31-10
鉱山の広大な空洞部。そこは、レオンハルトたちが作り出した激戦の舞台と化していた。
剣戟の音、怒号、そして魔導機から放たれる魔術の閃光が、岩肌を絶え間なく照らし、砕く。
「くそっ、キリがねえな!」
レオンハルトは愛剣を振るい、迫り来る兵士を薙ぎ払いながら悪態をついた。
彼の隣では、ガレオスがその巨体と剛腕で敵を弾き飛ばしているが、倒しても倒しても敵兵は坑道の奥から湧いてくる。
そこへセリウスたち後方支援部隊が駆けつけた。
「兄さん、無事かい!?」
「レオンハルト様!あーしも加勢しまーす!」
「全く!仕方ないわね!」
セリウスが障壁魔術を展開して敵の攻撃を防ぎ、リリアが回復薬を投げ、シャノンがその素早い動きで敵陣を撹乱する。
一時的に戦線は持ち直したが、状況が好転したわけではなかった。
敵は統率が取れており、何より厄介なのは、彼らが装備する魔導機だ。
本来魔術が使えないはずの人間たちが、多彩な攻撃魔術を次々と放ってくる。
数と火力の両方で、学園の有志たちは徐々に追い詰められていった。
「このままじゃ、ジリ貧だ……!」
セリウスが障壁を維持しながら、苦渋の声を上げる。
誰もが、長期戦は不可能だと悟っていた。長くは持たない。
そう思われた、その瞬間だった。
突如、坑内を煌々と照らしていた魔石の明かりが、ぷつりと一斉に消えた。
同時に、敵兵たちが構えていた魔導機の輝きも失われ、ただの鉄塊と化す。
彼らの放とうとしていた魔術が、霧散するように消えていったのだ。
「な、何が起きた!?」
「魔導機が動かん!」
「明かりをつけろ!」
完全な闇と静寂が戦場を支配し、敵兵たちは混乱の声を上げる。
その暗闇の中、レオンハルトたちの持つ通信用の魔石に、冷静な声が響いた。
『──こちらガンツ。聞こえるか』
「ガンツ先生!一体何が……!?」
レオンハルトが驚きを隠せないまま問い返す。
『本拠地の制御システムへのハッキングに成功した。ドワーフの技術を舐めてもらっては困る。電力供給、魔力循環、通信、全ての機能をこちらで掌握し、強制的に停止させた。今の奴らは、ただの武装しただけの人間だ』
ガンツの言葉は、戦況を覆す天啓だった。
彼の後ろから、ドワーフの生徒たちの「やってやったぜ!」「俺たちの技術力を見ろ!」という、誇らしげな声が聞こえてくる。
レオンハルトの口角が、不敵に吊り上がった。
「……最高だぜ、ガンツ先生、お前ら!」
彼は剣を構え直し、暗闇の中で狼狽える敵兵たちに向かって、勝利を確信した声を張り上げた。
「聞いたか、皆!牙を抜かれた奴らに、もう用はない!これより、反撃を開始する!」




