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【異世界編】クロネコメイド ボーの受難と二重生活。

ここは帝都、とある政府機関の廊下。時刻は午前中。


クロネコメイドのボーは、千尋に関する定期報告書を提出したばかりだった。

彼女は昨晩、地球の文化――もとい『千尋のボーえもん発言』の謎を完全に解明するため、ドラ〇もんの単行本1巻から44.5巻までを徹夜で一気読みし、さらに前日にはアニメ版を4時間ぶっ通しで視聴するという過酷な任務をこなしていた。

明日は『大長編』を一気見するよう上官から命じられている。


今日はメイドの任務はOFF(休日)のはずだった。

しかし、表札に『書庫(関係者以外立ち入り禁止)』と書かれた地球情報調査室の扉を開けた瞬間。

そこにはなぜか、たまたま千尋が居たのだった。


「あれ? ボー、ボーじゃない! カッコいい制服着て何やってるの?」


ボーは内心の激しい動揺を隠し、極めて落ち着いた動作で敬礼しながら言葉を返す。

「これは、菊池西郷家伯爵夫人、千尋様。私はココノエ・サト三尉。情報管理官をしております。ボーとは、あなたの屋敷のメイドではないですか? 似ていますが、人違いかと」


ボーは、千尋が公の場所で『西郷』の名前を出されるのを嫌がっているのを知っていた。だからこそ、これ以上追及させないための牽制として、あえて大声でフルネームを呼んだのだ。

「あら、そうなの。人違いだったね、ごめんなさいね」

千尋はあっさりと引き下がった。



……そして翌日の夕食後。

あわれ、またもボーはソファーにロックされ、全身をモフられていた。

元エリート自衛官である千尋の圧倒的なフィジカルと体術の前では、ボーの抵抗など一切無意味だ。特に顎の下と頭は念入りに攻略されている。

娘のあやちゃんはもうお眠の時間だ、旦那が寝かしつけている。


「奥様ぁ、やめてくださいまし~……っ」

口では拒否しながらも、体は正直である。すでに陥落済みだ。


「昨日ね、政府機関で、かわいいモフモフな獣人の軍人さんを見かけたのよ。あの子もモフモフしたいなあ。ねえ、今度皇帝陛下に頼んでみようかな」

「奥様、やめたほうが……っ。クロネコ種の族長から顰蹙を買います」


千尋の手が、ピタリと止まる。


「……ボー。私、まだ『クロネコ種』だなんて一言も言ってないのに、よくわかったわね?」

「ッ!?」

ボーの尻尾がピンと逆立つ。

「い、いや奥様、クロネコ種が大好きじゃないですか!」

「決めた。今度、皇帝陛下に依頼して、クロネコ種の族長に許可を取ってお家に呼びましょう。ボーも含めて、3人でモフモフパーティーを開催するの」

「ロイヤルハラスメントはやめてくださいよぉ! 国内の政治問題化してしまいます、奥様ッ!」


ボーの業務完了時間まで、あと2時間。

脱出は不可能。もはや耐える(満喫する)しかない。

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