【異世界編】赴任先は異世界の魔法大学。初日の授業は『チェスト!』の否定から始まります。3
学食で昼食をとって、午後の授業がはじまる。
場所はサツマ帝立魔法大学から地下鉄で20分ほどの距離にある、鴨池国際空港の外れ。もっとも、学生と職員は魔法の箒で飛行可能なため、移動に5分もかからない。
ここは魔法大学と帝国海軍が共用しているハンガー(格納庫)である。
そこに並べられているのは、初見の人には箒とは認識できない、潜水艦を狩る金属製のマシーン。
それが、松元魔法機工社製・対潜哨戒機『ほき-27』である。
基本は帝国製だが、地球の技術が至る所に取り入れられている。ハイブリッドの先進的戦闘マシーンだ。
スペックを見てみよう。
・乾燥重量:2,835kg
・最大離陸重量:12,935kg(機体強度による最大値。実際は操縦者の魔法制御能力による)
・乗員:1名が推奨される
・最大マナ搭載量:4,535kg(ドロップタンクは除く)
【武装】
・ブローニングM2重機関銃
・97式魚雷(帝国名:ゴッババ短魚雷) 最大6基
・ヤマドイ空対空ミサイル(SR-AAM) 最大6発
【センサー】
・ソノブイランチャー
・MADセンサー
・ディッピングソーナー
【情報処理システム】
・マナ・サブエージェントシステム
この世界において、魔法を使える人材は30人に1人の割合だ。しかし、マナ(圧縮し固形化された魔力)を動力として空を飛ぶには、操縦者に膨大な魔力制御能力が要求される。
そのため、魔法の箒(ほき-27)を操縦できる資質を持つ者は、帝国民1万人に1人しか現れない非常に貴重な人材である。
しかしなぜか、西郷の血筋には魔法制御能力の高い者が現れる。西郷が漂着した時には、すでに薩摩から漂着した住民が定着しており、西郷は先着の薩摩の者たちに魔法を習ったとされる。薩摩の血に何かしらの原因があるのかもしれない。
「それではブリーフィングを始めます」
私が声をかけると、受け持つ対潜科の生徒8人が集まった。
「今日のコースは鴨池空港を離陸後、錫山を駆け上がり、金峰山を目指し、吹上浜から東シナ海に出ます。久多島を見つけたら、そこを基準に南下。野間岬をかすめ、黒島を回り、東へ向かって竹島を周回。その後、錦江湾を北上して鴨池空港に帰投します。
今回は東シナ海のどこかに帝国の潜水艦が航行しています。それをみんなの力を合わせて発見してください」
「組み分けをします。
【Aチーム】
リーダー:島間
対空哨戒:インギー
対潜哨戒:ウィリアム、若狭
【Bチーム】
リーダー:小瀬田
対空哨戒:クリオ
対潜哨戒:シドッチ、岩川
対空哨戒については、私がランダムで襲ってきます。全員の額に魔力波を撃たれたら、そのチームは潜水艦を見つけようとも失格です」
生徒たちは固まった。みな、千尋の実力を痛いほど知っているからだ。
「いやいや、無理だし、教官」
声を上げた彼女は、ユジュヌィ・オストロフ・ヤク・クリオ。
家名が長いので私も含め皆が下の名前の『クリオ』で呼んでいる。本人もそちらを希望している。
「クリオ!! 教官殿に向かって何という言葉遣いを!! 教官、申し訳ございませんでした」
リーダーの小瀬田が注意した後、私に謝罪する。
彼女は小瀬田愛子。帝国海軍の潜水艦で魔術火力支援業務中に魔法の素質を見出され、魔法大学校の2年から編入してきた。上下関係に厳しい。ちなみに彼女を発見してスカウトしたのは、私の旦那である。
ここは軍隊ではない魔法大学校だから、私はうるさく言うつもりはないけどね。
「ではハンデとして、フル爆装15トンでどう? ゴッババ8発にヤマドイ8発、マナドロップタンク・フルロード」
生徒たちは驚愕の表情で固まる。スペック上では飛べない重量だからだ。
しかし、整備員のおっちゃんたちはニヤニヤしながら張り切りだした。
「野郎ども、久々の吉野スペシャルだ!!」
「私のは、と・く・べ・つ、なのよ(ニヤリ)」
クリオは直観した。「これが愛なのか」と。
技術官僚の旦那を知っている
小瀬田は直感した。「これが(旦那の公私混同の)愛なのか」と。
この判断が、多くの人を救うことになるのだが。
ゴッババはネズミゴチ(魚)の鹿児島弁
ヤマドイはヤマドリの鹿児島弁
ほき は箒の鹿児島訛りです。




