表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/20

【異世界編】赴任先は異世界の魔法大学。初日の授業は『チェスト!』の否定から始まります。7

周囲には民間貨物船が一隻いるだけ。雲もない。ちひろちゃんが来るなら陸地からだよな。

クリオがそう思いながら陸地を警戒していると――。


「音がします。潜水艦の音ではないのです」

岩川(いわかわ)が呟く。


その直後、吉野からの通信が入った。

『小瀬田、こっちだ。貨物船に着艦しろ、信管設定を手伝え。ネコブカの野間達を救うぞ』

「教官、ネコブカですか!? どういうことです?」

『小瀬田、着艦します』


小瀬田は慌てた。魔法大学校に入る前、彼女はまさにその『ネコブカ』の魚雷発射室で「信管設定管理員」をしていたのだ。

信管設定管理員とは、魔法を使って魚雷の弾頭に設定(起爆タイミングや属性)を書き込む担当である。吉野も信管設定ができないわけではないが、プロとしての経験を信じて小瀬田に任せたのだった。


「1番から8番、全部のゴッババ(魚雷)に3秒遅延信管! 中身は爆裂フルで! 小瀬田機の1、2番も同じ設定を頼む!」

「船長! ブルーシートどけるの手伝って! あと取舵ね、巻き込まれないように離れて!」


聞いていたガイミ船長以下メンバーは、「人の船の上で何をしだすのか」と呆れたが、操舵手を一人残し、船橋のメンバー総出でブルーシートを外す作業に向かった。


「岩川!! お前は通信担当だ、ディッピングソーナーを下ろせ! モールスでネコブカに『イカを退かす、一歩も動くな! アホ!』と伝えろ!! あと、鹿屋、新田原と熊毛島へ応援要請! Aチームも呼び戻して!」


まあ、応援が来た頃にはモグモグタイムは終わっているかもしれないが。


「え?? クラーケンですか? 東シナ海まで入って来たの!? 魚雷で何とかなるのですか? ネコブカにダメージが入るのでは?」

小瀬田が驚愕する。

「モテない奴が相手探しに来たのかもな。野間がタイプだったみたいだ。それよりも設定急げ!」

「クリオ、シドッチは周囲の対潜警戒!! イカのお友達が他にいないか警戒しろ!!」

「「ハイ、了解です!」」


小瀬田が猛スピードで設定を書き込み、2分後。

「教官、ゴッババ全部設定完了しました!!」

「では発艦! ネコブカの西800mの海面まで移動するぞ、小瀬田!」


クラーケンは目で光と魔力を認識するタイプのモンスターだ。

だからこそ、潜水艦での対クラーケン戦ではイカ墨によるデコイ作戦が有効となる。


「岩川!! ネコブカに『耐衝撃態勢をとれ!!』と連絡して!!」

おそらく野間達は、運悪くイカ墨発射口を吸盤で塞がれたのだろう。まあ、また油断していたのだろう。間抜けめ。


ネコブカの西800m、海面スレスレのポイントに到着した。


千尋は2本のゴッババを投下。コースは千尋が精密に制御している。

1本目はネコブカの近く、垂直に海底の砂地へ突き刺さる3秒の遅延信管だ。砂地に深く潜り込んでから爆発する。

2本目は、1本目の爆発地点よりもさらにネコブカに近い所で、大量の砂を巻き込んで爆発させる。

クラーケンからすれば、得体の知れない巨大な生物が深い所から自分に迫ってきているように見えるはずだ。


続いて3、4、5、6発目を連続で投下し、徐々にクラーケンへ爆発地点を迫らせる。

「ギャァァァアアッ!」

クラーケンはパニックになり、たまらず潜水艦から腕を離した。


その瞬間、解放された発射管の蓋からネコブカのイカ墨が噴射される。

目の周りにイカ墨をかけられたクラーケンは完全にパニックに陥り、その場で暴れ狂った。

バタバタと暴れるクラーケンの巨大な腕が海底や潜水艦にぶつかり、海面には激しい波が立つ。『ネコブカ』の船体も重い衝撃を受けているはずだ。


「小瀬田! 7番、8番のゴッババ信管はタイミングそのまま、魔法属性は『氷結』にして!」

「教官、ここ(空中)で変更ですか!?」

「野間とクラーケンの頭を冷やすわよ」

「了解です!!」


「岩川、通信!『何もするな、ボケ!! 氷結撃つぞ』とモールス打って!」

「了解!」

「7番、8番、氷結準備完了しました!」小瀬田が叫ぶ。


ゴッババ7番、8番を投下。

千尋は精密な魚雷制御でネコブカに当てないように気をつけながら、クラーケンの周囲の海底に着弾させる。遅延信管が破裂すると、海中に巨大な氷の塊が発生した。


周囲の水温が一気に低下する。

クラーケンは本来、太平洋のはるか南方に生息する生き物なのだ。急激に体が冷えたことで動きが鈍り、途端に大人しくなった。


「岩川!! 通信!『全速前進、離脱せよ、ボケ』と! ちゃんと『ボケ』まで入れてね!!」


実は岩川、先ほどの通信では気を遣って「アホ」「ボケ」という教官の暴言を省いてモールスを打っていたのだが――。

『全速前進、離脱せよ、ボケ、アホ、ボケ』

今回は律儀に、さっき省いた分までしっかりと乗せてモールスを送信したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ