32-1
白檻会との激しい戦いが終わり、学園に束の間の平穏が訪れた。
十月に入り、澄んだ秋空の下、生徒たちの間では来たる体育祭の話題で持ちきりだった。
「やっぱり、体育祭ってなると燃えるよなー!」
昼休みの食堂。ビュッフェ形式のプレートに山盛りの料理を乗せたレオンハルトが、声を上げる。
いつものメンバーで囲むテーブルは、今日も賑やかだ。
「兄さんは昔からそうだったね。お祭り騒ぎが好きだから」
セリウスがやれやれと肩をすくめながらも、その口元には穏やかな笑みが浮かんでいる。
「あたし、絶対リレー選手に選ばれてやるんだからね!」
シャノンがフォークを片手に高らかに宣言する。
「……アリスも、がんばる」
こくりと頷くアリスの隣で、ミカゲは黙々と食事を進めている。しかし、その視線は常に隣の席のまふゆへと注がれていた。
恋人となってからというもの、彼の独占欲はますます強くなっているように感じられる。
「ほんまに、平和になったんやねえ……」
まふゆは、友人たちの屈託のない笑顔を見つめながら、ぽつりと呟いた。あの壮絶な戦いが嘘のように、穏やかな時間が流れている。
白く繊細な指でカップを持ち上げ、温かい紅茶を一口含んだ。
「そうだな。色々あったが……ま、結果オーライってやつだ」
レオンハルトがニカッと笑う。その言葉に、皆が頷いた。
失ったものも、傷ついた心もある。それでも、彼らは共に乗り越え、今ここにいる。
「そういえばリリア、アンタなんか元気なくない?体育祭、楽しみじゃないの?」
ふと、シャノンがリリアの顔を覗き込んだ。いつもなら一番にはしゃいでいそうな彼女が、どこか浮かない顔をしていることに気づいたのだ。
「え?そ、そんなことないよぉ?体育祭、すっごく楽しみだしー!」
リリアは慌てて笑顔を作るが、その笑顔はどこかぎこちない。
その様子に、まふゆも心配そうに眉を寄せた。
「リリア、何か悩み事でもあるん……?」
優しい声で問いかけると、リリアは「うーん……」と少しだけ俯いてしまう。
そして、意を決したように顔を上げると、小さな声で話し始めた。




