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リレー選手の発表でグラウンドが盛り上がる中、その喧騒を割るように、ひときわ甘く艶やかな声が響き渡った。
「あらあら、みんな盛り上がってるわねぇ。そんな元気いっぱいのアナタたちに、私から素敵なお知らせがあるわよん」
振り返ると、そこに立っていたのは、豊満な体を惜しげもなく晒した誘惑科担当教師、ローゼリアだった。彼女が歩を進めるたびに、甘い香りがふわりと周囲に漂い、男子生徒たちの視線が釘付けになる。
「今年もやります、『カップルレース』!愛し合うふたり(性別は問わないわ!)が一組になって、様々な障害を乗り越える、愛と絆が試される競技よ。見事一位に輝いたカップルには、なぁんと!豪華賞品をプレゼントしちゃうわ!」
ローゼリアがウィンクを飛ばすと、生徒たちから「おおー!」という歓声が上がる。特に恋人のいる生徒たちにとっては、見逃せないイベントだ。
「さあ、我こそはというアツアツカップルは、ぜひ参加してちょうだいね!エントリーは今日の放課後まで、私のところに来てね。待ってるわよん」
嵐のように宣伝を終え、投げキッスを残して去っていくローゼリア。
その背中を見送りながら、まふゆの隣でリリアがぽつりと呟いた。
「カップルレースかぁ……いいなぁ……」
その声には、憧れと、ほんの少しの羨望が滲んでいた。彼女の視線の先には、生徒たちの賞賛を浴びながら、仲間と笑い合っているレオンハルトの姿がある。
(あーしも、レオンハルト様と一緒に出られたら……なんて)
そんな淡い夢想は、すぐに「でも、振られちゃったし」という現実にかき消される。しょんぼりと俯くリリアの様子に、まふゆは心配そうに声をかけた。
「リリア?どないしたん?」
「ううん、なんでもないー!カップルレース、誰が出るのかなーって思って!」
リリアは慌てて笑顔を作った。まふゆとミカゲという、誰もが認めるカップルがすぐそばにいるのだ。
二人に参加を勧めようかと思ったが、ミカゲの性格を考えると、人前でそういった競技に出るとは思えなかった。
すると、不意にレオンハルトがこちらに近づいてきた。
「カップルレースか。面白そうだな。なあ、ミカゲ、まふゆと出てみたらどうだ?お前らなら一位間違いなしだろ」
レオンハルトが悪戯っぽく言うと、ミカゲは眉一つ動かさずに首を横に振った。
「……興味ない。人前で見世物になる趣味はない」
「だよなあ」
レオンハルトは苦笑し、それ以上は勧めなかった。
そのやり取りを見ていたリリアは、安堵するような、少しだけ残念なような、複雑な気持ちで胸の奥がちくりと痛んだ。
体育祭という特別な一日が、否応なく「恋」という感情を意識させてしまう。
リリアの心は、秋空の下で、甘く切なく揺れ動いていた。




