【異世界編】赴任先は異世界の魔法大学。初日の授業は『チェスト!』の否定から始まります。4
「管制および指令へ。こちら対潜哨戒実習、吉野教官ふくめ9名。そのまま高度1000mまで垂直上昇し、低空利用域を抜けたあと西へ離脱、東シナ海へ向かいます。離陸許可を求めます」
『1400、離陸許可を出します。良い実習を!』
「みんな! 離陸準備。離陸許可が出たわよ。上昇速度は1m/s以下を厳守で、1000mまで上昇」
普通なら滑走路を滑走して離陸する方が多いが、今の時間帯は滑走路が混んでいるからね。今回は遠慮しておくよ。
航空法により、高度1000m以下は民間航空空域であり、民間の箒が飛ぶ空域だ。
そのため、陸上と制限された区域では軍用の箒には厳しい制限がかけられている。ここは空港なのだから民間の箒を制限してもよいと思うのだが、「航空機よりも先に箒が飛んでいた」という歴史的背景から、地上高1000m以下の滑走路延長線上(進入表面)以外は、どうやら箒の方が優先らしい。
「全員、離陸!! 垂直上昇」
全員がスロットルを上げる。
ジェットエンジンの始動のような高音。9機それぞれの魔力が干渉し合い、周囲の空間が輝く。
1000mに到達するまで1000秒あるから、その間にこの星のことを説明しておこう。
この星は赤道の全長が5万5千キロと、地球よりもサイズが大きい。表面の91%が海であり、地球以上に「水の惑星」である。
不思議なことに、西郷帝国の首都であるサツマ付近は、地球の鹿児島とほぼ同じ地形をしている。他の地方も、中央構造線より南側は日本と全く同じだが、中央構造線より北側はすべて海に沈んでいる。
つまり西郷帝国の国土は、阿蘇から南の『九州』、
四国の中央構造線より南の『四国島』、
紀伊半島の和歌山と鳥羽を結ぶラインより南の『紀伊島』、
静岡、山梨、長野の一部、埼玉、横浜、東京、茨城、千葉にあたる『駿河島』、
そして、現実の北海道の3倍の広さがある『北海道』。
これら5つの主要島と、日本列島の南側に沿って連なる小さな島々が、4,200キロにわたって形成する列島国家なのである。
西のはるか1,800キロ先には別の大陸国家が存在している。
その大陸国家は「シナ」という名ではないが、かつて西郷帝国がそう命名したため、『東シナ海』という海域の名前だけが残っている。
一方、地球でいうところの日本の太平洋側は、平均深度60,000mを超える絶望的な深海だ。そこには潜水艦をも容易く屠る巨大な海のモンスターが生息している。
そのモンスターたちを東シナ海へ侵入させないための警戒、そして仮想敵国である大陸国家との小競り合い。
大陸との間に広がる、1,800キロにわたる水深200m~400mの浅い海。面積にして約700万平方キロメートル。それこそが『東シナ海』であり、彼女たちの将来の主戦場となるのだ。




