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異世界の貴族に嫁入りした海自パイロット、魔法大学で潜水艦狩りを教えています なお旦那は初代皇帝西郷隆盛の玄孫です。  作者: なたろう


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【維新RTA編】島津驚異のテクノロジー4

カンカンカン、と小気味よい金属音が、潮の香りと混ざり合って仙巌園の第二ドライドックに響き渡る。

砂浜を掘り割って築かれた堅牢な石造りのドック。その中央には、帆を持たない黒鉄の怪物「西郷丸」が、まるで出番を待つ鯨のように鎮座していた。


「おい、もっとボイラーの圧力を上げろ! 砲身が重すぎてクレーンのロープが鳴いてるぞ! 石炭をケチるな、チェストじゃ!!」


若の怒声に、クレーン小屋の裏で、煤まみれになってボイラーに石炭をくべていた小僧が「ハイッ!」と悲鳴のような声を上げる。

小さな小屋から突き出た巨大な木造トラスの腕が、ギチギチと音を立て、無数の滑車とロープをきしませながら、先日試射に成功したばかりの「二里西郷砲」の砲身を吊り上げていく。


その巨大な蒸気クレーンのレバーを、新婚の初々しさなど微塵も感じさせない手つきでコントロールしているのが、若の最愛の妻、お鶴であった。


「もう少し、ゆっくり」

若がお鶴に、大声と手振りで指示を出す。


砲身が、西郷丸の砲座へ、ゆっくりと降ろされる。

「よし、作業かかれ!!」

エンジニア集団が、砲塔の周りに集まり、砲塔をマウントしていく。


ついに薩摩の怪物西郷丸が完成した。


「お鶴、見てみい。これがわしらの長男じゃ」


お鶴は、油で汚れた手を腰に当て、黒い船体を見上げた。


「ずいぶん手のかかる子でございますね」


「じゃっどん、強か子じゃ」


「ええ。音は悪くありませぬ」




完成イベントが開かれた。

ここは仙巌園造船所岸壁

幕府には極秘の建造なので、ひっそりとしたイベントである。


「この船の名を――」


大久保は、一度だけ言葉を詰まらせた。


「西郷丸とする」


その声は震えていた。



「わしは反対したんだがな、大久保がどうしてもと言って聞かんかった、おはんらの長男だろ、すまんかった」

島津久光が吉野の若に耳打ちする。

「いや、とても良い名前であります、叔父上どの、

私も小さい頃西郷に沢山世話になった、遊び相手として尽くしてくれた。

いまの私らがあるのは西郷のおかげであります。」


「そうか…」


久光は、煙を上げ始めた西郷丸を見つめた。


大久保も。

小松も。

吉野の若も。

そして自分自身も。薩摩藩も。


もはや、引き返せぬところまで来た。


関ヶ原以来、島津の胸の奥で燻り続けたもの。


その怨念を、いまこそ徳川へ返す時が来たのだと、久光は静かに心に刻んだ。


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