【現代編】自称ミネアポリスから来た男2
そのうざい男とは、その後、何度か一緒にP-1で飛ぶことになった。
名目上、彼はアメリカの士官学校から派遣された技術技官である。
対潜哨戒機の開発に関わっており、P-8 ポセイドンのAIまわりや、無人機との連携システムを担当しているらしい。
なんでも、AIが音響員や戦術航空士の役割まで補助する装置を開発しているらしい。
その話を聞いたとき、千尋には彼が、まるで魔法使いのように感じられた。
最初こそ胡散臭さが勝っていたが、話してみると、技術者としての知識は本物だった。
AIによる目標識別。
無人機とのデータリンク。
音響情報の処理。
そして、哨戒機と潜水艦の読み合い。
そのあたりの話になると、千尋とは妙に気が合った。
さらに驚いたことに、彼は技官でありながら、潜水艦乗りとしての経験もあるという。
ロサンゼルス級。
シーウルフ級。
オハイオ級。
そのあたりの名前を、妙に自然に口にした。
潜水艦を狩る側の千尋としては、狩られる側の感覚をぜひ聞き出したかった。
どのタイミングで探知されたと判断するのか。
P-1のどの動きが、潜水艦側から見て一番気持ち悪いのか。
聞きたいことはいくらでもあった。
だが、源吾はそのたびに、困ったように笑うだけだった。
「それは、言えもはん」
「そこをなんとか」
「言えもはん」
「元サブマリナーでしょう。後学のために」
「後学のためでも、言えもはん」
むかつく。
ただし、むかつくほど口が堅いということは、少なくとも本物ではあるのだろう。
千尋は、そう判断した。
やがて千尋は、妙な空気に気づき始めた。
P-1のクルーたち。
整備員たち。
飛行隊の面々。
そして指揮官――いや、基地全体。
どうも、千尋と源吾をくっつけようとしている。
あやしい。
絶対にあやしい。
何かしらの陰謀が、基地のあちこちで蠢いている気配がした。
普通なら距離を置く。
軍人としては、それが正しい。
だが、千尋は乗った。
理由は簡単だ。
源吾の話は面白かった。
そして、まだ聞き出せていないことが山ほどあった。
出会ってから二か月後。
千尋は、源吾に鹿児島市を案内する約束をした。
罠かもしれない。
陰謀かもしれない。
だが、罠なら踏んでから考えればいい。
千尋はそういう女である。




