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【異世界編】赴任先は異世界の魔法大学。初日の授業は『チェスト!』の否定から始まります。6

ここは枕崎沖、約10キロの海上。


現在時刻は15時30分。

吉野はAチームに突撃して軽く脅しをかけた後、上空から馴染みの貨物船を見つけていた。


北海郵船所属、総トン数499トン、バラ積み貨物船『第八太陽丸』。

吉野は無線で呼びかける。

『こちらは帝立魔法大学校所属、吉野千尋です。ガイミ船長、ごめん、トイレ貸して。着艦許可を頼む』

『ガハハハッ! 吉野の嬢ちゃんか、いつでもいいよ。ついでにおやつ食ってけ』


吉野は船倉の間の、耐荷重がありそうな部分に車輪を出して器用に着艦した。そして、乗ってきた箒(ほき-27)にブルーシートを掛けて隠す。

現地の箒乗りたちは便意や尿意を解消する魔法を使うらしいが、地球生まれの吉野にはどうしてもそれを使う抵抗があった。

もっとも、着艦した理由はそれだけでは無いのだが。


着艦後、トイレを借りた吉野は船橋ブリッジへ駆け上がり、船長に挨拶にきた。

ガイミ船長はいわゆるドワーフと思われる人種だ。吉野と同じぐらいの身長だが、体格がガッチリしていて、なんというか縦横比の作画が違う。

彼が所属する北海郵船は北海道を起点とする商船会社だが、所有する船のうち6隻はここ帝都サツマを拠点としている。


「ごめんね、ガイミ船長。いま生徒たちの対潜哨戒実習中でさー」

「いいってことよ。俺の船なら無許可で降りていいのに。ブルーシートなんか掛けて、なんか訳ありなんだろ?」

そう言いながら、ガイミ船長は船長席を空けて吉野に座るように促すが、吉野はジェスチャーで断った。


「次のチームの対空哨戒が天然だけど優秀でさ。北海貴族のユジュヌィ・オストロフ家のクリオちゃん、ご存じでしょ? あ、双眼鏡借りるね」

吉野は双眼鏡を手に取ると、窓から上空の監視を始める。

「あと20分後ぐらいかな、Bチームとすれ違うの。同時に彼らは潜水艦を見つけるだろうから……潜水艦を見つけて喜んでいる所を、このブリッジから魔力波で狙撃!」

吉野は手でピストルのジェスチャーをしながら、キャッキャとはしゃいでいる。


――こいつ、大人げないな。

ガイミ船長をはじめ、船橋にいたメンバー全員がそう思った。


沿岸部にはソノブイを撒いたし、クリオは陸側から吉野が来ると思うはずだ。

箒は飛行中、常に魔力波を周囲に撒き散らす。勘のいいクリオなら、コンタクトする前に見つけるだろう。だからこそ、陸とは逆の「海を航行する一般の商船」の中に吉野が潜んでいるとは夢にも思わないはずだ。

我ながら完璧な作戦だと自画自賛し、吉野は双眼鏡を覗きながらニヤリとしている。



一方、海底に潜む帝国海軍の『フカ』級攻撃型潜水艦・7番艦『ネコブカ』。

艦長の野間2佐は、激しく後悔していた。


相手が魔法大学校の生徒だと思い、思いっきり舐めていたのだ。

潜望鏡深度に浮上して、のんびり外を覗いていたところ……突然、潜望鏡を思いっきり金属のような物で殴られたのだ。

しかもモールス信号の要領で、カンカンカン!と、


『ノマ、マジメニヤレ』


名指しで吉野に怒られたのである。

潜水艦の動向は機密であり、どの船が訓練の相手をしているかは外部には伝わっていないはずだ。水中では魔力波が大きく減衰するため、存在を認知できても、個人や艦を特定するのは不可能なはずなのだが。

潜水艦司令部のある山川港に帰投すれば、本部で何らかの恐ろしい説教が待っているかもしれない。


タイムスケジュール的に、すでにAチームはやり過ごしたはずだ。

今度はBチームをやり過ごすため、野間は少し位置を工夫し、砂地の海底に潜水艦を着底させた。

その時だった。


魔力測定員が静かに、しかし切羽詰まった声で報告する。

「艦長……! 後方約100m、大型クラーケンです。おそらく、本艦が狙われています」


「イカ墨、発射!」

艦長が叫ぶ。イカ墨とは、魔力を見るタイプのモンスターに対して使用する、魔力を含ませた液状のデコイである。


この海域にクラーケンが存在するはずがない、という油断があった。

発射口は瞬く間にクラーケンの巨大な吸盤によって塞がれ、潜水艦『ネコブカ』は暗い海底で完全に拘束されてしまった。

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