↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
西郷吉之助の帝国と音速の魔女  作者: のなしげ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/111

【現代異世界編】音速の魔女と千尋の対潜箒ブートキャンプ3

数人がかりで、対潜箒を格納庫から引っ張り出す、


箒と名前がついているが、清掃道具の名残のかけらなど一つも無く


誰がみても空飛ぶ金属製の戦闘マシーンだ、所定のポイントまでついたようだ。


「さて、吉野三佐後ろへ、私が前に乗ります。」


「魔力の循環を見て感じて、いてください、基本は普通の箒と同じです、ただ出力の桁が違うだけで」


「了解、なるほど、いま外部マナタンクの魔力が中村中尉へ流れているのが確認できます。」


「はいその通りで、見えていますね」


「そのまま流れを見ていてください。操縦者の魔力と機体を同調させます」


「管制から離陸許可が出ました。これから高度千メートルまで、ゆっくり垂直上昇します」


「千メートルまでは垂直に?」


「千メートル以下は、普通の箒が飛び交う世界です。軍用機であっても、緊急時でない限り、市街地上空を自由に飛ぶことはできません」


対潜箒が、音もなく地面を離れる。


数トンはあるはずの金属製の機体が、羽毛のように浮かび上がった。


「普通の箒では、操縦者自身の魔力を推進力として使います。しかし、この機体では、操縦者は外部マナタンクから供給される魔力を制御する弁の役割を果たします」


「パイロットが増幅器ではなく、制御装置になっている?」


「魔力を強く流せば速く飛べる、というものではありません。人の制御限界を超える流量を人体に流す


と、焼けます。」


「焼ける??機体が?」


「いや体が、血管が、脳が」


「ひぇっ…」


「ちなみに、普通の箒でも一緒です、夜中に不良どもが、山の中をレースしていますが、


脳を焼くかコントロールを失って、木に衝突して無くなる若者が多いのです」


千尋は中村の後ろにおり、お互い顔は見えないのだが、中村の後頭部からめをそらす


「全く… 山の中でレースだなんて、非生産的な行いで許せませんなあ。親御さんが泣きますねえ」


棒読みだった。


「まったくです」


中村は、自分のことを棚に上げて深くうなずいた。


「で、でも、素質のある人なら、脳は焼かれないのでしょう?」


千尋が後ろめたい感じで質問をする


「帝国史上最大の魔力量を誇ったといわれる初代皇帝なら、余裕で太陽系外まで飛べたでしょう」


「太陽系外……」


「実際に行った者はいませんが」


「そうでしょうね」


「現在でも、人工衛星を打ち上げる際には、魔力の資質に優れた者が宇宙飛行士を務めます」


「打ち上げる?」


「はい。宇宙用箒で人工衛星を運びます」


「箒で?」


千尋は身を乗り出した。


「ロケットではなく?」


「ろけっと?」


「火を噴く、大きな筒です」


「ああ。向こうでは、火を噴くミサイルのお化みたいな物で人工衛星を空へ投げると聞いています」


「投げるというか……まあ、だいたい合っています」


「こちらでは、宇宙用箒と資質のある人間があれば十分です」


「ちょいと宇宙まで上がり、地面へ落ちてこない速さまで加速してから、人工衛星を放します。そうすれば、地面には落ちてきません」


「軌道速度まで、人間が箒で加速するの?」


この世界では、魔法が科学の発展を妨げているわけではない。


魔法そのものが、科学技術の一部として組み込まれている。


ロケットを開発する必要がなかった。


莫大な燃料も、多段式の機体も、巨大な射場も必要ない。


魔力の多い人間が、人工衛星を抱えて宇宙まで飛んでいけばいい。


「……すごい」


千尋の目が輝き始めた。


「宇宙往還機のパイロットもいいけど、宇宙で箒もいいなあ」


対潜箒を開発する、旦那、自分のアイデアが兵器になるかもしれない世界、


おそらくは大気に依存しない推進力に第一宇宙速度まで加速できる加速力を


操れる資質を持つ自分。


「うーん、こっちに来てよかったわ」


「え?」


中村が振り返ろうとする。


「何か言いましたか?」


「いえ、何も」


「そうですか。もうすぐ高度千メートルです」


中村は再び前を向いた。


千尋は眼下の帝都(鹿児島市街)と、その向こうに広がる錦江湾を見下ろした。


帰る方法を探さなければならない。


そのつもりだった。


少なくとも、一週間前までは。


だが今の千尋の頭の中には、対潜箒と宇宙用箒しかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。