【現代編】自称ミネアポリスから来た男4
ここは鹿児島中央駅。
日本で初めて鉄道が営業運転を開始した区間の一部にして、九州新幹線と東九州新幹線の南の起点駅である。
この世界では、仙巌園ー鹿児島駅ー天文館-鹿児島中央ー郡元(郡元仙巌園事業工廠)の実験鉄道が、のちに日本初の営業鉄道として整備されたことになっている。
中央駅のバスターミナル広場には、維新の志士たちの像が並んでいる。
源吾がどうしても見たいと言うので、千尋は事前に予習してきた内容を、仕方なく説明することにした。
「中央の二人が、島津斉彬公と島津久光公」
千尋は、像を指さしながら続けた。
「東側が、斉彬公の息子で、島津重工業の創業者。吉野島津家の若様、島津重明。それから、その奥様のお鶴さん」
「千尋に似ているな」
源吾が、ぽつりと言った。
千尋は、説明を止めた。
「……は?」
「いや、そのお鶴殿だ。千尋に、よう似ておいでだ」
「……なんで、私のご先祖様だって知ってるの」
源吾は、少しだけ目を細めた。
それから、何でもないことのように笑った。
「え?ご先祖でごわすか?顔が似ておいでだから、そうかと思っただけでごわす」
「……」
千尋は、沈黙した。
そして、心の中で断定を一段階進めた。
――こいつ、ミネアポリスから来てない。
それどころか。
――たぶん、CIAから来た。
「こっちが東北、東京の方向を向いているのが国父大久保利通、
南側にいるのが、五代友厚と、第九代・濵﨑太平次。」
「濵﨑太平次……」
源吾が、やけにしみじみとその名を繰り返した。
「知ってるの?」
「いえ。商いの神様のようなお方と聞いておいもす」
「……ミネアポリスで?」
「はい。ミネアポリスで」
「便利ね、ミネアポリス」
「で西にいるのが、京都の僧侶で朝廷工作の実行役月照」
「……これが、初代皇帝が救われた月照殿か」
「え?」
千尋は、眉をひそめた。
「初代皇帝? なにそれ、CIAの隠語?」
「いや、なんでもありもはん」
源吾は、あからさまに視線をそらした。
千尋は、その横顔を見た。
――こいつ、嘘が下手すぎる。
「ところで」
源吾は、咳払いをして話題を変えた。
「ここに、西郷吉之助殿はいないのでごわすか?」
「西郷吉之助は、高見橋の近く。甲突川沿いの公園のところ」
千尋は、源吾を見上げた。
「歩いてすぐそこよ。行こう」




