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リリアの大きな、けれど重い決意に、テーブルは一瞬静まり返った。
しかし、その沈黙を破ったのは、温かく、そして芯の通ったまふゆの声だった。
「リリアの夢、ほんまに素敵やと思う。……せやけど、一人で抱え込むには大きすぎる悩みやない?うちら、仲間やないの。もっと頼ってくれてええんよ」
まふゆはリリアの手をそっと取り、その菫色の瞳で真っ直ぐに見つめた。
エルフ族を想う友の優しさが、胸にじんわりと染み渡る。
「そ、そうだけど……みんなにも色々あるし、迷惑かなって……」
リリアが俯きかけると、今度はレオンハルトが豪快に胸を叩いた。
「迷惑なわけあるか!むしろ、そんな大事なこと、水臭いじゃないか!なあ、お前ら!」
「うん、勿論だよ。リリアの目標は、この世界にとっても非常に意義深いことだからね。僕にできることがあれば、知識の面で協力するよ」
セリウスが理知的な光を瞳に宿して頷く。
「ま、あたしには難しいことはわかんないけど。アンタが頑張るってんなら、応援くらいはしてやらなくもないわよ」
シャノンもぶっきらぼうな口調ながら、その声には確かな優しさが滲んでいた。
「……アリスも、おうえん、する……。リリア、すごい」
こてん、と首を傾げながらアリスが言うと、リリアの瞳にみるみる涙が溜まっていく。
「み、みんな……!」
その時、今まで黙って食事をしていたミカゲが、ふと口を開いた。
「……ドワーフの教師に聞けばいい」
「え?」
ミカゲの唐突な言葉に、全員の視線が集まる。彼は表情を変えないまま、淡々と続けた。
「機械技術担当の、フローラ。あの教師なら、何か知っているかもしれない」
「フローラ先生……!」
リリアの顔がぱっと輝く。ドワーフ族は物作りの名手。その道の専門家である教師なら、きっと何かしらのヒントをくれるに違いない。
ミカゲらしい、極めて合理的ながら的確な助言だった。
「せやね!早速、今日の放課後にでも、みんなでフローラ先生のところに行ってみいひん?」
まふゆが提案すると、全員が待ってましたとばかりに頷いた。
「決まりだな!よし、まずは腹ごしらえだ! 食わなきゃ戦はできんからな!」
レオンハルトが再びカトラリーを手に取り、高らかに宣言する。
リリアの顔には、もう不安の色はなかった。一人で抱えていた大きな夢が、信頼する仲間たちと共有する、確かな目標へと変わった瞬間だった。
食堂の賑わいの中に、彼らの明るい笑い声が溶けていった。




