33-17
カップルレースでの劇的な優勝が、紅組の士気を最高潮にまで高めた。
レオンハルトとリリアの周りには祝福の輪ができ、二人の顔には照れくささと喜びが入り混じった笑みが浮かんでいる。
しかし、祭りの終わりは刻一刻と近づいていた。様々な競技が終了し、グラウンドの電光掲示板には現在の総合得点が表示されている。
一位、青組。
二位、紅組。
その差は決して小さくない。だが、絶望的な点差でもなかった。
残すは最終種目、リレー。
このリレーは配点が非常に大きく、紅組が一位を取ることが出来れば大逆転も夢ではない。
全ての期待が、これからトラックを走る選ばれし選手たちに託された。
紅組のテントでは、リレーメンバーであるセリウス、シャノン、ミカゲ、そしてレオンハルトが集まり、最後の調整に入っていた。その傍らで、まふゆたちが緊張した面持ちで見守っている。
そこへ、A組の臨時担任であるガンツが、静かな足取りで近づいてきた。
彼はリレーメンバーの前に立つと、カチャリと眼鏡の位置を直しながら、その冷静な瞳で一人一人を見据えた。
「貴様ら、よく聞け」
その場にいた全員の視線が、ガンツに集中する。
「現状、我ら紅組は青組に後れを取っている。このままでは、あの筋肉達磨の自慢げな顔を拝みながら、この体育祭を終えることになる。……私個人としては、それだけは断じて看過できん」
その言葉には、普段の冷静な彼からは想像もつかないほどの、静かだが燃え盛るような闘志が込められていた。
「このリレーは、ただの最終種目ではない。我らA組、いや、紅組全体の誇りを賭けた最終決戦だ。貴様らの足には、今日一日、共に戦ってきた仲間たちの想いが乗っていることを忘れるな。セリウス、貴様の正確なスタートが流れを作る。シャノン、貴様の俊足で差を広げろ。ミカゲ、貴様の異次元の走りで勝負を決定づけろ。そして……レオンハルト」
ガンツは、アンカーであるレオンハルトを真っ直ぐに見据えた。
「貴様には、全てを背負ってゴールテープを切るという、最も重い役目を託す。……無様な結果になればどうなるか、分かっているな?」
それは檄というにはあまりにも静かで、しかし、だからこそ選手たちの心に深く突き刺さる言葉だった。
プレッシャーをかけるようでいて、その実、彼らの力を最大限に信頼しているからこその激励。
「はっ、当然です、先生!俺たちに任せてください!」
レオンハルトが、全員を代表するように力強く答える。その瞳には、ガンツの想いを受け止めた確かな決意の炎が揺らめいていた。
「みんな、頑張ってや……!絶対、勝てるから!」
まふゆも祈るように拳を握りしめ、選手たちに声をかける。
その声援に、セリウスが穏やかに頷き、シャノンが「当たり前でしょ」と鼻を鳴らし、ミカゲがこくりと小さく頷いた。
紅組の逆転優勝を賭けた、最後の戦いの火蓋が、今まさに切られようとしていた。




