【維新RTA編】超高速大政奉還13 決戦 西郷丸VS勝海舟
随伴船を含めると十二隻の艦隊の中央で。
「ドゴーン」
横須賀沖で西郷丸が砲弾を発射する、
目標は金沢八景島沖の海域、
その様子を見ていた、数万の人々静まり、着弾地点の
金沢八景島沖の方向に目線を移す
…。
…。
発射から約30秒後、
浦賀沖から水柱が上がる、
その5秒後水中で大爆発が発生する。
見学者は、一様に拍手をおこない、大歓声を上げる。
「たまやーーー!」
「かぎやーーー!」
「さつまやーーー!」
まるで昼間の花火大会であった。
勝海舟と、複数の幕臣が西郷丸の船上から射撃を見学していた、
「イギリスの新聞通りじゃん、珍しいもの見られた、が…
島津の殿様よ、これからどうするんだい?
西郷の名をつけた大砲で江戸城を粉々にして、今度はあんたが征夷大将軍にでもなる気かい?」
「いや、ワシは、そんな面倒なことはせん、おはんらのの悪巧み見届けてから
全部、忠義(息子)に譲って、隠居する。いや、これよりも大きな花火を打ち上げててみるのもいいかもなあ。」
久光が勝海舟に返す。
「その悪巧みには俺も入っているんですかい?
まあ、面白いが、
それにしても、大きな花火とは、武器商人にでもなるのかね?」
空気を読まない島津の若が目を輝かせて
「お、叔父上どの、一緒にやりますか、西郷砲を世界に売って、海外で花火大会を」
「重明(吉野の若島津重明のこと)、お前は黙っておれ、そうゆうことじゃねえ、お鶴よ猿ぐつわはないか?薩摩に帰るまで、口を塞いでおけ。」
久光が怒る。
「大久保、勝に渡せ」
久光が、大久保らに指示を行う。
大久保は、黒い漆塗りの箱を両手で勝海舟へ差し出した。
「どうぞ、勝先生」
「いや、俺はお前の先生じゃねえよ」
と言いながら箱を開けて、中にある、手紙を拝見する。
勝海舟が驚いたのは、その文章ではなかった。
署名である。
島津久光。
山内容堂。
松平春嶽。
伊達宗城。
有力諸侯たちの名が並ぶ、その中央。
そこに、ひときわ異質な御名があった。
――統仁。
孝明天皇の親署である。
それは、単なる建白書ではない。
朝廷の意思を帯びた、勅命に等しい文書であった。
勝海舟は、しばらく声を失った。
薩摩の脅しなら、まだ笑えた。
諸侯の連名なら、まだ政治工作で済んだ。
だが、そこに天子様の御名がある。
これはもう、ただの悪巧みではない。
*
勝が読んだ内容を、後世の言葉で要約すれば、こうである。
「政権を朝廷へ返還し、新たな政体と法は朝廷のもとで定めること(大政奉還)」
「上院・下院の二院制を敷き、議員を置き、国事は公議によって決すること(議会開設)」
「有能な公家、諸藩、旧幕臣、無名の人材を登用し、名ばかりで実のない者を退けること(官制改革)」
「外国との交際については広く公議を尽くし、新たな国際規約を定めること(条約改正)」
「古来の律令および諸法の良きところを取りまとめ、永く国の礎となる新法を定めること(憲法制定)」
「海軍を大いに拡張し、国防と通商の礎とすること(海軍拡張)」
「朝廷直属の兵を置き、都と朝廷を守らせること(近衛兵制)」
「金銀貨幣および為替の制度を改め、外国と対等に取引できる法を定めること(貨幣・金融改革)」
「技術開発と産業振興を行い、海外より富を集めること(殖産興業)」
「海外の進んだ学問と技術を学び、全国民が学ぶ国とすること(国民教育)」
と、のちに十か条の要求と呼ばれるものである。
*
同時に、西郷丸の物見やぐらの両側に、錦の御旗が展開された。
西郷丸は、横須賀の岸と見物船から十分に見える距離にいる。
見物船の間を、小舟が走っていた。
その上から、男たちが紙をばらまいている。
岸でも男たちが紙をばらまいている。
横浜の外国商人へ。
江戸から来た町人へ。
浦賀奉行所の役人へ。
見物船の船頭へ。
紙には、勝がいま読んだものと同じ内容が刷られていた。
そして、ようやく理解した。
砲撃は本命ではない。
本命は、見物人だった。
この場に集まった数万の目と耳。
横浜の外国商人。
江戸の町人。
幕府の役人。
その全員を証人にするための、花火だったのだ。
「ハハハ……やられたわ
…こいつは大政奉還の要求じゃねえな」
勝は文を閉じた。
「国の設計図じゃねえか」
勝は苦笑した。
「花火大会は囮か」
そして、龍馬を見た。
「わかった。俺も海の手下になるか」




