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異世界の貴族に嫁入りした海自パイロット、魔法大学で潜水艦狩りを教えています なお旦那は初代皇帝西郷隆盛の玄孫です。  作者: なたろう


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【維新RTA編】 八月九日の政変

史実より一週間早く、歴史は動いた。史実では八月十八日の政変と呼ばれる薩摩のクーデター

大久保の工作により長州三条実美ら急進公卿の焦りを生みや朝廷の動きを速めたのだった。

後日歴史愛好家の間で維新RTAと呼ばれる、大久保の工作の成果を見てみよう。


孝明天皇は、すでに長州を恐れていた。


長州は攘夷を叫ぶ。

三条実美ら急進派公卿もまた、天皇親征を唱え、帝を戦の旗印として担ぎ出そうとしていた。


だが、帝にとってそれは尊王ではなかった。

禁裏を戦場に引きずり出す行いであった。


そこへ、薩摩勝利の噂が届いた。


英国艦隊、錦江湾にて敗北。

旗艦ユーライアラス、沈没。

幕府が英国へ渡した十万ポンド、海中に没す。


事実ではない。

少なくとも、すべてが事実ではなかった。


だが、宮中に届いた噂は、すでに月照と大久保によって形を変えられていた。


薩摩は、異国を退けた。

薩摩は、朝廷を守る力を持つ。

長州は叫ぶだけだが、薩摩は実際に戦って勝った。


市居では長州が天皇を拉致しようとしているという噂が立つ。


月照は近衛家の縁をたどり、さらに中川宮朝彦親王へ働きかけた。

中川宮は、長州と急進公卿の動きを危険と見ていた。


「長州は、攘夷の名を借りて禁裏を戦場にしようとしております」


その言葉は、孝明天皇の恐怖と重なった。


帝は決した。


長州を、禁裏より遠ざける。

三条実美ら急進公卿を、朝議から外す。

そして、禁裏の守りを薩摩と会津に命じる。


それは表の勅ではなかった。

だが、朝廷を守るには十分な、帝の意思であった。


文久三年八月九日、未明。


禁裏の六門は、薩摩藩、会津藩、淀藩の兵によって固められた。


薩摩藩は、門前に大砲を据え威嚇した。


「あれが英国船を沈めた砲か」


集まった長州藩士の間に、ざわめきが走った。


もちろん、門前の砲そのものが英国艦を沈めたわけではない。

だが噂とは、真実よりも早く人を動かす。


長州藩士たちは、門の向こうへ進めなかった。


そこへ勅令が下る。


長州藩士の禁裏出入りを禁ず。

三条実美ら急進公卿の朝議出仕を停止する。

禁裏を騒がす者は、尊王の名を用いることを許さぬ。


長州は、朝廷から切り離された。


長州は、攘夷の主導権を奪い返すつもりでいた。

だが大久保は、主導権どころか、長州から朝廷そのものを奪ったのである。

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