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西郷吉之助の帝国と音速の魔女  作者: のなしげ


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【現代異世界編】音速の魔女と千尋の対潜箒ブートキャンプ4

『緊急着陸を要請します、吉野三佐が泡を吹いて倒れました』


格納庫のスピーカーに管制室からの音声が流される、


格納庫が騒がしくなる、


「え?えええ」


源吾が慌てる、こちらも今にも泡を吹いて倒れそうだ


「落ち着きたまえ、西郷くん、どうせ、千尋くんが無茶をしただけだ、死にやせん」


玉利は落ち着いている。


着陸予定地点に、医療スタッフ、整備員、ほかの箒乗り、基地の職員、消防隊


沢山のスタッフが集合する


滑走路は閉鎖され。旅客機は誘導路で停止、ここは首都の空港だ経済的損失も大きいだろう。



地上の人間皆が空を見上げる、


地上の誰かが指を指しながら叫ぶ


「あ!いた!」


通常の空港で軍用機に許された降下速度の10倍ほど、


風切り音と共に千尋と中村中尉の乗った対潜箒が降りてくる


そして、地上ではめったに聞くことのない、低く重い魔力の共鳴音。


そして激しい風切り音。


――ぶおおおおん。


青い機体が、空気を震わせながら着陸地点へ迫る。


地面に着地、瞬間医療スタッフが対潜箒へ走る。


源吾も玉利も走る。


「おい、千尋くん大丈夫かね」


「千尋!」


「中村教官殿! 何があったのでごわすか!」


源吾はすでに泣いていた。




「はあ、はあ、は、はははは、楽しかった」


千尋は笑っている。


「は、ははは、ねえ、源吾、結婚しよう、わたしこっちの世界に来る」


千尋は死亡フラグのようなことを言い出した、低酸素による


多幸感、判断力低下、自己認識の低下の結果である。


『患者は低酸素状態による意識混濁を起こしている模様』



『結婚しようなど、支離滅裂な発言を繰り返しています』


医療スタッフが、通信機へどこかに報告する。


「ははは、ねえ、空、めっちゃ楽しいわ、結婚し」


千尋に酸素マスクがはめられた、


「い、いや、また飛ぶの」


千尋は酸素マスクを外し暴れだした


『対象は激しく錯乱している模様、低酸素の状態、すぐに医療室に搬送します』



*


ここは司令室


「中村教官殿! 何があったのでごわすか!」


「上空で制御を渡したら、いきなり垂直へ上昇して」


「私はすとりーく、いーぐる(?)と訳が分からないことを言い出して」


ストリーク・イーグル。


上昇記録への挑戦を目的として特別に改造された、F‐15戦闘機のことである。


「途中で低酸素状態になったのか、気を突然失って」


「なぜ止めなかった、呼吸魔法も知らない、向こうから来たばかりの人間だぞ」


「呼吸魔法は、航空学校へ入って初めて習う魔法ではありませんか!」


そもそも、中村は向こうの世界が魔法が無い世界ということを知らない。


「千尋三佐はベテランなので…魔力の循環も完璧なので、呼吸魔法など当然できるかと


呼吸魔法なしでは、高度三千メートルでも息苦しくなります。本人だって異常に気づくはずです!


だって、3000mから60秒しないうちに 10000メートルですよ


泡を吹く直前まで、かすれた声で『楽しい、楽しい』とはしゃいでいたんです!」


「魔法が、ない?」


「ない。呼吸魔法どころか、魔力という概念すらない世界だ」


「では、あの魔力循環は……」


「才能だ。基礎を一切知らんまま、感覚だけであそこまで飛んでいる」


「格納庫で言った通り、生まれて初めて箒に乗ってから一週間だぞ」


「いや、そんな、吉野三佐こそ、音速の魔女だと思っていたのに」


「そんな、初めて箒に乗ってから一週間…!?」


「音速の魔女??」


源吾が中村に聞き返した。


「いや、ストリート箒レース界の生きる伝説です。


しかし昨日とうとう現れなかった って、走り屋をやってる友人から聞いて


そいつは、この世の終わりだと落ち込んでしまって」


3000mから10000mまでの60秒中村は人生のなかで一番の幸福だった。


千尋を音速の魔女と同一人物と確信、確かに音速の魔女と共に飛んでいた。



*



ただの野良レースに参加していると思っていた千尋が、音速の魔女という二つ名を得ていた。昨日現れ


なかったという答え合わせ付きで。西郷と玉利は苦笑いをする。



「西郷君」


「……はい」


「どう考えても、中村君は被害者だ」


コンコン。


何者かがドアをノックする


「どうぞ」


「失礼します、吉野三佐が意識を取り戻しました、しかしまだ錯乱しているようで」


「はははは」


司令室の中は笑いに包まれる。



*


「私は正常です! もう一度飛べます!」


「離してください! 今度は息を止めてから頑張ります。」


「呼吸魔法を教えてください」


「源吾と結婚する」





「低酸素による深刻な精神異常を確認」


医官はカルテにありのままを書き残す。



*


「――こうして、私が生まれたってわけ」


少女は得意そうに胸を張った。


ここは保育園。千尋が箒で気を失ってから7年後。


園庭の隅で、あやちゃんは保育園の先生に両親の馴れ初めを語っていた。


「ほうきで泡をふいたら、けっこんできるって」


子供とは残酷である。


「きょうはお迎えはパパだよ」


「ママは、まほうだいがくのクラスメイト 兼、せいと、と のんかたがあるって」


のんかたとは鹿児島弁で吞み会のこと、あやちゃんはバイリンガルだ。


先生の頭の上にはてなが渋滞中だ。


「けっこん前に、いちねんかん、まほうだいがくにりゅうがくせいとして通ったんだって


それで、よねんせいで、せんせいをしたんだって」


先生の頭の上のはてなは玉突き事故を起こしだした。



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