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異世界の貴族に嫁入りした海自パイロット、魔法大学で潜水艦狩りを教えています なお旦那は初代皇帝西郷隆盛の玄孫です。  作者: なたろう


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【維新RTA編】超高速大政奉還11 お台場に一ついかがでしょうか?

「撃つ必要はねえよ」


勝海舟は懐から折り畳まれた紙を取り出し、ひらりと掲げた。


「三日前、翻訳方から届いた。イギリスとフランスの新聞だ。そこに載っていたぜ。

その“西郷砲”とやらが、二里先まで弾を飛ばしたってな」


「では、幕府の台場にも一台いかがですか?」


島津の若は、空気を読む気など最初からなかった。


「ジブラルタル、シンガポール、マカオに合計三台売れました。

四台目を、浦賀か品川沖の台場に。今なら据付指導もお付けします」


一瞬、場が凍った。


勝だけが、腹を抱えて笑った。


「ははははっ! 世界中が知っているのに、俺が知ったのは三日前か。

こりゃあ、幕府はもう詰んだな」


勝は新聞の翻訳を畳み直すと、目だけを鋭くして若を見た。


「よくまあ、こんな化け物を内緒でこさえたもんだ。

ところでよ、“西郷”ってのは何だい。薩摩の地名か? それとも化け物の名前か?」


「まあ、たいそうな化け物よ。

我らがここまで来た原動力であり、皆の友でもある。

なあ、大久保」


島津久光が勝海舟に答えたが、この言葉は大久保に向けられている。


大久保は、しばらく答えなかった。


その名を、ここで聞くとは思っていなかった。

その名を、笑って口にできる日が来るとも思っていなかった。

まして久光の口から、西郷の名と、皆の友という言葉を聞くとは思っていなかった。


「ああ……久光様」


大久保は深く息を吐き、目元を押さえた。


「その通りでございます」


涙が、にじんでいた。


勝は、それ以上は笑わなかった。


空気を読まない若が、横からぺらぺらと説明を始める。


西郷という男のこと。


海に消えたこと。


戻らぬ友の名を、西郷丸に、西郷砲に冠したこと。


ただ、翻訳紙を懐に戻し、静かに言った。


「……なるほどな。海に消えた、男の名か

薩摩は、大砲に死人の名をつけたんじゃねえ。

帰ってこねえ友の名を、二里先まで飛ばしてやがるのか」


大久保は答えなかった。


久光も答えなかった。


その沈黙を破ったのは、やはり島津の若だった。


「ですので、名に恥じぬ性能です。一台いかがですか?」


「お前は今の空気を読め!」


勝が思わず怒鳴った。



「……けんど、撃つ必要はありますき」


龍馬が、ぼそりと言った。


勝の目が細くなる。


「おい龍馬。お前まで何を言い出す」


「先生は知っちょる。二里飛ぶいうことも、薩摩が何を見ちゅうかも。

けんど、将軍様は知らん。老中も知らん。江戸の町も、まだ知らん」


龍馬は、江戸の方角を見た。


「知らんままでは、人は動きませんき。

船を沈めるためやない。幕府の目を覚まさせるために撃つがです」


「……誰に向けて撃つ気だ」


「海へ」


龍馬は笑った。


「けんど、音は江戸まで届くでしょう」


勝はしばらく黙り、それから鼻で笑った。


「ほう。薩摩の海は、ずいぶん物騒なことを教えてくれるんだな」


「だから、先生、横須賀の奉行所に行って、明日の昼までに、横須賀沖と八景島沖から船を消してください。」


勝は、険しい表情で考え込む


勝は短く息を吐いた。


「……わかった。横須賀と八景島沖の沖は空けてやる

明日の昼楽しみにしておくぜ!」


そういって、勝海舟は太平治丸から去っていった。

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