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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第三十三話 はじめての体育祭
381/424

33-6




女子50m走でシャノンが一矢報いたものの、全体的には青組優勢で進む中、プログラムは男子必須競技の100m走へと移った。


女子の雪辱を果たすべく、紅組の男子生徒たちの気合は十分だ。




まずスタートラインに立ったのは、セリウスだった。

彼は同じ組になった他クラスの生徒たちと並び、静かに闘志を燃やす。理知的な普段の姿からは想像もつかない鋭い集中力で、ピストルの音を待った。


号砲一閃。

しなやかな体躯を躍動させ、セリウスは滑るように飛び出した。


兄であるレオンハルトや、獣人、影人のような爆発的な身体能力はない。

しかし、彼の走りには魔術師らしい緻密な計算と、無駄のない効率的な体の使い方が見て取れた。


ゴール間際、隣のレーンを走る青組の生徒に僅かに及ばなかったものの、見事2位でゴールし、紅組に貴重な得点をもたらす。


「惜しかったな、セリウス!」

「悔しいけど……全力を尽くした結果だよ」


テントに戻ってきたセリウスをレオンハルトが労う。




そして、数組後、ついにそのレオンハルトの番がやってきた。

一国の王子である彼がスタートラインに立つだけで、グラウンドの空気が変わる。その存在感は圧倒的だった。


「レオンハルト様、頑張ってー!」


リリアが喉が張り裂けんばかりの声でエールを送る。その声援を背に受け、レオンハルトはにやりと口の端を上げた。


スタートの合図と共に、彼は力強く地面を蹴る。王家の血統らしい恵まれた体格から生み出されるパワフルな走りは、他の追随を許さない。


ぐんぐんと後続を引き離し、圧倒的な力を見せつけて1位でゴールテープを切った。


「きゃーっ!レオンハルト様が1位だー!」

「すごい……!さすがやね……!」


リリアは飛び跳ねて喜び、まふゆも感嘆の声を上げる。




そして、最後に登場したのはミカゲだった。

彼は他の選手たちがウォーミングアップをする中、ただ静かに佇んでいる。


しかし、スタートラインに立った瞬間、彼の纏う空気が一変した。黒曜石の瞳がゴールだけを捉え、その全身が研ぎ澄まされた刃のように静かな殺気を放つ。


ピストルの音が響いた瞬間、ミカゲは黒い影となって疾駆した。


暗殺者として培われた、一切の無駄を削ぎ落した動き。それは走るというよりも、空間を切り裂いて移動しているかのように見えた。

観客が息を呑む間もなく、彼は他の選手を置き去りにして、独走状態で1位のゴールを駆け抜けた。


「……ミカゲ、かっこいい……」


まふゆが呟く。恋人である彼の、戦闘時とはまた違う「本気」の姿を目の当たりにし、胸が高鳴るのを感じた。




レオンハルト、セリウス、ミカゲ。

A組の中心メンバーがそれぞれきっちりと結果を残したことで、女子50m走でつけられた点差は一気に縮まった。


ガレオスの自慢げだった表情がわずかに歪み、ガンツは表情を変えずに「ふん」と小さく鼻を鳴らした。




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