33-20
「きた!アンカーや!」
まふゆが叫ぶのと同時に、ミカゲがテイクオーバーゾーンに突入した。その驚異的な追い上げに、会場全体が興奮に包まれている。
「レオンハルト!」
ミカゲが短く叫ぶ。その声に応じて、レオンハルトが力強く走り出した。
ミカゲからレオンハルトへ。
黒い疾風から赤い獅子へ。
紅組の最後の望みを乗せたバトンが、完璧に渡った。
「うおおおおおっ!!」
バトンを受け取ったレオンハルトは、雄叫びを上げてスタートダッシュを切る。
王族としての威厳と、クラスのリーダーとしての責任感が、彼の全身から炎のように立ち上っていた。
「レオンハルト!やっちゃいなさい!」
「兄さん!追いつけるよ!」
シャノンとセリウスの声援が響き渡る。
しかし、トップを走る青組のアンカーとの差は、まだ50メートル近くある。
しかも、アンカーはトラックを2周。体力と精神力の勝負だ。
レオンハルトは、持ち前のパワフルな走りでぐんぐんと差を縮めていく。
1周目のホームストレートを通過する頃には、その差は半分以下の20メートルにまで詰まっていた。
「すごい……レオンハルト、速い……」
アリスが息をのむ。役目を終えたミカゲは、フィールドの内側から静かにレオンハルトの走りを見つめている。その表情は相変わらず読めないが、瞳の奥には確かな信頼の色が宿っていた。
そして、運命のファイナルラップ。
鐘の音がカンカンカン!と鳴り響く。
青組のアンカーも必死だ。最後の力を振り絞り、逃げ切りを図る。
しかし、レオンハルトの気迫はそれを上回っていた。仲間たちの応援を一身に受け、彼の足はさらに加速する。
「頑張って、レオンハルト様……っ!!」
リリアの悲鳴にも似た声援が、レオンハルトの背中を押す。
最終コーナー。ついにレオンハルトが青組のアンカーの背中を捉えた!
二人が並び、激しく競り合う。
「抜けぇぇぇっ!!」
「耐えろぉぉぉっ!!」
紅組の生徒と、青組の生徒の叫び。
レオンハルトは最後の力を振り絞り、内側から一気に前に出る!
そして、そのまま数メートルの差をつけ、歓声が渦巻くゴールテープへと飛び込んだ!
『ゴール!優勝は、大逆転で紅組ーっ!!』
アナウンスが響き渡ると同時に、わあああああ!という割れんばかりの歓声がグラウンドを揺るがした。
「やった……!やったー!!」
「レオンハルト様、すごーい!!」
まふゆとリリアは、涙を浮かべながら抱き合って喜んだ。
トラックでは、セリウスやシャノン、他のリレーメンバーが、倒れ込むレオンハルトの元へと駆け寄っていく。
劇的な逆転勝利。
紅組の総合優勝を決定づける、最高のフィナーレだった。




