【異世界編】うっかたはバケモノか?(5)
「では開始3分前です」
システム員が読み上げる
「さて3分前、スタートしたら、川尻は現在位置を確認、読み上げて
各員のディスプレイの海図に自機の表示、そのあとカメラと目視で、周囲の民間船舶と航空機を確認
下が海なら、パッシブソノブイを投下」
川尻2尉はTACCO(戦術航空士)であり、同時に書類上の機長でもある。指示を出しているのは、事実上の機長兼パイロットである千尋だ。
海自の規定上、哨戒機の運用責任者はTACCOだ。だからフライトログにも作戦報告書にも、並ぶ判は川尻のもの。
市ヶ谷もすべて承知の上で、千尋に全権を委ねながら、責任の受け皿として若手幹部を書類上の機長に据えている。
この機体には見習いが二人いる。喜入は飛び方を、川尻は謝り方を学んでいる。
千尋機の機長席は、見習いが実戦を学ぶための特別席なのだ。
「あと、白沢と石垣と塩屋。何度も言ってるけど、電波封止。」
「「「了解です。」」」
航法・通信士の白沢3尉 レーダー・電子戦員の石垣1曹 光学・電子戦員 塩屋2曹に念押しをする。
「中名、最後はウェルダンでいい感じに頼むね」
「坂之上、御領、入野あと谷山さん、平川さん、山川さん、三時間『つるぎ』の音の追跡お願いね。」
彼ら6名は音響員だ。任務では通常3名しかコンソールに座らないが、
交代要員として三名を追加している。
長時間の対潜哨戒任務において、クルーに交代要員は必須だ。
谷山さん平川さん山川さんは千尋のチームのクルーではない、
他のチームのクルーから借りてきた音響員である。
「枕崎さん 頴娃さん、交代とタイムキーパーをお願いします」
枕崎は他のチームのパイロットで、千尋の先輩にあたるベテランだ。今回のシミュレーター戦には、千尋が自ら指名して交代要員として呼んだ。
頴娃は枕崎とコンビを組んでいる副操縦士だが、今回のタイムスケジュール管理を行う。
*
シミュレーター戦の2週間前
クルー交代直後の反省会
P-1内ワードルーム(士官室)
島津エアクラフトP-1は、セミワイドボディの超大型対潜哨戒機だ。ミッション室の後ろには、10人が同時に着席できる会議机がある。千尋チームはここで哨戒後の反省会を行う
早々に反省会を終えた千尋チームは、2週間後のシミュレーション戦での作戦について打ち合わせをしだした。
「2番の対馬海峡の日本海海戦、6番の硫黄島爆撃阻止か、7番与那国島、14番トカラ列島突破ですよ、千尋さん」
中名が自分の予想を発言する。
「ん~、6割トカラ列島 3割対馬海峡かねえ、マップがどこであろうとやる事は変わらないし」
「ASM(空対艦ミサイル)とAAM(空対空ミサイル)の同時飽和攻撃しかー」
言いかけた中名を、千尋が軽く遮る。
「いや、彼なら全部冷静に落とすでしょ。相手はイージス艦だよ? 空母をソ連の飽和ミサイルから守るために生まれた船。最大ペイロードいっぱいのASM24本に短AAM4本、中AAM4本撃ったって足りない。ESSMで全部落とされるし、突破できてもファランクスとSeaRAM、それに主砲が待ってる。一発当てたくらいじゃ勝利判定は厳しいよ。――それよりもさ、さっき任務中に考えたんだけど」
千尋は作戦をクルーに説明する。
「でもそれじゃあ最後当てるのは難しいし、撃沈判定はサイコロですよ…
代わりにとどめは、蒸し焼きにするのはどうですか?」
中名は千尋の作戦にアレンジを行った別の攻撃方法を提案する。
「なるほどね、それ行く?成功率は5割かな?」
「鬼特訓すれば成功率は上げられますよ」
こうして次の任務までの反省会でシミュレーション戦の作戦が決まった。
千尋チームは5時間の仮眠をとり、ふたたび任務を交代して、機は鹿屋基地へ戻るのだった。




