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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第三十三話 はじめての体育祭
376/424

33-1




待ちに待った体育祭当日。


空はどこまでも青く澄み渡り、まるで生徒たちの高揚感を映しているかのようだ。


グラウンドには万国旗がはためき、組ごとに色分けされたテントが立ち並び、学園中がお祭りムード一色に染まっていた。




紅組のテントの中、まふゆはクラスメイトの女子たちに囲まれ、少し照れくさそうに椅子に座っていた。


「まふゆちゃん、髪が真っ白だから赤色がすっごく映えるね!」

「うんうん、可愛い!リボンみたいに結んであげる!」


器用なクラスメイトたちが、まふゆの頭に紅組の鉢巻をきゅっと結んでいく。

ただの鉢巻のはずが、彼女たちがアレンジすると、まるで可愛らしい髪飾りのように見えた。雪のような白い髪に、鮮やかな赤色がアクセントとなってよく似合っている。


「ど、どうやろか……?ちょっと派手すぎひん……?」


まふゆが不安げに尋ねると、女子たちは「ぜんっぜん!」「超似合ってる!」と口々に褒めそやす。そして、一人の女子が悪戯っぽく笑いながら、まふゆの背中をぽんと押した。


「ほら、ミカゲくんに見せに行きなよ!絶対、見惚れちゃうって!」

「そーだそーだ!行ってきなよ!」

「ええっ!?そ、そんな……!」


クラスメイトたちの後押しに、まふゆの頬がカッと熱くなる。


ミカゲが自分のことをどう思うか、気にならないわけがない。けれど、自分から見せに行くのは、なんだかとても恥ずかしい。


もじもじと躊躇するまふゆの背中を、友人たちは「はいはい、早く早く!」と優しく、しかし有無を言わさず押していく。




テントの外では男子たちがウォーミングアップをしたり、仲間と談笑したりしていた。


その一角に、ミカゲはいた。黒い運動着が彼の白い肌を一層際立たせ、黙っていても周囲から浮き立つような存在感を放っている。

彼はただ静かに、まふゆがいるであろうテントの方向をじっと見つめていた。


「ほら、ミカゲくん、あそこにいるよ!」

「うぅ……わ、わかったさかい、もう押さんといて……!」


観念したまふゆは、深呼吸を一つすると、意を決してミカゲの方へと歩き出した。

一歩、また一歩と近づくにつれて、心臓がとくとくと早鐘を打つ。


彼の前に立ち、どう切り出そうかと考えあぐねていると、先に気づいたミカゲがすっと顔を上げた。


彼の黒曜石のような瞳が、まふゆの姿を捉え、その頭に結ばれた赤いリボンでぴたりと止まる。

そして、ほんのわずか、ほんのわずかだけ、その瞳が見開かれたのをまふゆは見逃さなかった。


「あ、あの……ミカゲ……。その、クラスの子らが……やってくれて……変やないかな……?」


恥ずかしさで俯きながら、上目遣いで彼の反応を窺う。

ミカゲは何も言わない。ただ、静かにまふゆに近づくと、その白い指先でそっと赤い鉢巻に触れた。その予期せぬ行動に、まふゆの心臓が大きく跳ねる。




「……いや」


ようやく紡がれた、短い否定の言葉。


「……似合っている」


いつもの無表情はそのままに、しかしその声には、確かな愛しさが滲んでいた。

その一言だけで、まふゆの心は喜びでいっぱいに満たされる。恥ずかしさもどこかへ飛んでいき、自然とふわりと笑みがこぼれた。


「……!ほんま?よかった……」


その幸せそうな笑顔を、ミカゲは誰にも見せることなく、ただ自分だけのものとして瞳に焼き付けていた。

体育祭の喧騒の中、二人だけの甘い時間が、静かに流れていく。




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