」
「あ、はい」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
それどころか自分の体調に不安がある人がこぞって握手を求めてくるようになっていた。
時間にして5分くらい。不健康そうな人を見ると気になるからいいんだけど、でも思ってた以上に感謝されるからちょっと居心地が悪くなってきた。
「あ、あの……」
ララちゃんのお母さんからも先ほどはすみませんと謝罪されてから感謝された時には驚いたけど、ちょっとした騒ぎにもなってきたので、これは流石にマズイと内心焦っていたら、
「ゴローさん、そろそろいかねぇと間に合いやせんよ」
バジスさんが気を利かせてくれて俺の腕を引いてくれたので正直助かった。
「そうだね」
バジスさんありがとう。ナイスタイミングです。
俺は逃げるようにシエラさんの馬車まで移動したけど、バジスさんからは「あまり目立つのは勘弁してくだせぇ。俺が怒られやす」と怒るどころか、泣かれてしまった。すみません。
もしかしてオーナーは怖い人なのかも。なんて事を考えていたら、馬車の小窓が開きシエラさんが顔を出す。
「ゴロー様。歓楽街の中での事ならどうとでもなりますのでお気になさらず。それよりも中へどうぞ」
「シエラさん。ご迷惑おかけしてすみません」
「迷惑だなんて……ゴロー様はもっと私を頼ってくださいな」
「えっと、はい。ありがとうございます」
社交辞令だと思うけど、シエラさんの言葉にホッとした俺。
「ゴローさん」
俺の名前を改めて呼んだシエラさんがニコリと笑う。
空気の読める俺はこれは早く馬車に乗れっていうことだと察する。
「は、はい。では失礼します」
それからバジスさんが馬車のドアを開けてくれたので馬車の中に乗り込んだけど、中は少し高そうな内装で、シエラさんの他に2人の娼婦さん(俺のお客様)が座っていた。
「お隣、失礼しますね」
「はい」
必然的に俺はシエラさんの隣に座ることになったけど、なぜかシエラさんがすぐに俺の左手を包み込むように両手で握ってきたのでドキドキしてしまったよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




