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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第三十三話 はじめての体育祭
383/424

33-8




まふゆとミカゲの、まるで物語の一場面を切り取ったかのようなゴールに、グラウンド全体が幸福な興奮に包まれる。


その熱気がまだ残る中、借り物競争は次の組へと進んでいった。




そして、ついにリリアの番がやってくる。


「よーし!まふゆんに続かなきゃね!あーしも1位、取っちゃうんだから!」


銀髪のポニーテールを揺らし、リリアは元気いっぱいにスタートラインに立った。

まふゆの活躍に触発され、彼女の赤い瞳はいつも以上にやる気に満ちて燃えている。


ピストルが鳴り響き、リリアは弾かれたように駆け出した。ダークエルフとしては戦闘が苦手な彼女だが、持ち前の明るさと負けん気の強さが、その足を前へ前へと押し進める。




お題のカードが置かれたテーブルにたどり着くと、迷わず一枚をひっくり返した。


「えーっと、なになに……?」


カードに書かれた文字を覗き込み、リリアは一瞬、きょとんとした表情を浮かべる。

そこに書かれていたのは──『尊敬する人』。


「尊敬する人……」


リリアはぽつりと呟くと、自然と紅組のテントへと視線を向けた。

そこには、仲間たちの戦いぶりを頼もしげに見守る、レオンハルトの姿があった。


いつだって真っ直ぐで、理想を口にするだけでなく、それを実現するために行動する強さ。

王子という立場に驕ることなく、誰に対しても面倒見がいい兄貴分。


そして何より、ダークエルフである自分を、種族の偏見なく一人の人間として見てくれる、その優しさ。


(……あーしにとって、尊敬する人なんて、レオンハルト様しかいないよ)


確かに胸の奥に存在する、熱くて純粋な感情。

迷いはなかった。




「レオンハルト様ー!」


リリアはグラウンドに響き渡る声で、彼の名を叫んだ。

その声に気づいたレオンハルトは、何事かと驚いた顔でリリアを見つめる。


「お題、『尊敬する人』なんだー!どうか、あーしと一緒に走ってくださーい!」


カードを高々と掲げ、リリアは深々と頭を下げた。その真剣な眼差しに、レオンハルトは一瞬虚を突かれたように目を見開いたが、すぐに状況を理解し、にやりと笑みを浮かべた。


「ははっ、しょうがないな!尊敬されちまったんじゃ、断るわけにはいかねぇだろ!」


彼はそう言うと、テントから軽やかに飛び出し、リリアの元へと駆け寄った。


「行くぞ、リリア!まふゆたちに負けねぇくらい、ぶっちぎりでゴールしてやろうぜ!」

「うんっ!」


レオンハルトはリリアの手を引くのではなく、その肩を力強く抱き寄せると、共にゴール目指して走り出した。

隣を走る彼の、頼もしい横顔。力強い足音。その全てが、リリアの胸を高鳴らせる。


(カップルレースは、誘えなかったけど……。こうして一緒に走れるだけでも、すごく嬉しい……)


頬が熱くなるのを感じながら、リリアは必死に足を動かした。




結果は惜しくも2位だったが、ゴールしたリリアの表情は、達成感と喜びに満ちてキラキラと輝いていた。


「ありがとー!レオンハルト様!」

「おう。よく頑張ったな、リリア」


レオンハルトが大きな手でわしゃわしゃと頭を撫でると、リリアははにかみながらも、満面の笑みを浮かべた。


その様子を、まふゆは少し離れた場所から、温かい気持ちで見守っていた。


「リリア、嬉しそうやね。よかった……」


自分のことのようにそう呟くと、隣に立っていたミカゲが、ふと口を開いた。


「……あいつは、強いな」


その言葉は、レオンハルトを指しているのか、それともリリアを指しているのか。まふゆには分からなかったが、ミカゲが誰かを「強い」と評するのは珍しいことだった。


体育祭は、競技を通して、普段は見えない仲間たちの新たな一面を教えてくれる。

まふゆはそう感じながら、次に控える競技へと意識を向けた。




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