【異世界編】タンデム水中空母実習1
朝の光が差し込む帝都の自宅。
生徒のクリオや小瀬田が四年生になって、少し経ったころ。
キッチンでは、旦那が手際よくパンに焼き立ての玉子焼きを載せていた。香ばしいバターの香りと、トーストの小気味いい音が部屋に響く。今日のごはんは、目玉焼きとシャキシャキしたレタスのサンドイッチ、それに自家製のヨーグルトのようだ。
いつもの、愛おしい家族の朝の風景。しかし今日ばかりは、千尋の胸中にはわずかな緊張感が漂っていた。
「あやちゃん、今日からお泊りでお仕事なの。パパとボーのいうこと聞いてね」
「はーいわかった
おとまりはどのくらいなの?」
「みっかぐらいかな、おおきなおふねでおとまりよ」
「いいなあ、わたしもとまりたい、おおきなおふねに」
「すいへいさんになったら、おしごとでおとまりできるかも、
でもママは、あやちゃんにすいへいさんになってほしくないよ」
「わたし、バスガイドさんとかかんこうガイドさんになりたいの、すいへいさんにはならないよ」
「そっか、ガイドさんか。素敵ね」
旦那が作ってくれたサンドイッチとヨーグルトを食べ終えると
千尋はあやちゃんを抱きしめ、お別れをする。
今回のお泊りは少し危険な任務だからだ。
「じゃあね、あやちゃん、ママ頑張ってくるから」
今回のお泊り――すなわち、最高学年となったクリオたちを率いての「水中空母実習」は、普段なら怖いもの知らずで、あらゆる理不尽をロジックで叩き潰してきた千尋をして、「危険な任務」と言わしめる種類のものだった。
鉄の塊を水中に沈め、そこから魔法の箒を空気圧で撃ち出す。
物理法則と魔導工学の限界に挑むようなその狂気の演習が、いよいよ始まろうとしていた。




