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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第三十三話 はじめての体育祭
384/424

33-9




次に始まるのは、15歳以下の生徒のみが参加する「大玉転がし」だ。

この競技に、紅組からはアリスが出場する。


「アリス、頑張ってね。真っ直ぐ転がすんよ」

「……うん」


まふゆからの優しいアドバイスに、アリスはこくりと小さく頷いた。

彼女の隣には、同じくB組のリリアの友人であり、紅組の仲間でもあるドワーフの少女、リッタが並んでいる。


「ふむ。アリスといったか。よいか、この競技は力だけでは勝てん。二人で息を合わせることが肝要じゃ」


リッタは12歳とは思えない落ち着き払った口調で、アリスに作戦を説く。アリスはそんなリッタを不思議そうに見つめながらも、再びこくりと頷いた。




「よーい、スタート!」


号砲と共に、各組の小さな選手たちが一斉に自分たちの背丈よりも大きな玉を押し始めた。

アリスとリッタも、紅組の巨大な玉に二人で手をかける。


「せーの、で押すぞ!……せーのっ!」


リッタの掛け声に合わせて、二人は力を込めて玉を転がし始める。ドワーフ族であるリッタの力強い押しと、アリスの懸命なサポートで、紅組の玉は順調に前へと進んでいく。


しかし、コースの中間地点に差し掛かった時、アクシデントが起こった。


「おっと、いかん!」


少し焦ったリッタの押しが強すぎたのか、玉がバランスを崩し、大きく右へと逸れてしまったのだ。玉はコースを外れ、隣の青組の進路を塞ぐような形になってしまう。


「あ……」

「くっ、戻さんか!」


アリスが呆然と立ち尽くす横で、リッタが慌てて玉を元のコースに戻そうと奮闘する。しかし、巨大な玉は一度逸れるとなかなか言うことを聞かない。その間に、他の組はどんどん先へと進んでいく。


「アリス!リッタ!頑張ってー!」

「二人で力を合わせるんだよー!」


テントから、まふゆとリリアの声援が飛ぶ。

その声に、アリスはハッと我に返った。彼女は逸れてしまった玉を見つめ、そして隣で必死に玉を押すリッタの姿を見た。




(……息を、合わせる)


リッタが最初に言っていた言葉が、頭の中で反響する。

アリスは黙ってリッタの隣に並ぶと、彼女が玉を押すリズムに合わせるように、そっと自分の小さな手を添えた。


「……ん?」


アリスの意図に気づいたリッタが、ちらりと彼女を見る。アリスは何も言わない。ただ、真っ直ぐな薄青の瞳でリッタを見つめ返し、こくりと頷いた。


その無言のコミュニケーションに、リッタはにやりと口の端を上げる。


「……ふっ、そうこなくっちゃな!もう一度じゃ、アリス!ワシに合わせろ!……せーのっ!」


リッタの力強い掛け声と同時に、二人の力が一つになる。今度は完璧に息が合った。

巨大な玉は二人の意思に応えるように、ゆっくりと、しかし確実に正しい方向へと向きを変え、再びコースの上を転がり始めた。


「よし、いいぞ!ここから巻き返すんじゃ!」


一度失ったペースを取り戻すのは容易ではない。結果は3位と、逆転勝利とはいかなかった。

しかし、ゴールした二人の表情は晴れやかだった。




「ふぅ……すまんかったな、アリス。ワシが焦ったせいで」

「……ううん。……楽しかった」


リッタの謝罪に、アリスは小さく首を振り、ぽつりと感想を漏らした。

その言葉と、ほんの少しだけ綻んだ口元を見て、リッタは満足げに笑う。


「アリス、リッタさん、お疲れ様。二人とも、すごくかっこよかったよ」


テントに戻ってきた二人を、まふゆが優しい笑顔で出迎える。

年の離れた二人の少女が力を合わせる姿は、紅組の仲間たちの心を温かくしたのだった。




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