【現代編】自称ミネアポリスから来た男3
千尋と源吾は、鹿児島市へ向かうことになった。
鹿屋から鹿児島市へ出るルートはいくつもある。
高速道路で霧島市を回る道。
桜島まで出て、桜島フェリーで渡る道。
垂水フェリーで鴨池へ向かう道。
そしてもう一つ。
鹿屋航空基地から軍民共用ターミナルへ移動し、そこからケーブルカーで海沿いの高速船乗り場へ降りるルートである。
鹿屋航空基地は、現在では軍民共用空港としても機能していた。
鹿児島市側の鴨池空港と対になる、いわば双子の空港である。
桜島の降灰で鴨池空港が使えなくなった際には、鹿屋が代替空港となる。
そのため、鹿屋と鹿児島市を結ぶ交通路は、妙に発達していた。
「……いつ来ても、鹿屋の交通網はおかしいですね」
ケーブルカーの窓から錦江湾を見下ろしながら、千尋はつぶやいた。
「よかことでごわす。軍港と空港は、道が命でごわすからな」
「ミネアポリスの技官が、なんで鹿屋の交通政策に詳しいんですか」
「興味がありもす」
「便利な言葉ですね、興味」
ケーブルカーは、ゆっくりと海へ向かって降りていく。
その先には、高速船の桟橋が見えていた。
鹿屋から高速船で鴨池空港へ。
鴨池空港から地下鉄へ接続し、鹿児島中央駅へ。
今回、二人はそのルートを選んだ。
源吾が、どうしても見たいと言ったからである。
「桜島も見たい。錦江湾も見たい。鴨池空港も見たい。地下鉄も乗りたい」
「観光客か」
「はい」
「認めるんだ……」
そうして二人は、鹿児島中央駅へ着いた。
史実なら失われていたはずの鴨池空港は、この世界では都市空港として生き残り、地下鉄と高速船に接続していた。
それは、西郷がいない日本で、大久保たちが作り上げた近代国家の、ほんの一部だった。




