【維新RTA編】超高速大政奉還1
亀山社中
史実では日本初の株式会社であるが、
この世界では日本初のフロント企業である、もちろん薩摩藩の。
文久四年ごろ、薩摩藩は上海から石炭を輸入しだした。
薩摩半島の南部、南薩で大量に捕れる砂鉄と石炭の運ばれる先は
仙巌園
仙巌園の一角の石造りの大きな建物の中に据付られた巨大な巨大な鉄の洋梨。
南薩の砂鉄は、まず反射炉と高炉で銑鉄へと変えられる。
その銑鉄を、さらにこの巨大な鉄の洋梨へ流し込む。
蒸気機関で稼働する、巨大なふいごが勢い良く巨大な鉄のような洋梨に空気を送り込んでいる。
ふいごが風を送った瞬間、炉口から火柱が吹き上がる。
「吉野の若よ、これは何じゃ。まるで地獄の釜じゃが」
眩しさに目を細めながら大久保が呟く。
吉野の若は不敵に笑った。
「イギリスのベッセマーとかいう男の発明です。これまでは職人が何日もかけて作っていた極上の『鋼』が、これなら一刻(約2時間)もかからず、それも山ほど手に入ります。
これで大砲を作り、我が黒船に積む。幕府が浦賀で腰を抜かしたアメリカの黒船なぞ、おもちゃに見えるほどの本物を、この仙巌園から送り出してやりもす」
1856年にイギリスのヘンリー・ベッセマーが発明したベッセマー転炉は発明から10年たたぬうちに、
極東の地で鋼鉄を生産しだした。
*
同じ建物では、蒸気機関の力で旋盤が唸りを上げていた。
鉄の棒が高速で回転し、その内側を刃物が少しずつ削っていく。銃身である。
その鉄の筒には、薩摩の職人たちが、丁寧に王冠のマークを刻んでいた。
その下には、TOWERの文字。さらに数年前の年号――1861。
英国製を示す、由緒正しき刻印。
もちろん、偽物である。偽・英国王室公認マークであった。
*
別の建物では木工職人が、銃床を次々と加工している。
加工が完了した銃床は仙巌園の前にある磯浜の海に漬けられる。
新品では不味いのだ。海水に2週間漬けられたのち、油に漬けられ、
やすりがけされて使用感を出された後に、組立工場へ運び込まれる。
*
王冠のマークと戦場を戦い抜かれた使用感
それらは長州の志士にとって勇気の印である。
「英国製最新銃」
そう信じて握るだけで、人は強くなった気になれる。
そして、その勇気が本物か偽物かなど、戦場では大した問題ではない。
問題は、その銃も、弾も、火薬も、薩摩の手のひらの上にあるということだった。




