第15話
ここ数日レイラさんとアンナさんが来てくれません。
悲しいことに2人同時期に数日来れないと言われたんだ。
ある地域の討伐依頼が入ったとかなんとか。そこまで片道2日くらいかかるらしい。
あれ? 今思い返すと、受けたんじゃなくて入ったって言っていたっけ。ってことはレイラさんとアンナさんは高ランク冒険者の可能性が高い?
それでいてレイラさんとアンナさんは同じ依頼を受けていて実は同じパーティーだったって落ちで……いやまあ、そんな偶然あるわけないか。
そもそも俺は2人がソロなのかパーティーで活動しているかも知らないんだよね。
なんか悲しくなってきた……
あの日(依頼が入ったからしばらく来れないと告げられた日)も今みたいにショックを受けていたんだよね。
そのショックを受けている顔を見られて笑われたんだけど、あの日は笑いながらも延長してくれたんだよ。レイラさんもアンナもほんと優しいよな……
「はあ」
だから早く月額(割引料金)料金の話をしたかった。
そうなんだ。ダメ元でオーナーに月額料金制度の導入を検討してもらえないかと意見及び要望書を意見箱に入れてみたらあっさりと認めてもらえたんだよ。
これを利用すれば、金貨60枚払ってもらっていた料金が金貨40枚ですむ。30日で割ると1日金貨1.3枚くらい。
つまり、俺の月額利用料金は提案(要望)通り金貨40枚でオッケーしてもらえたんだ。
しかも、その内訳は俺10枚、店30枚ではなく、以前と変わらず折半でいいらしく俺20枚、店20枚になっている。
ただし、これは月額で払った人限定で、月額払いでない人は今まで通り金貨2枚。
まあ、イケメン男娼揃いのこの男娼館で、平凡顔な上に金額がばか高い俺を指名する物好きはほとんどいないんだけどね。
他の男娼さん? 他の男娼さんには希望する人だけ導入するような話だったけど、いつの間にかみんな導入していたよ。
元々飲食代は別料金だったからね。顔のいい他の男娼さんたちは、来店さえしてもらえば、そちらで売上を伸ばすんだ。
今のところ、導入する前よりもお客様の来店頻度が増えて稼ぎが良くなっているっぽいよ。
まあ俺だって今月は、以前ケアスキルで治療した娼婦さんたちが、わざわざ自分の休日の日に来館して俺を指名までしてくれたんだよね。
美魔女の館長さんまで来てくれた日には驚いて、思わず姿勢を正してしまったよ。
なんていうか、休日に厳格な上司と顔を合わせてしまった感じ?
おっと、館長さんはシエラさんと名前で呼ぶように注意されていたんだった。
そんなシエラさんは口数が少なく落ち着いた方だったけど、俺が提供した食事は気に入ってくれたようで、おいしいと褒めてくれた。
しばらく食事を楽しんだシエラさん。館内の様子を見てすぐに俺が女性に人気がない事に気づき、今はお客様の相手はしていないと話していたのに、俺に気を遣ってくれて奥の部屋を利用をしてくれたんだ。
ほんと申し訳ない。
だから、俺は精一杯のおもてなしをした。えちえちはもちろん、ケアスキルを使い小さなシミや小ジワを消して今よりもワンランク上のお肌になるように頑張ったよ。
元々お色気ムンムンだったシエラさんだけど、さらに磨いてお肌を艶々に仕上げた結果、お帰りの際はヤバいくらいに色気を放っていたよ。
色々とやり切った俺を褒めてやりたい。
シエラさんだけじゃなく他の娼婦さんも奥を利用してくれたから同じように頑張れば、休日を利用してまた来ますって言ってくれたよ。
同業者だし社交辞令だろうけど単純な俺はそれでも嬉しくなるんだよね。
その後、まったく指名が取れなくても、喜んでくれたみんなの顔を思い出せば、気分よく過ごせるんだ。
仮にイケメン男娼たちの常連さんたちから居酒屋のマスターだと勘違いされていたとしてもへっちゃらさ。
なんて思っていたのに、それがなぜか、シエラさんは週一で来てくれるようになり、他の娼婦さんにも月一で来させる(娼館負担で)と言ってくれる。
これはもうシエラさんには俺が何かしているのかバレている感じだね。
シエラさんのお店では有名になりつつある俺。でもいいんだ。辛そうにしていたお客様が、元気になり嬉しそうに帰って行く姿を見れば俺もうれしくなるから。
まあ、悩みどころとしては、利用してもらってばかりでは悪いので、俺も休日に娼館に行った方がいいのかな? 一度も行った事ないし、なんて思ったりしているんだよね。
「エールをくれないか」
「俺……私もいいかな」
「私もだ」
「いらっしゃいませ。エール3つですね。ありがとうございます」
今日も3人のオネエ(女装した男性)さんが俺の指名席に座った。
そうだった。俺はオネエ界隈でも有名になりつつあるのかも。
身体のどこかに大ケガをしていて、人によっては病まで患っているオネエさんたちに。
俺の見解では、オネエさんたちはケガした男性が行き着いた先だと思っている。
たぶんオネエ業界は福利厚生がしっかりしているのだ(勝手な思い込み)。
同じ痛みを抱える者たちが協力して支え合っているとかさ。
——3人ともケガに……魔臓一部欠損による倦怠感? またか……
今日の3人もそうだ。ケアスキルがどんどん優秀になっていくから、ちょっと見るだけでケガや病気がすぐに分かるようになっている。
魔臓はたぶん魔力を作る臓器だと思うんだ。魔法のある世界だから、そんな臓器があったとしても不思議じゃないもんな。
最近になってそれを一部欠損している人が不思議なほど多くなっている。特にオネエさんたちに。
どうやったら一部欠損するのやら。この世界特有の病気なのかね? まあケアスキルで治せるんだけどね。
他にも直接触れなくてもケアスキルが使えるようになっている。
離れれば離れるほど回復力や回復速度が悪くなるけど、こんな時(カウンター席くらいの距離)は便利だ。
「はい。エール3つ、おまち〜」
エールを渡すついでにケアスキルを使えばいいからね。
「むっ!?」
「こんな一瞬で!?」
「か、髪が……!?」
オネエさんになって日が浅かったのか、オネエさんの素(男)が出てるよ。笑ったらダメだけど1人薄毛の人がいてカツラが浮き上がって、ダメだ。笑いそう。
「ウソ魔力も戻ってる」
「ホントだ」
「ぬおお」
エールを飲みながら泣いて喜んでいる。
どうしたらそんな事になるのか、参考までに(身の保険的な意味だ)聞いてみたいけど、詳しく聞くのは御法度だからな。
やっぱりこの世界特有の病気なのかな?
「「「ゴローさんありがとう」」ございます」
「いえ。おかわりはいかがですか?」
お礼を言われても普通にスルーして誤魔化すのがいつもの流れなんだよね。
「おい、今日はたっぷり飲むぞ」
「おう」
「ゴロー、エールをもういっぱいもらえるか」
「はい、喜んで」
オネエさんたちは、自分の方が大変な目にあっているのに、必ず目一杯飲み食いしてくれるから憎めないんだよね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




