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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第三十二話 黒の少女の夢
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32-4




放課後を告げる鐘が鳴り響くと、まふゆたちは示し合わせたように席を立った。

目指すは、機械技術担当の教師、フローラの研究室だ。


「フローラ先生の研究室って、確か東棟の最上階だったよね?」

「ああ。ドワーフの先生だけあって、工房みたいな部屋だって聞いたことがある」


レオンハルトとセリウスが先導し、一行は活気に満ちた廊下を進んでいく。

リリアは期待と緊張が入り混じった表情で、まふゆの隣を歩いていた。その小さな背中を、まふゆは励ますように優しく撫でる。


「大丈夫。フローラ先生は、きっと力を貸してくれはるよ」

「うん……!まふゆん、ありがとう」


リリアはこくりと頷き、ぎゅっと拳を握りしめた。

ミカゲはいつものように少し離れた場所から、全員、特にまふゆから片時も目を離さずに後を追う。アリスはそんなミカゲの服の裾をちょこんと掴み、とてとてとついてきていた。




やがて一行は、油と金属の匂いが微かに漂う扉の前にたどり着く。

『機械技術研究室』と書かれたプレートの下には、小さな文字で『担当:フローラ』と記されていた。


「ここか……よし、俺が話してみる」


レオンハルトが代表して扉をノックしようとした、その時だった。

扉が内側から勢いよく開かれ、中から小柄な少女が飛び出してきた。


「おっと!」

「うわっ!」


危うくレオンハルトとぶつかりそうになった少女は、慌てて数歩後ずさる。

おさげ髪にしたオレンジの髪。力強い意志を宿したヘーゼル色の瞳。その体躯は小柄だが、ドワーフ族特有のがっしりとした骨格をしていた。


「おっと、すまんのう。ちいと急いでおったんでな」


年の頃は十代前半に見えるが、その口調はまるで年老いた職人のようだ。

彼女こそ、リリアの友人であり、B組に所属するドワーフの少女、リッタ・ストーンベルだった。臨海学校の時、花火を上げていた少女でもある。


「リッちゃん!?」

「おお、リリアか。それに、A組の連中も揃って、どうしたんじゃ?」


リッタは驚いたように目を丸くした後、一行の顔ぶれを見回した。


「ちょうど良かった!実は、フローラ先生に相談したいことがあって……」


リリアが事情を説明しようとすると、リッタは「ふむ」と顎に手を当てて頷いた。


「フローラ先生になら、ワシからも話を通しておいてやろう。……ちょうど、ワシも新しい魔導機のことで先生と話しとったところじゃ」

「えっ、本当!?」


思わぬ偶然に、リリアの声が弾む。

リッタはニヤリと口の端を上げ、悪戯っぽく笑った。


「ああ。おまえさんの夢、ワシにも手伝わせんかい。エルフの命なんぞ使わんでも、ワシらの技術とリリアの知識があれば、もっとすごいモンが作れるはずじゃ。……そうじゃろ?」


その力強い言葉に、リリアの瞳に再び涙が浮かぶ。

一人で始めた夢が、こうして次々と仲間を集めていく。その事実に、胸が熱くなった。


「う、うん……!ありがとう、リッちゃん……!」

「礼には及ばん。さて、立ち話もなんじゃ。中に入れ。先生も、お前さんたちの話なら聞いてくれるじゃろう」


リッタに促され、まふゆたちは期待を胸に、未知の技術が眠る研究室へと足を踏み入れた。




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