【維新編】月照蘇生の家。
858年11月16日(安政5年10月11日)。
現在の住所で言うところの、鹿児島市吉野町――花倉の漁師、坂下長右衛門の藁葺屋根の家。
月照は意識を取り戻していた。しかし、辛うじて意識はあるものの、会話できるほどの気力は残っていない。
その頃、月照を海から助け出した福岡藩士・平野国臣は、島津久光らが派遣した者たちによる厳しい事情聴取を受けていた。
「西郷さんは、海の底の光る穴に吸い込まれていきましたッ!」
平野は見たままの真実を訴えた。
しかし、薩摩藩の役人たちからすれば、江戸幕府に対して「海の底の光る穴に吸い込まれました」などというふざけた言い訳が通るはずもない。
だいたい、藩内でも随一の泳ぎの達人である西郷が溺れるはずがないのだ。つまりは「どこへ逃げたのか吐け」という事情聴取である。
話は完全に平行線を辿っていた。
*
一方、夜の海岸では、暗い海に向かって泣きながら叫ぶ男が一人。
「吉之助さーーーあッ!!」
大久保一蔵(のちの利通)である。
滂沱の涙を流しながらも……正蔵は、胸の奥底で冷たい覚悟を決めていた。
吉之助が遺した置き土産である月照を、何としても生かす。幸い、密かに匿う当てはあった。
波音が響く海岸で、ただ泣き叫びながらも、大久保の脳内では凄まじい速度で思考が回っていた。
島津斉彬公と、西郷が不在となったこの世界。
その絶望的な盤面の中で、台頭する久光への対策、朝廷を中心とした新体制の構築、月照の政治的な生かし方、そして――列強からこの国を護るための、新しい日本への冷徹なロードマップが、すでに組み上がり始めていたのだった。
平野国臣 調べていて思ったのは
なんなのこいつw
みんなも調べてください、なんなのこいつwって顔になりますから。
なお
ハイファンタジーです。
ローファンタジー、歴史ではないよ。
IF幕末編カテゴリーエラーにならない程度に書きます、レビュー、応援、よろしくお願いいたします。




