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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第三十三話 はじめての体育祭
394/424

33-19




シャノンが作ったリードを後続の走者たちも懸命に守り、紅組はトップを快走していた。


第三走者、第四走者へと順調にバトンは渡り、誰もが紅組の勝利を確信しかけた、その時だった。


第五走者がテイクオーバーゾーンに差し掛かり、第六走者にバトンを渡そうとした瞬間──。




「「あっ!」」




二人の手がわずかに合わず、紅組のバトンが無情にも地面に転がってしまった。


「「あーーーーっ!!」」


まふゆとリリアの悲鳴のような声が上がる。応援席全体が「ああ……」という絶望的な溜息に包まれた。


「なっ……!?」

「まずい!」


レオンハルトとセリウスも険しい表情で立ち尽くす。


選手は慌ててバトンを拾い、再び走り出すが、そのタイムロスはあまりにも大きい。

トップを走っていた紅組は、その間に青組、そして黄組と緑組にも次々と抜かれ、一気に最下位まで順位を落としてしまった。


トラックでは、必死の追い上げが続く。

第六、第七、第八走者と、皆がミスを取り返そうと必死の形相で走るが、一度ついた差は簡単には埋まらない。


青組は依然としてトップを独走しており、その差は開く一方だった。




そして、いよいよバトンは第九走者へと渡る。


「ミカゲっ……!」


まふゆは祈るような気持ちで、その名前を呼んだ。


第八走者からバトンを受け取ったミカゲは、大きく開いた前方のチームとの差を一瞥する。その表情には、焦りも諦めも一切浮かんでいない。

ただ、獲物を見据える狩人のように、その瞳は冷たく、静かだった。


そして次の瞬間、ミカゲは走り出した。

これまでのどの選手とも違う、音もなく、風を切るような走法。それはどの競技で見せたものよりも、さらに速く、鋭かった。

まるで地面の上を滑るかのように、彼は驚異的なスピードで前方の走者との距離を詰めていく。


「な……なんだ、あの走り方……!?」

「速すぎる……一人だけ次元が違うぞ!」


観客席が再びどよめく。

緑組、黄組と、ミカゲは他チームの選手をいとも簡単に抜き去っていく。その姿は、影がターフを駆け抜けているかのようだった。


「ミカゲっち……すごい……!」

「……いけ……!」


リリアとアリスの声援が飛ぶ。

絶望的だった状況が、ミカゲ一人の走りによって、再び希望の光を帯び始めていた。


全員が固唾を飲んで、その黒い疾風の行方を見守る。




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