31-11
ガンツによるシステムダウンは、戦場の空気を一変させた。
暗闇と沈黙は、今まで魔導機の力に頼りきっていた白檻会の兵士たちから戦意と秩序を奪い去り、逆にレオンハルトたちにとっては反撃の狼煙となった。
「今だ!一気に叩くぞ!」
レオンハルトの号令一下、戦士たちが雄叫びを上げて躍り出た。
魔術の脅威がなくなった今、屈強な獣人や武器の扱いに長けた人間、そしてダークエルフの身体能力を持つ生徒たちの独壇場だ。
ガレオスはその剛腕で敵をなぎ倒し、レオンハルトは洗練された剣技で次々と兵士を無力化していく。
統率を失った敵兵は、もはや烏合の衆に過ぎなかった。
戦いが得意なメンバーが敵兵の相手を引きつけているその間隙を縫って、別の部隊が動き出す。
「皆さん、こちらです!もう大丈夫ですから!」
後から駆けつけたイリヤが、坑道の奥に設置されていた牢から、怯えるエルフたちを優しく導き出していた。
彼女の穏やかな声と物腰は、長く囚われ、心身ともに衰弱していたエルフたちの心を解きほぐしていく。
その隣では、ローゼリアもまた、普段の妖艶さとは違う母性的な表情で、泣き出すエルフの子供を抱きしめていた。
「さあ、今のうちに。セリウスちゃん、シャノンちゃん、この子たちを安全な場所までお願い!」
「はい、お任せください!」
「ったく、泣いてる暇なんてないわよ!しっかりあたしについてきなさい!」
セリウスとシャノンが、解放されたエルフたちを転移門へと誘導していく。
恐怖に震えていたエルフたちの顔に、少しずつ安堵の色が戻り始めた。
そして、もう一方。
この逆転劇の立役者であるガンツは、ドワーフの生徒たちを率いて、坑内を駆け回っていた。彼らの目的はただ一つ。
「手当たり次第、全て破壊しろ!一つ残らずだ!」
ガンツの号令を受け、ドワーフの生徒たちは得意げな笑みを浮かべ、巨大なハンマーや特殊な工具を手に、壁際に並べられた魔導機の数々を次々と破壊していく。
「ワシらの技術を!悪用しおって!!」
リッタを筆頭にドワーフの生徒達がガシャン!バキィ!と、けたたましい破壊音が響き渡る。それは、エルフたちの命と尊厳を犠牲にしてきた非道な組織の、崩壊の音だった。
彼らは自らの手で、自分たちドワーフの誇り高き技術が悪用された証を、怒りと共に粉々に打ち砕いていったのだ。
制圧、解放、破壊。
三つの作戦が同時進行で進み、白檻会の巨大な本拠地は、学園の生徒たちの手によって、内側から着実に崩壊していく。
夜明けは、もうすぐそこまで来ていた。
(後はミカゲの作戦が成功していればいいが……頼んだぞ)




