【異世界編】赴任先は異世界の魔法大学。初日の授業は『チェスト!』の否定から始まります。8
「――ってことがあったのよー」
ここは千尋の自宅。夕食が終わった後のくつろぎの時間だ。
現在、家の中には4人。千尋と旦那、娘の『あやちゃん』、そして獣人のクロネコメイドである『ボー』だ。
リビングでは、旦那があやちゃんに絵本を読み聞かせている。
言語は日本標準語。この家庭の中では、帝国語(鹿児島弁)は禁止というルールになっているのだ。
保育園ではもちろん帝国語なので、あやちゃんはすでにバイリンガルとしての使い分けができているのだが、まだ幼いため、たまにスイッチの切り替えがうまくできずに混ざってしまう。
一方、メイドのボーはといえば、ソファーで千尋にガッチリとホールドされ、ひたすらモフり散らかされていた。あわれ、もう逃げられない。
「あれ? ボー、腰のあたりにまた『ひみつ道具』が増えているね。さすがボーえもん」
「奥様、やめてくださいましー。あと、その『ボーえもん』って何なんですかぁ?」
もちろん千尋は、彼女の正体に気付いている。明言こそ避けているが。
ボーの正体は、帝国政府機関の職員である。本名は『サト』。「ボー」というのはコードネームだ。
多種多様な獣人が住む紀伊島出身で、帝都育ち。元・特殊部隊の経験者であり、部下も束ねて出世もしたエリートである。
言語能力に秀でており「日本標準語をすぐにマスターできそう」、かつ「いざという時の護衛もできる」という理由から、千尋の家にメイドとして送り込まれてきたのだ。
最初は料理が苦手だったが、猛特訓と千尋のスパルタ指導により、今ではかなりの腕前に上達している。
実はボー自身、今の平和なメイド生活をかなり気に入っている。「やめてくださいまし」と口では言いつつも、千尋にモフられるのはまんざらでもないらしい。
「ねえ、あのイカ(クラーケン)って焼いたら美味しいのかな? 今度仕留められたら持って帰ってくるから、ボー、料理してよ」
「やめてください! 初代皇帝がアレを焼いて家来に振る舞ったところ、家来たちが全員お腹を壊して、帝国の業務が1週間停止したと建国史にあります!」
「自分は食べなかったのかい!」
「食べたそうですが、平気だったみたいです」
「へー、そうなんだ。今度謁見した時に、どんな味だったか直接聞いてみるよ」
ボーが宿舎に帰る時間になるまで、千尋の容赦ないモフりは止まらなかった。
不思議魔法の力で、吉之助まだ生きています。
あと、旦那も密かにボーをモフりたいと思っているようです。
さて、次回からは少し時計の針を戻し、『IF幕末編』へ突入します!




