表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の貴族に嫁入りした海自パイロット、魔法大学で潜水艦狩りを教えています なお旦那は初代皇帝西郷隆盛の玄孫です。  作者: なたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
86/89

【明治編】還ってきた西郷6

春日丸は、鹿児島港へ接岸した。


桟橋には、鹿児島鎮台が用意した2頭立ての馬車がすでに待機していた。


「この馬車で、玉里までお送り申す」


東郷がそう告げる。


西郷は、馬車を見て目を細めた。


「薩摩では、しゃれた馬車が走りだしたでごわすな」


「は、は、はい。どうぞ」


御者が、ぎこちない声で馬車の扉を開ける。


だが、その手は震えていた。


無理もない。


西郷の後ろに立つミケを見たからである。


黒い耳。

手ぬぐいで隠しきれていない尻尾。

人の姿をしているが、どう見ても普通の人間ではない。


「はは。噛まんから、大丈夫でごわす」


「いや、そこではなかと思いもす」


東郷は小さく咳払いした。


「早く乗ってください。見物人が増えます」


西郷とミケ、そして東郷が馬車に乗り込んだ。


「島津玉里邸まで頼む」


東郷が御者に行先を告げる。


馬車は、ゆっくりと鹿児島の町へ走り出した。


西郷は、窓を少しだけ開けた。

隙間から、町の様子を覗く。


石造りの建物、広く整えられた道に行きかう馬車。


港へ向かう荷車、遠くに見える煙突。


二十年前の薩摩とは、まるで違っていた。


だが、風の匂いは同じだった。


海と、灰と、桜島の匂い。


西郷は、ぽつりと言った。


「おいが、いなくなってから、薩摩はますます栄えちょる」


その声には、喜びだけではないものが混じっていた。


東郷は、少し間を置いて答えた。


「鹿児島は、海軍の町として栄えました」


西郷は、東郷を見る。


「海軍の町」


「はい。亡き斉彬公の御志と、吉野の若の働きのおかげでごわす」


東郷は、窓の外へ目を向けた。


「造船所、製鉄所、斉彬公が生み出し、吉野の若が育てた仙巌園事業、

砲台、学校、港、海軍、薩摩は、海を捨てんかった」



「そうか」


そして、もう一度、窓の外を見た。


「斉彬公は、やはり先を見ちょったのだな」


東郷は答えなかった。


馬車は、玉里邸へ向かって走っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ