【維新RTA編】島津驚異のテクノロジー2
ここは仙巌園、後世でいうところの、重化学工業コンビナート。
吉野の若は、買い取った仙巌園・磯庭園一帯を、吉野島津家の事業拠点へ改めた。
10万両は島津家本家が仙巌園事業に出資したという、扱いになり、
仙巌園事業は、本家島津家と、吉野島津家と濵﨑太平次の濵﨑家の三者の共同事業とうい扱いになり
海外には「シマヅ・ヘビー・インダストリーズ」とうい名前で商売をしだした。
「ほう、蒸気船が陸を走っちょる」
見学に来ていた、久光は吉野の若から新規開発案件の説明を受けていた。
「これが、蒸気トラクターです、牛5匹分の農地を耕す力があります」
黒い煙と、蒸気の音をだし、
トラクターの上ではガバナーがくるくる回っている。
見たこともないような、巨大な牛鋤を引っ張り地面を耕している。
「牛で5匹でいいではないか…
ほう、よく見ると操っておるのは、おなごではないか」
久光がぽつりと言う
「そうです、おなごでも牛5頭の力を操れるのです。」
「どこのおなごじゃ、よかおこじょじゃ」
「彼女は鍛冶屋の娘、お鶴でございます。誰よりも蒸気トラクターをうまく動かせる腕を持っております。」
*
千代が日本で初めてのトラクター乗りになった経緯を話しておこう。
仙巌園の裏手。
試作蒸気牽引車が、黒煙を吐いて暴れていた。
蒸気機関を積んだ鉄の牛。
のちに蒸気トラクターと呼ばれることになる、吉野島津家の試作品である。
「止めろ! 止めろ!」
「曲がらん!」
「畑に突っ込むぞ!」
男たちが右往左往する中、一人の娘が飛び乗った。
鍛冶屋の娘である。
娘は蒸気弁を絞り、片足でブレーキを踏み、もう片方の手で操舵輪を叩くように回した。
鉄の牛が唸る。
黒煙が上がる。
次の瞬間、暴れていた蒸気牽引車は、まるで躾けられた馬のようにぴたりと止まった。
吉野の若は、ぽかんと口を開けていた。
「……今、何をした」
娘は油で汚れた頬を拭った。
「音を聞けば分かります。怒っちょる音と、苦しんじょる音は違いますから」
若は、その時はじめて理解した。
自分は機械を図面で見ている。
だが、この娘は機械を生き物として見ている。
それまで吉野の若は、彼女を知っていた。
優秀な鍛冶屋の娘として。
鉄砲鍛冶の真似事をしている、少し変わった娘として。
優秀な鍛冶屋の娘ではない。
優秀な機械乗りである。
認識が変わった
掘れた。いや惚れた。
この瞬間を、五代は見ていた。
大久保も見ていた。
龍馬も見ていた。
川路利良も見ていた。
――西郷も見ていた。
異世界側の占い水晶に、なぜか吉野の若の恋路だけ映った
「一蔵さあを映せ」
「王よ、因果の強い場面しか映りません」と魔術師は言う
「若の嫁取りがか!?」
「はい。後の世に、かなり大きな影響が出るようで……」
「知らん! 一蔵さあを映せ!」
大久保に竜馬に、川路、久光、薩摩の首脳と影が工作に動いた。
結果、操縦の天才の血が吉野の血に加わることになる。
のちに、3男1女をもうけ、長男は島津重工業のオーナー家系として日本の軍事産業を支える家
三男は、後に日本人初の飛行家として歴史に名を刻む。
遠い未来、空と海を同時に飛ぶ女へと受け継がれる。
そしてその血は、空を飛ぶ血となった。




