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異世界の貴族に嫁入りした海自パイロット、魔法大学で潜水艦狩りを教えています なお旦那は初代皇帝西郷隆盛の玄孫です。  作者: なたろう


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【明治編】還ってきた西郷4

若が舵を取るタグボートは、仙巌園の船着き場を離れた。


目指すは、仙巌園からも目視できる、すぐ目の前の黒い海坊主である。


全長十三メートルの小さなタグボートが、黒い巨体へゆっくりと近づいていく。


船尾には、白地に丸十字の旗がたなびいていた。


海坊主の上には、数人の男たちが立っている。


その中に、大柄な男がいた。


島津の若は、大きく手を振った。


海坊主の上の大男も、手を振り返す。


若は、にやりと笑った。


「うむ。あれは、確かに西郷じゃ」


タグボートが、海坊主へさらに近づく。


「おーい、西郷! 重明じゃ! 吉野の若じゃ!」


海坊主の上で、大男が笑った。


「若! よかにせになりましたな。二十年ぶりでごわす」


タグボートが、黒い巨体の左舷へ横付けされた。


若は、挨拶もそこそこに、黒い艦体を見上げた。


金属の曲面。


見たこともない継ぎ目。


見たこともない材質。


見たこともない船。


若の目が、子供のように輝いた。


「その海坊主の中、見せてくれ」


あまりにも真っ直ぐな願望であった。


西郷は、錦江湾に響くような声で笑った。


「ははは! さすが若じゃ」


西郷は、黒い艦の上から手を差し出した。


「よかです。入ってたもんせ」


「その前に、土産がある」


若は、後ろを振り返った。


「甘い物が好きだったろう。カステラじゃ」


技師たちが、木箱を抱えて前へ出る。


「船員の皆の分まであるぞ。たもってくやんせ」


若が引き連れてきた島津重工の技師が、カステラの入った箱を差し出した。


海坊主の船員と思われる者が、それを受け取る。


その瞬間、技師の動きが止まった。


「へ?」


真っ黒な耳。


しなやかに揺れる尻尾。


人の姿をしているのに、まるで黒猫のような獣の特徴を持つ者が、そこに立っていた。


技師は、箱から手を離した姿勢のまま固まった。


「真っ黒じゃ……耳がある……しっぽがある……」


西郷は、楽しそうに笑った。


「はは。ひったまがったろう」


黒猫のような船員は、礼儀正しく木箱を受け取って一礼した。


「おいも、はじめて獣人を見たときは、ひったまがった」


西郷は、黒猫の船員を紹介した。


「おいの部下の、ミケどんじゃ」


若は、心の中で突っ込んだ。


黒猫なのに、ミケなのか。


だが、口には出さなかった。


若は成長したのだ。


「おいの国には、色んな人がおるど」


西郷は、黒い艦の入口を指した。


「船の中を見ていきやんせ」


「若様、こちらへどうぞ」


ミケに案内される。


ハッチへ案内される、垂直に配置されたはしご


恐る恐る、艦内へ降りる、若


全部が金属製、沢山の配管にバルブ、エンジニアリングの塊だ


「なあ、西郷、この船はどうやって動いている?」


若がストレートに聞く


「魔法と、電気じゃど」


「電気と、まほう…。」


電気は分かる。


電信、電池、発電機、電動機


研究している、知っているつもりだ。


だが、魔法とは何だ。

「いや、西郷。まほうとは、なんじゃ」


「なんじゃ、と言われてもなあ」


西郷は腕を組んだ。


「腹の底から、こう……チェストで、ドカンと出るもんでごわす」


「分からん」


「おいも、最初は分からんかった」


「今も分かっておらんだろう」


「少しは分かる」


「では説明せよ」


西郷は、機関室の方を指さした。


「魔法を、鉄の瓶に閉じ込める」


「鉄の瓶?」


「そうじゃ。そこへ水を入れる。すると、ものすごい蒸気が出る」


「ほう蒸気」


「その蒸気を、ぴすとん、ちゅうものに通す」


「ピストン」


「すると棒が動く」


「往復運動か」


「おう。たぶん、それじゃ」


「それを回転に変えるのか」


「そうそう。さすが若じゃ。そいで、後ろのプロペラが回る」


蒸気機関だ、ただ燃料が違う、石炭ではない


おそらく水中で空気が無くても進む


「西郷」


「はい」


「この船、分解してよいか」


「だめでごわす」


「少しだけ」


「だめでごわす」


「寸法を測るだけ」


「それなら、まあ」


若は、懐から手帳を取り出した。


「技師ども、紙と墨を持て。今すぐだ」


西郷は笑った。


「やはり若は、若じゃなあ」

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