【異世界編】うっかたはバケモノか?(8)
現在15時15分
「よし、高度800フィートまでズーム・クライム。G-2突入と同時に水平移行、中名、ミサイルに座標と進入角を流し込め!」
千尋がサイドスティックを引く。
両翼の戦闘機用低バイパスターボファンがA/Bの咆哮を上げ、お尻に鎮座するCF6級の大口径ファンが凄まじい大気を飲み込んで機体を一気に押し上げた。100トン級の巨体が戦闘機のような鋭い角度で海面を蹴り、高度800フィートへと駆け上がる。
「高度800フィート到達! 速度400ノット維持! G-2グリッド中央へ進入!」
喜入がスロットルをディテント位置でホールドし、息を弾ませてコールした。
「目標『つるぎ』、D-2を東進中。距離はおよそ88海里!」
火器管制コンソールの中名が、キーボードを猛烈な速度で叩く。
「ASM-2、1番から6番まで全弾リンク確立! 誘導プログラムをパッチします。1番・2番は迂回して背後から。3番・4番は北と南の両方からから高度10フィート。5番・6番は正面から、30フィート。」
「時間設定は?」
千尋の問いに、中名が不敵に笑う。
「予定弾着時刻、ヒトゴーサンマル(15時30分)ジャスト! 各弾の飛翔ルート長と巡航速度を逆算、時間差で撃ち出せば、複数方位から同時に『つるぎ』へ低空から刺さります。」
「上出来、発射タイミングは任せる」
現在15時23分
「1番・2番発射します。」
両翼のラックで、ASM-2の固体ロケットブースターが点火する。
一瞬遅れて、二発のミサイルが翼下から海上へ放たれた。
1番・2番は『つるぎ』を迂回し、西の方から背後に突き刺さるコースだ。
「次3番・4番発射します。」
時間差で両翼のASMラックから次の2発が発射される。
3番・4番は二手にわから『つるぎ』南北両方から側面に刺さるコースだ。
「次5番・6番行きます。」
最後に放った5番・6番は『つるぎ』の正面から突入する。
30フィートと他の4発と比べて侵入高度が高い、
六発は飛翔距離も進入方向も異なる。
だが、中名が与えた時刻はただ一つ。
十五時三十分〇〇秒。
その瞬間だけ、六本すべての軌道が『つるぎ』へ収束する。
「全弾射出完了! ASM、全6発正常にシーカー作動、指定ウェイポイントへ向けて超低空へダイブしていきます!」
「彼、きっちり落とすよ、音できっちり動作記録して、報告頼むよ」
「はい。落としますよ、あの人なら」
中名が笑いながら返す。
主翼下から解き放たれた6本の槍は、海面すれすれのシースキミング高度まで一気に降下すると、北、南、中央へと扇状に散開し、時速900キロ超の亜音速でトカラの海を切り裂き始める。
「『つるぎ』のイージスシステムがうちのジャブをどう処理するか、全チャンネルで録音。ソノブイに届く水中音――急変針のスクリューキャビテーション、VLSのハッチ開放とESSM発射音、全部の波形を引っこ抜いて。」
音響員が両手でヘッドホンを頭に押し付け、ウォーターフォール表示の微細なノイズを睨みつける。
「了解! E-2、D-2前面に展開したソノブイ群、全チャンネル録音開始!」
「千尋さん、ASM各弾の巡航速度マッハ0.85維持! あと6分で目標捕捉ゾーンに入ります!」
中名が秒針を睨みながら叫ぶ。
「さて、TOTの恐ろしさよく覚えてもらうよ」
「いいえ、思い出してもらいます。」




